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幼稚園や保育所での子どもたちの様子を伝えるため、保護者に写真をネット販売する施設も増えてきたが、時にはトラブルの元になってしまうことがあるようだ。

ある保護者が「幼稚園でプール遊びをしていた娘の裸が販売サイトを通じて多くの保護者に閲覧されてしまった」と訴えている。同じような投稿はSNS上でも多数あげられている。

こども家庭庁は今年5月、画像が第三者に性的な目的で利用されることを念頭に、施設のホームページなどに子どもの性的な部位を含む画像などを掲載しないように幼稚園などに通達した。

保護者に限って閲覧可能な販売サイトとはいえ、園側が刑事責任を問われる可能性もあり、夏場のプール遊びを写真に残す場合は注意が必要となりそうだ。

●我が子の裸を多くの保護者に晒され「許せません」

弁護士ドットコムに寄せられた女児の親からの法律相談によると、水着がずれて上半身露わになった娘の写真が数十枚アップされていたという。

園側に抗議したところ、販売はしないと約束されたが、すでに1週間の間に約100人もの保護者に見られてしまったため「写真を多くの保護者に晒された事は簡単には許せません」「悲しくて、辛くて、怒りがおさまりません」と憤りを感じている。

園側も事前確認していたが、全部で1000枚以上の写真に目を通したのは教諭1人だけだったとしている。

わいせつ事件に詳しい奥村徹弁護士は、このようなケースでは園側の刑事責任が問われる可能性を指摘する。

●性器が露出されていなくても「児童ポルノ」にあたる場合がある

--どのように考えられるでしょうか

そもそも「児童ポルノ」とは、児童ポルノ法2条3項3号で「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」と定義されています。

性器等が露出していなくても、下着姿で性器等が強調されている場合も含みます。

ですので、こども家庭庁の通達には「こどもの性的な部位(性器・肛門・これらの周辺部、臀部又は胸部)を含む画像等」と表現されていますが、これは不正確です。

また「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は、一般人を基準にして判断されるとされます。一方で、条例で入浴が許容されている「男湯の女児」の裸体については下記のような高裁判例もあって緩く解釈されています。

「比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても、普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば、それらの画像は、一般人を基準としても、『性欲を興奮させ又は刺激するもの』であると解するのが相当である」(大阪高裁判決平成24年7月12日)

さらに、公然陳列罪は、児童ポルノ画像を不特定または多数の者が閲覧可能な状態に置けば既遂になり、公然陳列の故意としては、児童の裸体画像を不特定または多数の者が閲覧可能な状態にすることを認識していれば足り、それ以上の性的な意図は不要です。

そうすると、幼稚園や保育園が、そのような写真をサイトにアップして、複数の保護者に閲覧させた場合、園側が児童ポルノ法違反(公然陳列:法定刑は最高懲役5年)が成立し、正当化する事由は乏しいと思われます。

●過去に都内の認可保育園でも同じような事案が発生している

奥村弁護士の解説は以上となる。

園内の保護者限りの閲覧であるかどうかを問わず、子どもの裸が第三者の目に触れることを嫌がる親は多い。

2022年には、都内の認可保育園で、子どもの全裸や下半身が露出した写真が販売サイトに約8カ月間掲載される事案が発生している。

【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/