どのようなことをすれば、地方にもどんどん仕事がくるようになるのでしょうか(写真:IYO/PIXTA)

「今の日本で最大の課題とされる『地方創生』にこそ日本の未来はかかっている」

2022年度の「地方創生テレワークアワード(地方創生担当大臣賞)」と「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」をダブル受賞した株式会社イマクリエ代表の鈴木信吾氏はそう語る。

地方創生をビジネスの使命として全国を駆け回り、約1万人の関係者と接した鈴木氏が、その経験をフルに生かして、このたび『日本一わかりやすい地方創生の教科書 ――全く新しい45の新手法&新常識』を上梓した。

各自治体からは、その地域ならではの「地に足のついた提案」で好評を博している鈴木氏が「地方で『東京並みの報酬』『いい仕事』は増やせるのか」について解説する。

地方には「魅力ある仕事」はないのか

全国の自治体からは、相変わらず次のような悲鳴が聞こえてきます。

「大学に進学するためにまちを出て行った若者が帰って来ない」


「少子化もあって労働力人口(15歳以上+就業者と完全失業者)はどんどん減少して、まちは高齢者ばかりになってしまう」

「まちには仕事はあっても、若者が魅力を感じる『いい仕事』がない」

「20代から40代の女性層の流出が激しい。このままでは子どもを産む世代の女性がまちからいなくなってしまう」

しかし、少し「視点」を変えていくことで、このような状況を乗り越え、「地方にもどんどん仕事が来る」ようになる可能性が大きくなります。

実際、「東京並みの報酬」で働く地方在住の人も実在します。

では、どのようなことをすればよいでしょうか。ここでは、「地方にもどんどん仕事がくる3つのポイント」を紹介します。

ひとつめは「若者や女性層が好むような仕事をもってくる」ことです。

【1】「若者や女性層が好むような仕事」をもってくる

これまでは、都会から企業を誘致するために、自治体は工業団地を造成して製造業の大企業を迎え入れることにやっきでした。

大規模な工場が来れば大きな雇用が生まれ、労働者の転入によって人口減少もおさえられる。そういうメリットがあったのです。

しかしいまは、「規模の大きな製造業の工場が来ても、若者や女性層はその仕事を好まない。そこで働くよりも都会がいいといってまちを出て行ってしまう」というのが現状です。

これからは「規模は小さくてもいいから、若者や女性層が好むIT産業やサービス業」などに注目することが大きなポイントです。

「女性」を対象にした「テレワークのセミナー」を開く

たとえば、石川県羽咋市では「女性に魅力あるまちづくり」を目標に掲げ、「女性を対象にテレワークのセミナー」を開きました。

テレワークを使って都会の仕事を得て地元で働くことができれば、女性層の流出を防ぐことができると考えたのです。

また、このセミナーの受講生を地元の企業に紹介して、地元の就業につなげるというアイデアもあがりました。

地元企業も人手不足に悩んでいますから、テレワークでの人材獲得ができれば、市民テレワーカーと地元事業者がWin-Winで結ばれます。

このように、「若者や女性層が好むような仕事」をもってくることで、若者や女性層の流出を減らすことにつながります。

【2】「テレワーク」なら、「東京の報酬と同程度の仕事」も可能

いままでは、人もモノも金も情報も、すべて「東京一極集中」が当たり前でした。人・モノ・金・情報は全国各地から一度東京に集められて、そこからシャワー効果で地方に振りまかれる。

それが日本の国づくりであり、基本的なありようだったのです。そのため、「東京の報酬と同等」ということが難しい環境でした。

しかし、テレワーク」に注目するようになったことで、この環境も大きく変わりました。

テレワーカーの募集は「地方からの応募者」が多かった

イマクリエで「テレワーカー」を探して求人募集を行ったのですが、「テレワークができる人材はやはりパソコン環境が整った都市にいるだろう」と思い、東京と福岡で募集をかけたのです。

ところが、テレワークを求めて、たくさんの応募者が集まってきたのは、なんと熊本からだったのです。

募集したのはテレワークを使った営業とか事務といった職種だったのですが、そういう仕事を希望する人は地方にいるのだということが、私にとっても大発見でした。

また、東京からの応募者を10人とすると、その10倍の100人くらいが地方在住者だったのです。

地方から応募が多かった理由のひとつは、やはり「地方には仕事がない」ということのあらわれでしょうが、「首都圏の基準で対価を支払う」という条件も大きかったと思います。

このように、テレワーク」を活用し、「東京の報酬と同じ程度の収入を確保できる仕事」をもってくることも、重要なポイントのひとつです。

【3】自分の「好きな場所」「好きな時間」に仕事ができる環境をつくる

「子育て中のお母さん」「故郷に戻って親の介護をしている人」などは、会社員になって毎日オフィスに通うことはできない人が多いです。しかし、なかには「短時間の労働ならできる」という人も少なくありません。

このような人たちも働けるような環境をつくることが3つめのポイントです。

たとえば、全国の廃校舎を利用したプロジェクトを立ち上げた「リングロー株式会社」です。

山形県舟形町で廃校舎を利用したプロジェクトでは、基本的にスタッフは地元雇用です。そのなかで比較的多いのは30〜40代の主婦で、家事や子育ての空き時間に働きたいとか、親の介護があるときは出社できないから他のみんなでカバーするなど、自由度の高い働き方をしています。

この「自分の好きな場所で好きな時間に仕事ができる環境」ができたことで、地方に仕事が増え、廃校舎が再利用できたというメリットにもなりました。

「地方でできる仕事」は、まだまだたくさんある

「地方は若者や女性層が流出する」「魅力に感じる仕事がない」と言われていますが、コロナ禍以降、「仕事があれば地方に移住したい」という人も増えている傾向があります。

この3つのポイントから取り組んでいけば、地方には、仕事も人もどんどん増えていく可能性が大きくなっていくはずです。

みなさんの地域で「地方創生」が成功へとつながっていくことを信じています。

(鈴木 信吾 : 『日本一わかりやすい地方創生の教科書』著者・「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」受賞)