こちらはNASA(アメリカ航空宇宙局)とNOAA(アメリカ海洋大気庁)が共同運用する静止気象衛星「GOES-U」です。主に北米周辺の気象観測を行いますが、地球上の生活に大きな影響を及ぼす太陽フレアなどの観測も実施します。


【▲ 製造中の静止気象衛星「GOES-U」(Credit: NOAA)】

■GOES-Uとは

GOES-Uは2024年6月26日(日本時間・以下同様)、アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)のロケット「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」に搭載されて打ち上げられました。海外メディアのSpaceNewsによると、GOES-Uは発射約4時間半後にFalcon Heavyの2段目からの分離に成功したということです。


【▲ GOES-Uを搭載して打ち上げられたFalcon Heavy(Credit: SpaceX)】

GOES-Uは2016年から打ち上げが行われてきた「GOES-R」シリーズの4番目の衛星であり、かつ最終号機で、アメリカの民間企業Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)によって製作されました。軌道上での衛星の大きさは6m×5.5m×4mで、高度約3万6000kmの静止軌道を周回します。NASAによると、GOES-Uは静止軌道に到達するのに約2週間かかり、到着後は「GOES-19」と改名されて運用が行われるということです。


■GOES-Uの搭載機器

GOES-Uには地球の天候と太陽活動を観測する機器が搭載されています。地球の天気を調べる観測機器は、西半球の天気や海洋状況を画像として撮影・観測する「Advanced Baseline Imager(ABI)」と、雲中の雷を観測できる「Geostationary Lightning Mapper(GLM)」の2種類です。NOAAによると、GLMは静止軌道から地上の雷を観測できる初の機器になるということです。


【▲ GOES-Uは北米地域の気象観測だけでなく、太陽活動も観測する(Credit: NOAA / Lockheed Martin)】

太陽活動を観測する機器は、コロナ質量放出(CME)を検出する「Compact Coronagraph-1(CCOR-1)」、太陽フレアを検出して地球の上層大気に影響を与える太陽放射照度の観測を行う「Extreme Ultraviolet and X-ray Irradiance Sensors(EXIS)」、紫外線波長を用いて太陽の全体像を観測する「Solar Ultraviolet Imager(SUVI)」の3種類が搭載されています。


また、地球の磁気圏上部の磁気を観測する「Goddard Magnetometer(GMAG)」や、磁気圏における陽子・電子・イオン束を観測する「Space Enviroment In-Situ Suite(SEISS)」も搭載されており、地球周辺の宇宙環境を調べるために用いられます。これらの観測機器は太陽の異常活動により発生する地上の通信・放送・測位システムなどへの影響を予測し、被害を低減することに役立ちます。


太陽の活動は約11年周期で活発な時期と静穏な時期が繰り返されています。活動期には太陽フレアやCMEが活発に生じ、地上の活動や地球周辺の宇宙活動にも影響が及びます。NASAとNOAAの専門家グループ「The Solar Cycle 25 Prediction Panel」によると、現在の太陽活動周期は2019年12月に始まり、2025年7月に極大期を迎えると予測されています。今回打ち上げられたGOES-Uは、今回の太陽活動周期の極大期における観測で重要な役割を担うと考えられます。


 


Source


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文/出口隼詩 編集/sorae編集部