長期の懲役は免れないとされる水原容疑者(時事通信フォト)

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 約24億円を大谷翔平(29才)の口座から盗んでいた水原一平容疑者(39才)。スーパースターの信頼を裏切った彼には、どんな未来が待ち受けているのか。【前後編の後編。前編を読む

【写真】足首にチェーンと金属風の足枷を付けられた水原一平氏。裁判中。イラスト。他、寄り添う大谷翔平と真美子さん、200kg超を持ち上げる大谷も

 世紀の賭博スキャンダルが明るみに出る前夜の3月20日、水原容疑者は自身に疑念の目を向ける大谷に対し、“最後の賭け”に出ていた。

「宿泊先の韓国のホテルで大谷選手と向き合った水原容疑者は、説明を求める大谷選手に『クラブハウスで説明したように、ぼくの借金を翔平が肩代わりしたことにしてくれないか?』と懇願したそうです。しかし、大谷選手がその提案に首を縦に振ることはなく、最終的には話し合いの場に、遠征に同行していた水原容疑者の妻も同席し、“チーム大谷”の面々に罪を自白したとされています」(現地特派員)

 長年の信頼を裏切り“破滅”を迎えた水原容疑者。一部では、大谷が裁判に情状証人として出廷して減刑を願い出るのではないかとの観測もあったが、4月13日、大谷はロサンゼルス・タイムズの直撃取材にきっぱりこう答えている。

「司法省の捜査に感謝している。自分の中ではこれでひと区切り。野球に集中したい」

 水原容疑者にも、この騒動にも、もうかかわりたくない。大谷のそんな強い意志が表れていた。ましてや、情状証人で出廷などあり得ないだろう。

 大谷からの“絶縁宣言”が世に出たその日、韓国遠征以降、行方不明と伝えられていた水原容姿者は、足枷をつけられた状態でロスの連邦地裁に現れた。法廷を取材した在米ジャーナリストはその様子をこう振り返る。

「以前に比べて痩せた印象がありました。ずっと俯いていましたが、あきらめの境地からなのか、表情はスッキリして見えた。普段から覇気がなく、飄々としているんですがそういうところは変わりなかった。裁判官からの問いかけに淡々と『イエス』とだけ繰り返していましたね」

 水原容疑者が罪に問われている銀行詐欺の罪は最大で禁錮30年。現地メディアによれば、司法取引が行われ、「多少は減刑されるのでは」との見方が伝えられている。だが、カリフォルニア州の法曹関係者は「まだ捜査は継続しており、どんな求刑になるかは流動的だ」と指摘する。

「連邦地検が訴追したのは銀行詐欺ですが、それ以外にも“余罪”が指摘されているんです。現状、わかっているだけで電信詐欺、加重個人情報(ID)窃盗、コンピューター詐欺・乱用防止違反の罪などで追起訴される可能性があります。加重ID窃盗は、最低2年、最高5年の禁錮刑。コンピューターや携帯電話に不正にアクセスしたコンピューター詐欺・乱用防止違反は5年以下の懲役に処されます。

 最大の被害者である大谷選手が巨額の窃盗を訴えれば、水原容疑者は3年以下の禁錮刑や罰金が科されます。さらには彼がハマった違法賭博は、国際的な資金洗浄にもかかわってくる可能性もある。捜査関係者はこうした“重大な余罪”にも注視しており、捜査は終結したわけではない」(法曹関係者)

 現在指摘されている以上の罪に問われる可能性が残っているのだ。

「犯罪の巨悪さから実刑はまず免れないでしょう。最悪の場合、一生刑務所から出られないことも覚悟しなければなりません」(前出・法曹関係者)

刑務所内でいじめられる

 刑務所に収監された後、水原容疑者にはどんな生活が待ち受けるのか。アメリカの刑務所事情に詳しいジャーナリストは「地獄のような生活が待っている」と語る。

「おそらくロサンゼルスの刑務所に入ることになると思いますが、そこでは麻薬取引や殺人で捕まった凶悪なギャングたちが幅を利かせています。囚人たちは自由にテレビを見られるので、スーパースター・大谷選手を知らない者はいない。仲間を裏切った水原容疑者の評判は、塀の中でも底辺でしょうね。こっちの刑務所では何よりもお金がものをいいます。一文無しでは、囚人からのいじめの対象になるかもしれません」

 大谷への接触禁止やパスポートの没収など、さまざまな条件がついた水原容疑者の保釈。さらに裁判所からはギャンブル依存症の治療が課されたが、このプログラムはどう進むのか。昭和大学教授で精神科医の岩波明氏によれば、「自助グループでの活動が中心になる」と言う。

「グループミーティングで仲間のつらい経験談に耳を傾け、自らも語ることで、自分がどういう状況にあるのか客観的に見つめ直していくのです。医者や家族のサポートがあっても、患者とは立場や目線が違うので本音で語り合えません。同じ境遇にある他者の存在がない限り、ギャンブル依存症の克服は難しい」

 だが、治療を続けても完治は難しいという。

「たった一杯のビールで元の木阿弥になってしまうアルコール依存症患者と同じです。これくらいなら“遊びのうち”と小さなギャンブルに手を出してしまったことがきっかけで、賭けるときの興奮を思い出してしまう人は多い。治療を始めても半数以上が再びギャンブルに手を出してしまう恐ろしい病なのです」

 水原容疑者の刑務所暮らしがいつまで続くかは定かではないが、ずっと近くで見守り続けた大谷と、もう会うことはないであろう。刑務所内のテレビに大谷が映ったとき、彼はどんな思いに駆られるのだろうか。

(了。前編から読む)

※女性セブン2024年5月2日号