「腎臓がん手術の入院期間」はどのくらい? 手術内容や費用についても解説!

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腎臓は、血液をろ過して尿を生成します。生成された尿は尿管を通って膀胱へと運ばれていきます。

腎臓は血圧のコントロール・造血ホルモンの生成・ビタミンDの活性化などの役割を担って、私たちの体の健康を維持するのにかかせない臓器です。

腎臓に悪性の腫瘍ができるのが腎臓がんです。腎臓がんの治療はがん化した部位を手術で切除する方法が一般的になっています。

なお、手術方法には腹腔鏡を用いた手術やロボット支援手術などが主流です。本記事では腎臓がんの治療方法・入院期間・入院費用などを詳しく解説します。

≫「腎臓がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?症状や検査方法も解説!

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎臓がんとは

腎臓がんは腎臓にできる腫瘍で腎がんとも呼ばれて、発見が遅れるとさまざまな部位に転移する悪性のがんです。
初期段階では自覚症状がほとんどないとされているので発見するのが難しい病気といわれています。そのため、ほかの病気の特定検査や健康診断で発見される場合が少なくないです。
腎臓がんは特定の腫瘍マーカーがないため、腹部超音波検査(エコー検査)や造影剤を使ったCT検査で病気を特定します。なお、透析患者さんが腎臓がんになる割合は多く、一般人の15倍にもなります。

腎臓の細胞ががん化した疾患

腎臓にできるがんは2種類あります。

腎細胞がん=腎実質(皮質・髄質)の細胞ががん化して悪性腫瘍になったもの

腎盂がん=腎臓で生成された尿が通る管の細胞ががん化したもの

腎細胞がんと腎盂がんは、がんの性質や治療法が異なります。なお、腎臓がんの多くを占めるのが腎細胞がんになるので一般的に腎臓がんと呼ばれるのは腎細胞がんのことです。

主な症状

腎臓がんは初期段階では症状が出にくいため、気付くのが遅れる場合があります。
腎細胞がんが小さいうちに発見されるとしたら、健康診断やほかの病気の検査で偶然発見されることが少なくないです。
腎細胞が大きくなったら以下の症状が出始めます。

血尿

背中や腰の痛み

腹部にしこり

足のむくみ

食欲不振

吐き気

便秘

腹部の痛み

腎臓がんは、肺・骨・肝臓・副腎・脳に転移しやすい病気です。

腎臓がん治療に有効な手術の種類

腎臓がんは抗がん剤や放射線治療の効果が得られにくい特徴があるので外科的治療が一般的です。ここからは3つの外科的治療の詳細を解説します。

開腹手術

開腹手術は腹部を切開して行います。手術の方法は2つあります。

腎部分切除術(腎機能温存手術):がん化した部位を部分的に切除する

腎摘除術(根治的腎摘除術):がん化した腎臓をすべて取る

腎部分切除術は、4cm以下の腫瘍の摘出に有効とされています。
一方、腎摘除術でほかの臓器にがんの転移が認められた場合は転移した臓器や血管内のがんの切除も行います。
腎臓は2つあるためもう片方の臓器が正常な機能を保っていれば生活への支障はほとんどありません。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術の手順は以下になります。

全身麻酔

腹部に5~12mm程の穴を3~5ヵ所開け

ポート(筒)の挿入(手術用の鉗子やハサミを挿入するため)

CO2ガス(炭酸ガス)で腹部を膨張させる(気腹)

ポートに内視鏡を挿入

モニターをみながら手術開始

切除した臓器を摘出する

ドレーン留置(体内の出血などを体外に排出するため)

穴の縫合

摘出する際に、がんの大きさによっては2~10mm程度腹部を切開する場合があります。また、手術中に癒着や合併症を発見した場合は、開腹手術に切り替えることがあります。

ロボット支援手術

ロボット支援手術とは腹腔鏡手術の一種です。
カメラを装着した4本のアームを遠隔操作して手術を行います。高画質のモニターで細部まで鮮明にみえて拡大も可能です。
手首のような関節機能があって人では不可能な曲げ方や回転もできます。ロボット支援手術の特徴は以下のものがあります。

出血量が少ない

身体への負担が少ない

手術後の回復が早い

合併症が少ない

機能の温存が望める

がんの取り残しが少ない

ロボット支援手術の普及により、合併症を増加させずに温阻血時間(血液が臓器に流れていない時間)を短縮できます。

腎臓がん手術の入院期間にみられる違い

腎臓がんの手術は開腹手術と腹腔鏡手術になります。
腹腔鏡手術は数ヵ所小さな切開をするだけでがんを切除できるので、術後の痛みや出血量も少なく患者さんの体への負担が軽いのが特徴です。
そのため、2つの手術を比較した場合開腹手術は術後の処置や経過観察に時間が必要なため入院期間が長くなります。

開腹手術の場合

腎臓がんの手術は体への負担や予後の回復が早い点を考慮して、腹腔鏡手術やロボット支援手術が主流になっています。
一方、開腹手術を行う必要がある症状はがんの部位が大きい場合や隣接した臓器に転移がみつかった場合です。そのため、手術後の経過観察の期間が長くなるので、入院期間は7~14日間が目安になります。

腹腔鏡・ロボット支援手術の場合

腹腔鏡手術やロボット支援手術は、開腹手術に比べると体への負担が少ないため入院期間は短くなります。また、入院前日まで生活を制限されることはほとんどありません。
入院期間は8~10日程が一般的です。なお、退院後の生活の制限も特にはないですが、職場復帰は体調をみて無理がないようにしましょう。

腎臓がんの手術・入院期間にかかる保険診療の費用

がんの治療費は高額になると聞くことが多く、がんになったらどうしようと悩んだことがあるのではないでしょうか。
腎臓がんの治療費を自費で払うとたしかに高額ですが、腎臓がんの治療費は保険適用が認められています。
ここからは腎臓がんの治療費の目安と高額療養費制度を詳しく解説します。

治療費用の目安

腎臓がんの治療費は手術の術式や入院期間で費用が異なります。以下は術式別の入院期間と入院費用の目安です。

開腹手術(入院期間12日間):入院費用122万円(税込)程

腹腔鏡手術(入院期間9日間):入院費用125万円(税込)程

ロボット支援手術(入院期間9日間):入院費用150万円(税込)程

切除部位の大きさや転移の有無などで手術費用が変わってくる可能性があります。

保険診療による自己負担額

腎臓がんは保険診療が認められています。保険適用には1割負担と3割負担の方がいます。
以下が保険診療による自己負担額です。

開腹手術(入院期間12日間):1割負担約5.76万円・3割負担約38万円

腹腔鏡手術(入院期間9日間):1割負担約5.76万円・3割負担約41万円

ロボット支援手術(入院期間9日間):1割負担約5.76万円・3割負担約45万円

保険適用が認められるのは、手術費用を含めた入院費用です。差額ベッド代や食事代、予約診療代・紹介状を持参しないで200床以上の病院を受診した場合の初診料や再診料などは自己負担になるので注意しましょう。

高額療養費制度の利用が可能

高額療養費制度とは、健康保険または国民保険の加入者が、同月内(1日~月末まで)に同じ医療機関を受診して支払った医療費が減額される制度です。
70歳未満の方の申請方法は、各市町村の役所または勤め先に限度額適用認定証を申請すると所得に応じて医療費が減額されます。また、70歳以上の方は、高齢者受給者証を提示するだけです。
ただし、低所得者1・2に該当の方は限度額適用・標準負担額減額認定証の申請が必要です。なお、限度額適用認定証は窓口で支払う時点で自己負担限度額以上は支払う必要がありません。有効期限は1年間で1年を超えた場合は再申請が必要です。

腎臓がん手術の入院期間についてよくある質問

ここまで腎臓がんの入院期間・治療方法・保険診療などを紹介しました。ここでは腎臓がんの入院についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

診断から手術までにどのくらいの期間がかかりますか?

村上 知彦(医師)

腎臓がんと診断されてから手術までは1週間から1ヵ月程が一般的です。手術までの期間が長いと手遅れにならないかと心配になりますが、すべてのがんが早急に手術の必要がある訳ではないです。手術までに検査や持病の治療などを行い、合併症のリスクを下げる準備をします。手術に不安を感じたら担当医に相談しましょう。

入院中はどのような生活になりますか?

村上 知彦(医師)

入院中は術後の経過観察が行われます。入院中の生活の流れは以下になります。

当日:点滴・酸素マスク・ドレーン・尿道カテーテルなどを装着してICUまたは病室に帰室

2日目:離床・歩行開始・水分摂取可能、状態によって食事開始・尿道カテーテル抜去

数日後:ドレーン抜去・抜糸

7~14日目:退院

手術後に合併症がない場合は早期の退院が見込めます。ただし、職場復帰はなるべく体調が戻ってから行うようにしましょう。また、開腹手術を受けた方は激しい運動はしばらく控えましょう。

編集部まとめ

ここまで腎臓がんの治療や入院期間などを解説しましたが、腎臓がんは腹腔鏡手術が主流で体への負担が少ない手術が可能です。

がんは身体的や精神的な負担が大きい病気のうえ、治療費の経済的な負担もストレスの原因になります。しかし、腎臓がんは保険適用が認められるので生活への負担が軽減されます。

また、腎臓がんはがんが小さいうちに発見できれば短時間の手術が可能で入院期間も短くなり、早期の職場復帰ができます。

腎臓がんは超音波検査やCT検査などで発見できるので定期的にがん検診をしましょう。

腎臓がんと関連する病気

「腎臓がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

尿路上皮がん

腎血管筋脂肪腫

オンコサイトーマ

上記はいずれも腎臓に発生する疾患ですが、腎血管筋脂肪腫・オンコサイトーマは良性腫瘍です。

腎臓がんと関連する症状

「腎臓がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

血尿

腹部のしこり

痛み

体重減少

発熱

貧血

腎臓がんの4人中1人は、肺・骨・リンパ節などに転移がみられます。進行すれば呼吸困難や痛みが伴います。

参考文献

透析腎癌

腎臓がん(腎細胞がん)について(国立がん研究センター)

腎臓がん(腎細胞がん)治療(国立がん研究センター)