味わえ、未知なる体験。赤坂のうなぎ食べ放題がまさかの“わんこスタイル”だった
「食べ放題」にはいろいろありますが、ついに、うなぎの食べ放題を赤坂で発見! しかも、韓国料理店がやっているという。一体どうやって食べるのか!? ライター・カーツさとうが実食してきました。
ほぼ満席の人気ぶり! 滑り込みで入店
庶民にとってうなぎといえば、その高価さ故に、ひと口食べるごとに「ありがとうごぜぇますだ」と感謝の気持ちを心に念じつつ咀嚼するような食材でございます。
家計を考えれば、年に数度の土用の丑の日だけに食べることを許された贅沢メニューといってもいいでしょう。逆にいえば、土用の丑の日とは、うなぎを食べることを許されるためだけに存在している日といっても過言ではない。
こりゃもう「うなぎ様」と敬称つけなくちゃいけない現状である。
しかし、そんな高嶺の花のうなぎ様が、なんと「食べ放題!」という、なにやら信じがたいお店があるという。
その店が東京は赤坂にある『うな雲』。
このお店、ちょっと調べると韓国料理好きには知られた韓国料理店『兄夫(ヒョンプ)食堂』が経営しているという。
「ハテ。韓国料理店でうなぎとな?」
と思う人もいるでしょうが、どうやら韓国でも日本同様にうなぎは食べられているらしいんですよね。
ただ日本の食べ方とはちょっと違ってて、『うな雲』ではその食べ方で提供し、さらにこの店独自の「食べ放題」というダイナマイトなサービスがプラスされているということらしい。
「うなぎ食べ放題」ときて「韓国式うなぎ」! ダブルで食的好奇心かき立てられまくる『うな雲』! さっそく行ってまいりました。
『兄夫食堂』と同じビルの4階。店内ほぼ満席にもかかわらず、幸運にも1テーブルのみ空いていたところに編集・えびす氏とふたりで滑り込む。
テーブルには「うなぎ焼食べ放題100分4500円」と書かれたメニュー。よく見るとうなぎ以外にも「豚カルビ」も食べ放題と書いてある。なんだかすごい景気の良さであるが、税抜き4500円なので、税込みだと4950円。新紙幣でいえば津田梅子先生1枚分である。これが高いのか安いのかは、これからの記事でみなさまが判断していただきたければ、梅子感激!
ちなみに提供時間はディナータイムのみではあるが、そのディナータイムは17時から朝の5時まででして赤坂ムード満点の時間設定ではある。
食べ放題はうなぎと豚カルビだけではなかった!
「うなぎ食べ放題?」
と店員さんに聞かれ頷けば、「うなぎ&豚カルビ」以外のキムチやサンチュなどが店内のカウンターから自分で自由に取ってくるこれまた食べ放題だという説明。キムチ以外にも置かれた大根や玉ねぎのムルキムチ、生のニンニクに青唐辛子等々も見繕ってテーブルに置く。
すると予想だにしなかった熱々の「トッポギ」と「チャプチェ」がテーブルに運ばれてきた。この2種の料理も食べ放題に付いてくるのだった。
この時点で夜の食事として充分なくらいであるが、そこに本日の主役であるうなぎ様登場!
かなりデカいうなぎ1匹を2分割にした状態なんですが、これが生のうなぎ。生のうなぎって見たことない人も多いかもしれないんで、ここで、
「これがうなぎの生の状態か…」
と観察しておくのも勉強になります。で、その生うなぎ様を焼肉と同じようにテーブルの炭火無煙ロースターで焼いて食べる。それが韓国式のうなぎの食べ方なのだった。
「でもうなぎってどうやって焼けば?」
そう思った瞬間には、店員さんがうなぎを炭火で赤くなってきたロースターの網の上に、皮目を下にして広げ始めた。客の目の前の卓上ロースターで焼くとはいえ、全部店員さんがやってくれる模様である。
チャプチェやキムチをつまみつつ、あとはただただ焼けるのを待つ。うなぎの脂が炭に垂れ「ジュボ!」なんて火と煙の上がるのを見ながら呑むのも、また乙ではある。
頃合いを見計らって店員さんがうなぎを裏返しにやってきてくれ、それからまた少々すると、今度は両面焼けたであろううなぎをハサミでひと口大に切りはじめた。
至れり尽くせりである。
さぁ〜ひと口大になったところをいただきますか! というワケにはまだいかない。店員さん、ひと口大になったうなぎを、今度は切り口を下にして網の上に立てるようにして置いて焼きはじめた。日本のうなぎの焼き方では見たことのない側面焼きである。
切り口から炭の上に落ちる脂、さらに景気よく上がる煙! こちとらのうなぎ喰いたい欲望も我慢の限界に達したその時。
「もう食べられますよ」
という店員さんからの夢のコール! さっそくいただかせてもらいます。
まさかの“わんこうなぎ”スタイルに悶絶
ここで食べ方情報! ようするにこの焼けた状態はいわゆる「うなぎの白焼き」。そこに味付けとして、ふたつの調味料が用意されている。
まずは醤油ベースの甘じょっぱい、いわゆる蒲焼きのタレ。そして山椒の粉も用意されている。そして韓国風ではコレをつけて食べると思われるコチュジャンベースと思われるソース。
まずは日本風に蒲焼きタレでガブリといけば、これはもううなぎ様の蒲焼き。ただ日本の蒲焼きと違ってタレをつけて焼いてないので、タレの味わいのノリはイマイチな気がする……と思うも、だったら一度はタレをつけてから再度ロースターで炙りゃいいじゃん! と気づき、それを実行。あ、これはもう蒲焼き。
続いてコチュジャンベースのソースでいく。これはカウンターから取ってきたサンチュで包んで食べるのが韓国式のようなんで、サンチュにはサムジャン(これもカウンターにある)を塗り、辛いソースを絡めたうなぎの上に生ニンニクやキムチものせてパクッとひと口で。
あ〜これはこれでいける。今まで食べたことのない味だけどいける。
ほら、コチュジャンに酢を混ぜたチョジャンをつけて、サンチュで巻いて食べる韓国式のお刺身あるでしょ? あれのうなぎ版ですね。
日本式の食べ方に慣れた人間には「ちょっと違うけど」と感じられるかも思うかもしれないが、同時に、
「でもコレはコレでアリ! 世界は広いッ!!」
と思わざるを得ない味。
さらに、ショウガの千切り(これまたカウンターにあります)や大根のムルキムチも一緒に巻くと、うなぎの脂っこさに酸味やサッパリ感が加わり、なんとも言えないナイスハーモニー。蒲焼き的に食べるのもいいが、この店のこの焼き方で食べるならば、この韓国式の方が個人的には合うと言いたい。なにしろこの店でしかこの食べ方はできないんだし。
そうやって食べていると、ロースター上のうなぎも半分くらいになってくる。すると店員さんが、またうなぎを1枚、テーブルに置く。うなぎが減ってきたらば自動的に追加される、いわば“わんこうなぎ”である。
それにしてもチャプチェやトッポギもあるからか、満腹になるスピードは早い。ふたりでうなぎを4枚……ようするに2匹分を食べ終えた時には胃の許容量の80%に達していた。だがロースターには1枚。さらにテーブルにもまだ2枚のうなぎ様が残っている。
「これは全部喰わなければ、うなぎ様に申し訳ない」
ワタシも編集のえびす氏もそう思いつつ、あとは味わうというよりも、消費していくようなペースでうなぎを口に入れていく。
あの高嶺の花であるうなぎ様をこのような気持ちで食べたのは後にも先にもこの時が初めてである。
「うなぎ様」から「様」が取れた歴史的瞬間でもある。
しかし、うなぎ様も様と思わず食らうというこの行為こそが最高の贅沢といえるかもしれない。
さらに夏バテなどは、この怒濤のうなぎ摂取の前にかかれば、屁のようなものだろう。
最後のひと切れがロースターに置かれた時「もううなぎはストップで」と店員さんに伝え、そして最後のうなぎひと切れを食べ終えた瞬間、脳内には中村ゆうじさんの
「うなぎ完食ゥゥゥゥゥゥ!!」
という声が聞こえてくるようだった。
そして、うなぎに大満足した我々の目の前に、今度は豚カルビが、その巨大な姿をあらわしたのであった。
そして、すでに満腹な我々であったが「食事の後のデザートは別腹」のように「うなぎの後の豚は別腹」的になぜか豚カルビもスルッと全部食べられちゃったのである。さすが『兄夫食堂』の豚カルビだけあって、ストレートに抜群の旨さってのもあるけどね。
さてこの「食べ放題」。ありか? なしか? 決めるのはアナタ次第。ワタクシは「あり」です。
取材・撮影/カーツさとう