韓国デイリーNKは北朝鮮当局が制作した、韓流コンテンツを視聴したなどとして公開批判される人々の映像を入手した(デイリーNK)

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北朝鮮当局が最近、「韓国ドラマを見たり流布したりしても、正直に告白すれば許す」というキャンペーンを展開しているとFNNプライムオンラインは先月末に報じた。

しかし、北朝鮮国民がこうした「甘い誘い」に、易々と乗るとは思えない。当局の場当たり的なやり方に、散々痛い目に遭わされてきたからだ。実際、本来なら軽い処罰で済みそうな罪に対し、突然、死刑判決が下される例もあるのだ。

韓国との境界線に近い黄海南道の青丹(チョンダン)郡で、こんな事件があった。

この地域は、韓国で唯一残ってるアナログ放送のKBS第1テレビを受信することができるため、韓国のテレビ番組をこっそり視聴している人が少なくないという。

同じ人民班(町内会)に住む隣人だったAさんとBさんの2人の女性も、そんな「密かな楽しみ」を持っていた。ところが一昨年の12月、近所の住民によって密告され、保衛部(秘密警察)に逮捕されてしまう。

そして半年後、2人は動員された住民たちが見守る中で、公開闘争会議にかけられた。自ら反省の弁を述べ、代わる代わる様々な人から批判されるという「吊し上げ」だ。その場で保衛部は、「2人が急速に接近したきっかけは、南朝鮮(韓国)と外部社会への好奇心を話す過程で、変質した思想を共有した」と、犯行動機が述べられた。

従来なら、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)送りにされたり、罪状が「悪質」と見なされた場合でも、懲役3〜5年の処分を受け教化所(刑務所)送りにされたりするのが一般的だ。しかし保衛部は「情勢が複雑な最近、思想的に変質した行為が目に見えて表れており、気を引き締めさせよとのいうのが中央の意図」だとして、2人をその場で銃殺刑にした。

(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面

予想外かつ残酷な展開に、見守る人民班の人々は「ありえない」と衝撃を受けたという。

北朝鮮では、こうした超法規的な処刑が頻繁に行われている。「自首すれば見逃してやる」という当局の誘いに乗れば、仮にその場では見逃されるとしても、後々どんな禍に見舞われるかということを、かの国の人々は百も承知しているのだ。