キッチンに採用するなら、開き戸ではなくて「引き出し収納」を。そう主張する整理収納アドバイザーが、自宅キッチンを例にメリットを語ります。「立ったまま使いやすい」「探さず奥のものが取り出せる」「家電を置くスペースが取りやすい」…。ストレスフリーなキッチン設備を検討している人は、ぜひ参考に。

過去の家での苦い思い出から「引き出し」メインの収納に

筆者は、夫と中学生の長女と長男、小学生の次女の5人暮らし。結婚した当初は、義両親の持ち家である、築35年のマンションに住んでいました。その後、新築分譲マンションを購入。3年前、夫婦どちらも在宅勤務がスタートしたのをきっかけに、今の注文住宅に引っ越しました。結婚後2回引っ越しをし、現在の家は3軒目です。

以前住んでいた2軒の家では、開き戸収納(棚)だったことが原因で、出しにくい、しまいにくい、ぴったりな収納ケースが見つからない、といった不便を感じていました。

現在の家では、今までの苦い経験から、開き戸収納で住みにくさを感じていた場所は、引き出し収納にしました。

じつは減額調整で、担当のインテリアコーディネーターさんから、開き戸収納にする案もありました。そうすることでカップボードの部分だけでも、15万円減額できます。しかし、引き出し収納だけは譲れませんでした。

実際に住み始めてからも、こだわってよかったと実感しています。とくに便利に感じている、キッチンと洗面所を例に、その5つの理由を紹介しましょう。

理由1.立ったまますぐ取り出せる!

上は、アイランドキッチンの背面に設置したカップボード(ともにパナソニック「ラクシーナ」)です。サイズは幅27×高さ60×奥行き65cm(実寸)。高さは標準、奥行きは一般的な45cmに比べて、広めを選びました。食器を入れている引き出しの有効寸法は、幅82×高さ14×奥行き47cm(実寸)です。

以前の家の食器棚は、開き戸収納。下の方の段に入れているものを出すまでに、「扉をあける→しゃがむ」の2ステップが必要でした。

しかし、引き出し収納なら、引き出しをあけるだけで、目的のものを取り出せます。とくに食器類はこまかいものも多く、手間を減らせて家事を効率よくこなせています。

理由2.奥のものもすぐに取り出せる!

家には、使用頻度は低いけど置いておきたいものがあります。開き戸収納の場合、奥にあるものを出すためには、以下の4ステップが必要です。

1.扉をあける
2.手前のものを一度どかす
3.目当てのものを取り出す
4.手前のものを戻す

しかも、位置が低い場合は、取り出すときに不自然な姿勢で、上と下の棚にぶつからないように気をつけないといけません。

手前と奥の二段構えに置かなければ問題ありませんが、スペースを活用するため、手前と奥に別々のものを置いていることも多いと思います。

実際、筆者の実家でも手前に日常用のお皿、奥にお客様用のお皿を置いていました。とても取り出しにくかったことを覚えています。

ちなみに新しい家では、引き出しが全部引き出せるタイプにこだわりました。途中までしか引き出せないと、いちばん奥のものが取り出しにくいからです。結果、手を伸ばすだけでいちばん奥のものも、簡単に取り出すことができています。

理由3.いちばん下の段を活用できる

開き戸タイプの食器棚を使っていたとき、もっとも面倒くさいと思っていたのは、いちばん下の段。一度しゃがまないとものが取り出しにくいため、ずぼらな筆者は、いちばん下の段からものを取り出すことを考えるだけで、おっくうに思っていました。

以前は、いちばん下の段にホットプレートや土鍋など、あまり使わないものを置いていました。しかし、「取り出しにくい」ことがわかっている場所にしまっていると、余計に使わなくなります。それが大きくて重いものならなおさら。結果、メニューの選択肢も狭めていた気がします。

引き出し収納にして、そういったこともなくなりました。引き出しをあければ、すぐに取り出せるからです。わが家のいちばん下の引き出しには、フライパンや鍋などを入れ、毎日有効活用しています。

理由4.収納棚を探す必要がないのはラク

キッチンのシンクやコンロの下、洗面台下の開き戸収納は、高さがあることがほとんどです。1軒目と2軒目の家では、あいている上部も収納スペースとして活用するために、収納棚を探すことに。それが本当に苦労しました。

いちばんの理由は配管。配管をまたいで設置できる棚にすると、奥行きが合わない、奥行きが合う収納ケースだと配管がジャマで置けない…といったように、なかなかぴったりな棚が見つかりませんでした。

仕方なく妥協して購入しましたが、使いにくかったり、あきスペースができてしまったりと、ストレスでいっぱい。収納ケースを探す時間も、もったいなかったと感じています。

今の家では、洗面台の下も引き出し収納に。洗面台下の上段引き出しの有効寸法は、幅84×高さ14×奥行き24cm(実寸)。ドライヤーやタオルを入れています。家事がしやすいのはもちろん、家族も使いやすくなりました。

理由5.引き出し上部を活用し家電スペースを広くとれた

食器を入れる場所を棚にするか、引き出しにするかは、家電スペースと関係がないように思えます。しかし、じつは大いに関係がありました。

開き戸収納にすると、お皿類がいちばん取り出しやすい高さの、目から腰の位置に棚が配置されるケースが一般的です。そこは、ちょうど家電を置くのにちょうどよい高さでもあります。

その高さに開き戸収納を採用すると、どうしても家電を置くスペースが少なくなってしまいます。

それに比べると引き出し収納は、家電を置く高さより下の位置が使いやすいので、その上を家電スペースとして利用できます。おかげでわが家は、食器も家電も、収納スペースを十分に確保できています。

一般的に、「動線」というと横の動線(シンクからコンロ、部屋の移動など)を言うことが多いと思います。しかし、筆者は、もっと身近な「出し入れ」にも動線があると感じています。

引き出し収納を多用することで、縦や奥行きの動線(手を伸ばす、しゃがむ、奥に手を入れるなど)がスムーズになり、ストレスのない毎日を過ごせています。