そういう販促費も抑制したりと、利益を確保するための経費抑制策を講じているようだ。ガスト原価率は約30%と低く安定しており、これは低価格の品揃えが中心の時から原価管理技術は高く評価されている。東証プライム市場に上場し、株主の目も厳しいから、これらマネジメント能力の高さは当然か。

◆庶民の味方のガストも新たな店舗戦略にシフト

 ファミレスは1食完結型の定食メニューの豊富さが特徴だが、ガストは傘下業態の強みを持ち寄り商品力を強化しており、今は居酒屋客にもアプローチ中だ。そもそもガストが、ちょい飲み客にアプローチしたのは、アイドルタイム(14時〜17時)の有効活用から始まったもので、最初はその時間帯だけのお得企画であった。

 そのちょい飲み企画が浸透し一定の成果が出てきて定着してきたので、内容を充実させて本格的になったようである。限られたキャパシティを有効に活用するには時間帯の集客対策が必要で、通常ランチタイムとディナータイムのピーク時のお客をいかに分散させるかが、店の売上拡大に直結してくる。

 そもそも店の運営にはお客さんが、来ても来なくても必ず行う固定作業(定型業務)と来店客に応じて発生する変動作業がある。キッチンであれば仕込み、ホールであればクリンネスが固定作業だ。どうせスタッフを投入するなら固定作業だけでなく、変動作業にも対応できれば人材の有効活用になる。

 個人店などは電気代や人件費がもったいないからと閉める店がほとんどだが、チェーン店はフルタイムで開けているから売上が上がればラッキーなものだ。回転寿司もアイドルタイムに、パフェなどデザート関係を充実させて女子高校生たちを誘引しているのと同様だ。店を開けているのなら席も使わないと、という当然の発想である。

◆現場力の強化に向け飲食版DXに積極的

 株式会社すかいらーくレストランツは直接傘下に20の業態を有している(グループ全体で2964店、主なブランドはガスト1272店、バーミヤン354店、しゃぶ葉282店。2024年3月末時点)。買収した子会社と全体最適化の戦略を展開しており、顧客の多様化したニーズに対応した業態を、自社ですべて投入するフルライン戦略で、外食市場3位の位置を厳守している。

 収益の源泉である店舗は、クルー(アルバイト)中心の運営だが、厳格な管理がされており、マネジメント力の高さは定評がある。飲食店経営は製造業と小売業の融合事業である。したがって、客数(新規客の誘致・既存顧客の来店促進)の伸び・客席回転率などの効率性・経費の大部分を占めるFLコスト(原価と人件費)・サービス評価などKPI(重要業績評価指数)の管理精度を高めることが重要だ。

 人件費管理においては、正社員とクルーの時間による総労働時間を予測時間帯別売上に応じて適正に投入し、人時生産性を徹底管理している。ガストも、もちろんセントラルキッチンを有しており、店舗では最小限の作業で料理提供できるように業務の効率化がされている。

◆時給が約95円の配膳ロボットをフル活用

 通常、セントラルキッチンを有する外食チェーン店は、セントラルキッチンで集中加工し、店舗の調理場の負担を軽減した業務分担になっている。現場の店舗運営では、キッチン比率が45%とホール55%とホールの比率が高い店が多い。しかし、ガストは逆でキッチンのほうが55%となっている。

 これは、ホールは料理提供の役割を担う配膳ロボットが稼働していることも一因で、本部からは時給が約95円(本連載の過去記事を参照)の配膳ロボットをフル活用するように指示されているようだ。定着したデリバリーもガストは自前の配達員で届けており、平日2人・土日祝3人で配達しているが、ホールの繁忙時の人手不足には、このデリバリースタッフも応援に入り、混雑状態を解消させている。