家事などを少しでもラクにすれば、それだけ自分の時間になります。画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(74歳)。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。「ものは少なくシンプルに暮らす」ことをモットーにしている小笠原さんは、家事全般も簡素化していると言います。その工夫について教えてもらいました。

家事をラクにする前提は「ものを持たない」こと

年金生活者の私の“仕事”といえば家事に尽きますが、その家事はとてもシンプルです。家事をラクにするのは、「減らすことと、持たないこと」です。炊事や洗い物の手間を減らし、洗濯や掃除の回数を減らすためには、日々小まめに片づけておくことが大事だと思います。

【写真】拭き掃除をする小笠原さん

室内をシンプルにするのも一手です。私の場合、家具などは減らすにも減らしようがないほど持ちあわせていませんが、家事から逃れるためには、なんと言っても「持たないこと」だと思います。

衣類も装飾品なども家具同様に減らして、すっきりさせたら、それをしっかり維持することが大切です。次に大事なのは、その後、整頓した状態を乱さないことです。たとえばひとつでも出しっぱなしのものがあったら、それをすぐに片づけるのです。あとで片づけようではなく、気がついたその時即座に、元あったところに片づけるのです。そうでなければ、せっかくの整頓も台なしです。

片づけは収納場所もしっかり整頓しておく

私の住まいは築40年ほど経った古い団地ですが、利点の一つは収納場が多くて広いことです。3DKの中に、天袋つきで一間ある押し入れが二か所と、天井までの高さがある戸棚が二か所。ひとり暮らしで、しかも所有物の少ない私にとっては申し分ありません。

とはいえ、そんな押し入れを「乱雑に押し入れる場所」にしてしまうと、部屋がきれいだとしても根本的な整美にならないのです。整った家にするためには、収納になにを入れるか、その活用法を考えておかなくてはいけません。

見えない所だからどうでもいいとは思わず、あけたとき、つねに一部屋のように整えておくことが、使い勝手のいい収納庫なのです。お部屋と同じように小まめに片づければ、あとがラクです。

炊事は時間をかけずにシンプルに、食器も最小限

次に、私の料理とはいえば焼く、ゆでる、チンするだけ。調味料をほとんど使わず、栄養重視の食事をします。このように、料理から時間量を省くと、調理だけでなく後片づけも簡単。炊事が圧倒的に楽になります。

簡素な料理は、器で彩りを盛るという考えの人もいるかもしれません。でも私は、食器の数もごく少量です。

一枚のお皿に煮豆を入れて食べたら、立ち上がって同じお皿に残り物のナス炒めをのせてきたり、またその次には、お刺身を二切れほど入れてきて食べたりするのが好きです。調理なしで燃料費の軽減。食器を1、2個に絞るという後片づけの簡素化は、就寝に向けて早くくつろぎ態勢に入るにうってつけです。

簡単な掃除は小まめに行い、ほぼ手間なし

掃除はといえば、コロコロを転がしたり、布切れでシミをふき取ったり、さっと棚の上を整えるだけ。うっかり食べ物をこぼしたときなどは、ついでに周囲をふき掃除し、すみっこにホコリを見つけたときは無視しないで立ち上がり、軽量のクリーナーでひと部屋分を掃除します。

また洗濯物は、入浴時に下着や靴下などの小物を手洗いし、週に1、2度の割で風呂水を利用して洗濯機を回すのみです。

大きな家具が部屋を占めていれば、お掃除がしにくいだけでなく、その家具自体の手入れもしなければなりません。お洋服を大量に持って、着まわさずに毎日脱衣カゴに脱ぎ捨てていけば、どんどん洗濯量も増えていきます。

やはり、ものが少ないとこういった家事全般がとてもラクになりますね。