アメリカ航空宇宙局(NASA)が、2027年に予定されている「Compton Spectrometer and Imager(COSI:コンプトン分光計およびイメージャー)」の打ち上げに、イーロン・マスク氏が設立した宇宙開発企業のSpaceXを採用しました。SpaceXの選定理由については、COSIを特殊な軌道に投入できるロケットがSpaceXのファルコン9しかなかったからだと報じられています。

NASA Awards Launch Services Contract for Space Telescope Mission - NASA

https://www.nasa.gov/news-release/nasa-awards-launch-services-contract-for-space-telescope-mission/



SpaceX to launch NASA gamma-ray space telescope in 2027 | Space

https://www.space.com/spacex-launch-contract-nasa-cosi-space-telescope

NASA selects SpaceX to launch a gamma-ray telescope into an unusual orbit | Ars Technica

https://arstechnica.com/space/2024/07/spacex-selected-to-launch-nasa-mission-probing-the-creation-of-matter/

COSIは2027年に打ち上げられる予定のガンマ線望遠鏡であり、大質量星の爆発(超新星爆発)と寿命の終わりによって放出されるガンマ線を観測するとのこと。超新星爆発は軽い元素から重い元素を作り出す超新星元素合成を引き起こし、COSIのデータはこれらの元素が天の川銀河のどこで合成されているのかをマッピングする際にも役立ちます。

NASAは、「この広視野ガンマ線望遠鏡は物質と反物質の生成及び破壊、そして星の一生の最終段階を含む、天の川銀河とその向こう側におけるエネルギッシュな現象を研究します。NASAのCOSIミッションは、天の川銀河における陽電子の起源を探り、私たちの銀河系における核合成の場所を明らかにし、ガンマ線偏光の研究を行い、マルチメッセンジャー光源に対応するものを見つけます」と述べています。



COSIは2021年に開催された「エクスプローラー計画」のコンペティションで受賞し、2024年初めには打ち上げに向けた開発ミッションが正式に承認されました。製造はノースロップ・グラマンが手がけ、総予算は2億6700万〜2億9400万ドル(約430億〜475億円)に上ります。

NASAは7月2日の声明で、COSIの打ち上げ事業者にSpaceXを選択したことを発表しました。NASAによると、COSIの打ち上げは2027年8月が予定されており、SpaceXとの契約費は打ち上げサービスやその他の関連コストを含めて約6900万ドル(約110億円)とのことです。

テクノロジー系メディアのArs Technicaは、COSIは比較的小型の宇宙探査機であり重量は1トン未満であるものの、赤道上空550kmという特殊な軌道で運用される点が特徴だと指摘。この軌道が選択されたのは、ガンマ線観測に影響を及ぼすヴァン・アレン帯を避けるためだとのこと。

ファルコン9はアメリカ・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた後、COSIを赤道軌道に直接投入するために横向きの移動を行うそうです。COSI程度の重量を持つ宇宙探査機をこの方法で打ち上げられるのはファルコン9だけだったため、NASAは打ち上げ事業者にSpaceXを選択したとArs Technicaは説明しました。



by Jill Bazeley