「邪魔なんですよ」隙間時間で働ける“タイミーおじさん”が増加中も…現場では「まったく使えない」飲食業界のリアルな叫び
隙間時間を利用して、手軽にバイトをするーー。シフトや職場の人間関係に縛られることもなく、仕事を選べる“アルバイト界の革命”として今怒涛の勢いで発展しているのが「タイミー」だ。
「株式会社タイミーが提供する仕事のマッチングアプリです。現在700万人が利用しており、7月26日には東京証券取引所グロース市場に上場しました。利用者側のポイントとしては、一度タイミーに登録してしまえば、即日応募が可能で面接や履歴書の提出など煩わしいことがない点です。しかも、アルバイト代はすぐに振り込まれるので、金欠の時にサクッと利用できます。
逆に、アルバイトを募集している企業側からすると、倉庫の棚卸しが必要だとか急な病欠が出たなど人手が必要な際にすぐに集められるという利点があります。そもそも人手不足でアルバイトが集まりづらい昨今、労使の思惑がぴったりはまったというわけです。橋本環奈さんを起用したCMでもお馴染みで、人気を集めています」
タイミーでは、保育士や介護士といった資格が必要な専門職でも仕事を募集している。タイミーを利用したという20代の女性はこう語る。
「少し暇な時間ができたので使ってみました。正直、責任がないから気楽でしたね。同じところで働いてると、どうしてもマンネリ化してしまいますが、初めて行くところだったので、刺激もありました。時間と日にちが選べるので働きやすいです」
と大満足な様子だ。一方、保育園側も「保育業界はとにかく人手不足なので、すごく助かっています。きちんと資格を持っている人がやってくるので、安心感もある」と、こちらもバッチリ。
まさに理想的なマッチングがある一方、未経験者が多い飲食業界では、現場アルバイトからの悲痛な声が寄せられた。
「僕らは、基本的に“タイミーさん”と呼んでいるんですが、ドリンク運びや、テーブルの後片付けなど、簡単なことをお願いしています。しかし、ものすごく簡単なルールでも覚えてくれないことが多く、忙しい週末は大変というか、正直邪魔なんですよね。とくに年齢の高いおじさんおばさんの場合、動きが遅いし、“ミスマッチ”だったなというケースが多いです」(飲食店アルバイト)
別の居酒屋店主はこう語る。
「いわゆる“タイミーおじさん”の問題ですよね。どうしても人手が足りないのでお願いしてしまいますが、一緒に働くことになるアルバイトの子たちは、不満を言うことが多いですね。『まったく使えないからなんとかしてくれ』と。やっぱり、なるべくなら一定期間働いて、仕事をしっかり覚えてくれる人にお願いしたいというのが本音です。“タイミーさん”の中でも、何回も来てくれたり、活躍してくれそうな場合は、こちらから直接『アルバイトとして働いてくれないか』とオファーすることもあります。ただ、そういう人材はやはり大学生など若いコが多いですよ」(別の居酒屋)
大学生のアルバイトに陰口を言われる“タイミーおじさん”。こうした残酷な格差の背景にあるのは就職氷河期の存在だ。
「アルバイトといえば学生や若い人がやるイメージですが、タイミーは、利用者の属性として40代が23%、50代が19%、60代が5%であると発表しています。つまり、40歳以上がほぼ半数を占めているんです。なぜこれほど中高年が多いかといえば、1970年〜1984年に生まれた“就職氷河期世代”の影響でしょう。
この世代は、バブル崩壊後の就職難時代に生まれたために、不本意ながら非正規の仕事に就いている割合が多いのです。日本企業の多くは、新卒一括採用ですから、本人の能力とは関係なしに就活のタイミングを逃すとなかなか正社員にはなれません。タイミーの利用者の一部はこうした就職氷河期世代なのでしょう。
初めての職場で突然働くということになれば、どんな人でもまごつくもの。すでに仕事に慣れている従業員からすれば、どうしても“使えない”と見られがちです。特に年齢を重ねている場合、『社会経験を積んでいるはずなのに…』となり、厳しい目で見られがちなのでしょう」(経済部記者)
世知辛い世の中だ……。