みんなで大号泣。ラジオ体操に燃える子供たち

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夏の風物詩とも言えるラジオ体操。そんなラジオ体操に、技術や取組を表彰するコンクールがあり、日々ラジオ体操に取り組む小学生もいるのをご存じだろうか。そのコンクールを主催するかんぽ生命保険のサステナビリティ推進部 谷杉咲代さんに、ラジオ体操の魅力、そしてコンクールに参加する小学生たちの頑張りと成長について伺った。

人間の身体にある600近くの筋肉のうち、約400を動かすラジオ体操

リズミカルなピアノの伴奏とともに“腕を前から上にあげて、背伸びの運動〜”とのかけ声で始まるラジオ体操。日本人なら誰でも知っている国民的体操と言っても過言ではないだろう。このラジオ体操、実は100年近い歴史があるのだという。

「ラジオ体操は、かんぽ生命の前身・逓信省簡易保険局が、1928年に制定した体操で、4年後の2028年に100周年を迎えます。制定時に掲げられた『国民が健康になり寿命が延びて幸福な生活を営めるように』という想いをかんぽ生命が受け継いで、今もラジオ体操の普及推進に向けたさまざまな取り組みを行っています」

と語るのは、かんぽ生命保険サステナビリティ推進部の谷杉さん。このラジオ体操、一番ポピュラーな「ラジオ体操第一」は約3分という短い時間で行うことができ、複雑な動きもない。誰もが気軽にできる体操でありながら健康への効果が抜群であると言われている。その理由はどこにあるのだろうか。

「人間の筋肉は600個以上あるのですが、そのうちの400個ほどをたった3分間のラジオ体操第一で動かすことができるという、とてもよく考えられたもの。現在のラジオ体操は3代目で、誕生した当初とは少し運動の内容は違うのですが、改良を経てとても運動効率の良い体操になりました」(谷杉氏、以下同)

短時間で効果的に身体を動かすことのできるラジオ体操。子どものころに夏休みの朝に近所でラジオ体操をした、という思い出をもつ人は多いだろうが、そうした場以外でも多くの子どもたちにラジオ体操に親しんでもらうために始まったのが“全国小学校ラジオ体操コンクール”だ。

「このコンクールは、全国の小学生が元気にラジオ体操をする機会を増やし、健康増進に役立てていただくために、2014年から始まり今年で11年目を迎えます。正しくラジオ体操ができているかという基準だけではなく、日頃の取り組みや元気に楽しく体操ができているかという視点も考慮して、審査をしています」

技術部門と取組部門の2つ。活き活きと取り組む子どもたちコンクールの応募時に「ラジオ体操出張授業」を希望すると、NHKテレビ・ラジオ体操指導者が学校を訪れて直接指導をしてくれる(希望校多数の場合は選考)

コンクールは、技術部門、取組部門の2部門がある。技術部門は、同じ小学校の児童でチームを作りラジオ体操第一をしている映像、取組部門は日頃のラジオ体操への取組映像をそれぞれ送る。コンクールにはどのぐらいの応募があるのだろうか?

「コロナ禍でラジオ体操が中止や制限された学校もあって一時期減ってはいましたが、2023年度は400件近い応募があり、たくさんの小学校に取り組んでもらっているという手応えを感じています。
ラジオ体操は特別なスキルは不要で、いつでもどこでも誰でもできるものです。学校によっては先生の声がけをきっかけにコンクールへの取り組みが始まったというところもあれば、継続していく中で子どもたちの方から参加したいという声が大きくなったケースもあるようです。やってみたら意外と楽しかったという感想も多く聞いており、コンクールの意義を感じています」

興味を持った方は是非、金・銀・銅賞を獲った小学生たちの動画を見ていただきたい。大人顔負けのキレキレの動きに、活き活きとした表情。見ているこちらまで元気をもらえそうだ。ただ、複雑な体操ではないだけにどのチームの技術も甲乙付けがたく、選考は難しいのではないだろうか。

「確かに金・銀・銅賞を受賞するレベルになるとみなさん上手で、素人目にはわかりにくいのですが、審査員の方々は全員の呼吸が揃っているかどうか、各動きの目的に合った筋肉の動かし方になっているかどうかなど、細かいところまで見て評価されているようです」

ラジオ体操は一人ひとりを輝かせてくれる、かけがえのないもの2023年度の技術部門金賞受賞校、中種子町立増田小学校。一緒に写っているのはラジオ体操応援ポケモンのルカリオ(2列目1番右)。ルカリオの特性「ふくつのこころ」と「せいしんりょく」のように、毎日ラジオ体操を実施してもらうことを目指して、2022年に任命

コンクールに向けて一生懸命に練習を重ねた子どもたち。晴れて賞を取ったチームの姿はどのようなものなのか。かんぽ生命では、学校の先生方にインタビューをしている。2023年度のコンクールで見事金賞に輝いた鹿児島県 中種子町立増田小学校「MASUDA スマイル☆ブレス」の喜びの声をインタビューから紹介しよう。

Q:金賞と知ったとき、児童の皆さんの様子はいかがでしたか?

A:発表当日は、5・6年生全員で結果を確認しました。まず(同じ増田小学校から出場したチーム)「増田Dynamic7」の名前を見つけて、「私たちだ! 優秀賞だ!」と喜び合いました。なかなか出てこなかった「MASUDA スマイル☆ブレス」の名前を、最後に金賞で見つけた時には、子どもたちは飛び上がって喜びました。その後はみんな嬉し泣きで…大号泣でした。一昨年が金賞と優秀賞、昨年は銀賞や優秀賞、エリア奨励賞とすばらしい賞をいただきましたが、昨年「嬉しいけれど悔しい。」と言っていた子どもたちです。「再度、金賞を」を目標に頑張ってきましたので、格別な想いがあったのだと思います。

Q:コンクールを通して子どもたちの変化を教えてください。

A:コンクールに参加することで、技術面だけではなく、心の面にも成長がありました。初めのうちはチーム内で意見が合わずに、ぎくしゃくしたこともあったようです。しかしながら、相手を思いやり意見を尊重し合うことで、チームに信頼感や一体感が生まれました。お互いのチームがアドバイスし合ったり、下級生に教えたりする中で、これまで以上に優しい言動が随所に見られるようになりました。6年生は、次の10年、第20回まで連続出場してほしいと願っています。

Q:増田小学校の皆さんにとってラジオ体操はどのようなものですか?

A:ラジオ体操は、日常であり、子どもたちを輝かせてくれるものです。本校は「ラジオ体操の増田」「体育の増田」と言われます、ラジオ体操のお陰で、体幹が強くけがをしにくい柔軟で丈夫な体をつくることができています。そのため、子どもたちは運動に親しむ機会が増え、児童数32名の小規模校でありながら、町や地区の体育的行事、スポーツ少年団等の活動でも常に上位入賞を果たすなど、体力・運動能力の向上も著しいです。そして、ラジオ体操コンクール連続入賞で得た自信は、全児童の自己肯定感を高めました。さらに、ラジオ体操で培った集中力や忍耐力、活性化した脳は、学力向上という学習面への相乗効果ももたらしています。このように、ラジオ体操は常に子どもたちの日常生活の中にありながら、一人一人を多方面で輝かせてくれる、かけがえのないものとなっています。

年齢や体格、障がいのあるなしに関わらず取り組めるラジオ体操

全員の呼吸や動きが揃っているかなどが審査の対象になるといえば、同学年でとか、同じ体格の子どもたちでといったチーム構成になるかと思うが、応募者の動画を見てみると、そうとは限らない。1年生から6年生までの混合チームもあれば、男女も学年も体格もバラバラなケースもある。そんな多様な子どもたちが心を合わせてひとつのことに取り組むことにはどんな意味があるのだろうか。

「小学校でラジオ体操に取り組んでいただいている先生方にアンケートをとると、チームで取り組むことによって生徒たちはチームワークや協調性が身についたとか、自分たちでいろいろ考えることによって自主性が表れたという声が聞かれます。体力面だけではなく、そういった心の成長の部分で良い影響があって、その後の学校生活にも生かせているという感想を聞くと嬉しいですね」

特に新型コロナウイルス感染症の拡大期においては、人との接触を避けることが推奨され、みんなで何か一つのことを一緒にやることが叶わなかった。だからこそ、このようなコンクールへの応募をきっかけに仲間と心を合わせ、目標に向かうということに達成感や充実感を得て、人間的に成長することはとても重要だったのだろう。

コンクールでは金・銀・銅賞のほか、ルーキー賞、敢闘賞など、さまざまな賞が設けられている。2023年度のエリア奨励賞には、“青森県立八戸聾学校 チーム八聾の皆さん”や“青森県立八戸第二養護学校 八二5−5の皆さん”などの名前もある。ラジオ体操には障がいのある子どもたちも親しんでいるのだ。

「ラジオ体操は、障がいの有無に関わらず誰でもできる体操なので、特別支援学校からの応募は珍しいことではありません。障がいの程度は一人ひとりで異なるかと思いますが、皆さんができる動きをできる範囲でやっていただいているので、エリア奨励賞などを受賞することで、ますます積極的に取り組んでいただけるといいなと思います」

このコンクールで特徴的なのは、技術を競うだけではなく、どのようにラジオ体操に取り組んでいるかを評価する“取組部門”があることだ。1級ラジオ体操指導士の資格を持っている校長先生が自ら正しい体操の見本を見せて指導したり、体育委員会が正しいラジオ体操を紹介するパンフレットやオリジナルのラジオ体操カードを作成し、保護者や地域の方々に参加を呼び掛けたりなど、多彩な活動があることがわかる。

「そのように学校の中だけに収まるのではなく、地域の皆様も一緒になって取り組んでいただければ、コミュニティの強化にも繋がるのではないかと思います。このコンクールへの取り組みをきっかけに、ひとりでも多くの方がラジオ体操に触れて身体を動かす喜びを知り、児童の健全な育成、学びの場の広がりに繋がっていくといいなと思います」

かんぽ生命のラジオ体操の普及推進に対する並々ならぬ思いは、谷杉さんの言葉の随所から感じられるのだが、かんぽ生命にはラジオ体操の仕事を専任で行っている部署があると聞けば驚く人は少なくないのではないか。さらに、かんぽ生命の全国13エリアには一人ずつ専任でラジオ体操の推進担当の社員がいるそうだ。その方たちが地域の小学校などにコンクールについて説明するなど、ラジオ体操が地域に根付くための活動を行っている。

ラジオ体操普及を担う専任の社員がいて、さまざまな施策をおこなうかんぽ生命の姿勢からは、みんなの健康を願うという本気の思いが伝わってくる。たった3分だが、されど3分のラジオ体操。記憶の彼方だという方も、是非思い出しながら身体を動かしてみてほしい。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
画像・写真提供:株式会社かんぽ生命保険
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