「街の豆腐店」倒産過去最多に...「物価の優等生」がなぜ? スーパーの「特売の目玉」への期待に反省を

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「街の豆腐店」がどんどん消えている。

帝国データバンクが2024年8月4日に発表した「『豆腐店』の倒産・休廃業解散動向(2024年1〜7月)」によると、「豆腐店」の倒産・休廃業解散が過去最多のペースで急増している。

卵やもやしと並び、「物価の優等生」として食卓を支えてきた豆腐に何が起こっているのか。調査担当者に聞いた。

大手メーカーの安い大量生産品との競争激化

東京商工リサーチの調査によると、スーパーなど小売店向けにパック豆腐などを生産する「豆腐店」の倒産(負債1000万円以上)と廃業は、2024年1〜7月に計36件発生した。年間で過去最多に並んだ昨年(2023年・計46件)を上回るペースとなり、年間60件台に到達する可能性がある【図表】。

豆腐店の経営は、生産コスト増と価格転嫁の難しさのはざまで厳しい状況が続く。量産豆腐に多く使用される米国産など輸入大豆の価格は、円安の影響で高止まりしているほか、電気・ガス代や物流費、プラスチック製が多い容器代などのコストも値上がりした。

また、豆腐はスーパーなどで「特売品」の目玉とされているため、小売業者からの値下げ圧力が高いという。加えて近年、スーパーでは安いPB(プライベートブランド)豆腐製品を置くところが増えた。大手メーカーによる安価な大量生産品との価格競争激しくなっている。

帝国データバンクではこう分析している。

「コスト上昇分を販売価格へ転嫁できるケースは少なく、豆腐店の損益は約半数が『赤字』となった。『薄利多売』による経営環境の悪化に、後継者難 といった経営課題も重なったことが、豆腐店の倒産・廃業が急増した要因とみられる。
安値で食卓を支えてきた『物価の優等生』の看板を前に、豆腐の適正価格への理解が進まなければ、豆腐店の倒産や廃業が今後さらに増加する可能性もある」

後継者難と人手不足で、豆腐店は構造的な赤字経営

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。

――私は、長らく手作りの「街の豆腐屋さん」を愛用し、少々値段が高くても美味しい店から豆腐を買い、晩酌のおかずの冷奴を楽しんできました。

最近、その店がなくなって寂しい思いをしていますが、倒産・休廃業が急増している豆腐店とは、そんな店も指すのでしょうか。

飯島大介さん 「手作りの豆腐屋」も一部含まれますが、負債1000万円以上が対象ですから、工場を持ち、地場のスーパーに豆腐をおろしている会社が大半です。

街で直接お客に販売している豆腐店は、かなり消えていると思われますが、規模が小さすぎるので、把握しきれていません。

――豆腐店の倒産・休廃業が増えている理由は、ズバリ何でしょうか。

飯島大介さん リポートにも書いたように、原材料費や生産コストの上昇が理由の1つですが、後継者がいないこと、人手不足であることという構造的な要因が一番大きいです。豆腐店の半数が赤字経営に陥っています。

また、豆腐は生鮮食品と同じで日持ちがせず、頻繁に買いに行きます。どこの食卓でも食べているので、スーパーとしては客寄せの「特売」の目玉にして「安さ」をアピールします。豆腐店側もスーパーに価格転嫁することが非常に難しいのが現状です。

スーパーのPB豆腐は、「安さ」をコントロールするため

――そこに、スーパーのPB豆腐商品が追い討ちをかけているわけですね。イオンの「北海道産ゆきほまれ使用の寄席豆腐」とか、西友の「みなさまのお墨付きシリーズ 国産大豆の絹ごし豆腐」とか、さまざまなPB豆腐がスーパーやコンビニから数多く出ています。「PB豆腐の食べ比べ」をしているサイトもあるほどです。

飯島大介さん スーパーやコンビニのPB豆腐の狙いは、「美味しさの追及」ももちろんありますが、より安く売りたいというのが真の目的です。

これまでスーパーなどに豆腐を卸してきた地場の豆腐工場を安く買い叩くことは、もうあまりできなくなりました。自分の会社で企画して生産すれば、安さをコントロールすることができます。

「豆腐は安くて当たり前」という消費者の意識を変えなくは

――なるほど。ところで豆腐店はこれからどうなるでしょうか。どうすれば生き残ることができますか。

飯島大介さん かつては、特売の目玉として「1丁19円」の豆腐がありましたが、今は無理です。「豆腐は安くて当たり前」という、われわれ消費者の意識を変えなくは、豆腐店の生き残りは厳しいと思います。

消費者は、「物価の優等生」などと豆腐を持ち上げてきたことを、反省する必要があります。豆腐店も、「豆腐を作るにはこれだけのコストがかかり、これだけの値段で売りたい」とはっきり自己主張すべきです。

消費者も豆腐を食べたければ、それなりの値段で買うことを受け入れなくてはいけません。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)