ESSEonlineで2024年6月に公開された記事のなかから、ランキングTOP10入りした記事のひとつを紹介します。

フランス人は毎朝ベッドメーキングを行い、洗面台を水滴1つなくふき上げます。さらに、キッチン回りはスポンジと麻のクロスで2度ぶきするそう。フランス文化研究者・翻訳家のペレ信子さんが、幼い頃から習慣づいたフランスの「掃除意識」についてレポートします。

※ 記事の初出は2024年6月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

フランス人は自室を「城」のように愛す

フランス人はだれもが城のような広い家に住んでいるわけではありませんが、各々が愛情をもって家を城のように心地よい場所にしようと努力しています。

そんなフランス人が、急に人が来るときも、1人でいるときも、「コレだけは必ずやる」という掃除についてご紹介します。

小さいときからしつけられる「ベッドメーキング」

フランス人の家に招かれて部屋を見せてくれたり、泊まったりしたときに最初に強く印象に残ったこと。それはどの家に行っても、ベッドメーキングがバッチリされていたことです。

フランスはセントラルヒーティングと言われる、建物の一か所に熱源装置を設置して各部屋に暖房を送るシステムの建物が多いので、冬でも部屋は暖かい。羽毛布団のような厚みのある布団よりも薄手の掛け布団を使うことが多いようです。もし寒かったら使ってくださいと羽毛布団が添えられていることもあります。

基本のベッドメーキングは、マットレスに大きな2枚のフラットシーツと毛布や薄いかけ布団。

まるでホテルのようにぴっちりとマットレスに沿ったベッドメーキングをします。

最初はお手伝いの人がいるのかと思ったのですが、夫の家族から「親は子どもにベッドを整えてから学校に行くように教える」と説明されました。朝起きたら窓を開け放して上のシーツと毛布を取って朝食中に部屋換気。そして学校に行く前にベッドメーキング。毎日やっているうちにプロのようにぴっちりシーツを整えられるようになるそうです。

洗面台は鏡も含めてきれいに整えて使う

フランスの夫の実家にしばらく住んでいた時期がありました。食事や泊まりなど来客が多い家で、来客があるときによく掃除の手伝いをしました。

私がよく頼まれたのがバスルームの洗面台の掃除。バスルームにシャワー、トイレ、洗面台があり、大きな鏡も含めて洗面台をきれいにすると、一気にバスルーム全体がきれいになった感じがしたものです。そういえば私が初めて夫の家に来たときも洗面台と水栓が水滴1つなくふき上げられていて清潔感を感じたのを思い出します。

掃除のあとは洗い立てのタオルを出して洗面所にかけますが、ハンドソープや置いてあるルーム用香水は普段から美しいパッケージのものを使っているので、使ったタオルで底をふいてそのまま置きます。

現在、夫の両親は高齢者2人暮らしですが、今でも行くたびに香りがよく美しいハンドソープや香水が置いてあり、洗面台もふき上げられていて感心します。

キッチンはスポンジと麻のクロスで磨き上げる

キッチンの掃除は日本と違うところが結構あります。

まず、テーブルやガス台はお皿を洗うスポンジで水ふきして汚れをふき取ります。ソースがこぼれていたり、こびりついているときは少し洗剤も加えてスポンジでふき取ってからさらに水ふきします。

スポンジは食洗機に入らないものを洗うときとテーブルやガス台をふくときにしか使いません。普通の食器はほとんど食洗機で洗います。

そのあと、まだ濡れているテーブルやガス台、水栓を麻のキッチンクロスでふいて乾かします。ディナーパーティーをしたあとも、普段の夕飯のあとも、同じようにしてテーブルやキッチンを麻のクロスでふき上げるとツルツルして気持ちよいのです。

麻のクロスはおばあちゃんの時代から使っているようですが、最近はマイクロファイバーのクロスに変わってきている様子。濡れた台ふきでふいて終わる方法はフランス人にとっては表面が濡れたままで、水滴の跡がついたりして今ひとつ満足できないようです。

美しく心地よい家が理想。でもたまにはお休みも

親から教えられたベッドメーキングや、水まわりを拭き上げること。毎日ですから完璧にできないときもあるでしょう。

夫は学校に遅刻しそうで、ベッドメーキングの時間がないときは、お母さんに叱られないよう、隣の家に住んでいたおばあちゃんが代わりにこっそりベッドメーキングをしてくれていたそうです。