「海外生産の日本車って大丈夫?」なんて心配いまは無用! それでも国内販売で苦戦する理由とは
この記事をまとめると
◾️近年、海外で製造され日本国内で販売される日本車のラインアップが増えている
◾️だがその国内販売台数は順調とは言い難い
◾️海外生産の日本車が抱える問題について言及した
続々と増えている海外製日本車! でもその売れ行きは……
三菱の新型車トライトンは、日本車でありながらタイで生産される輸入車だ。最近はトヨタ・ハイラックス、日産キックス、ホンダ・アコードなど、タイで生産される日本メーカー製の輸入車が増えている。生産を終えた日産マーチもタイ製であった。
また、ホンダ・オデッセイは、一度国内生産を終了したあと、中国製を輸入して国内販売を再開している。スズキのエスクードは国内販売を終えるが、生産国はハンガリーであった。
これらの日本メーカー製輸入車は、売れ行きが好調とはいえない。たとえばキックスは、売れ筋のカテゴリーとされるコンパクトSUVだが、2023年の1カ月平均登録台数は1315台に留まった。トヨタ・ヤリスクロスは1カ月平均で8400台、ホンダ・ヴェゼルも4932台だから、キックスは大幅に少ない。アコードやエスクードも販売は低調だ。
日本メーカーの輸入車が売れ行きを低迷させる背景には、複数の理由がある。まずは、もともと海外向けの商品になることだ。海外向けの海外製品を輸入するのだから、日本のユーザーと親和性が高いとはいえず、好調な販売も期待しにくい。
そしていまは、タイやインドの工場も国内に近い商品力を備えるが、以前は状況が違っていた。タイやインドで販売する商品は、生産精度に不満がなくてもコストを安く抑えていたからだ。この影響で、主に質感において、低コストを実感させた。マーチなどもそのために販売を低迷させていた。前述のとおり、いまはタイやインド製でも不満はないが、コスト低減のイメージは残る。
融通が利きづらい! 海外生産のさらなるデメリットとは
海外の工場で生産することに伴う不利も生じている。国内生産に比べると、受発注をシンプルにおさえる必要があり、バリエーションが限られることだ。輸入車では、パワーユニット、グレード、生産ラインで装着するメーカーオプション、ボディカラーなどの選択肢が国内生産に比べて少ない。
そうなるとユーザーの希望に細かく応じるのも困難になる。また、バリエーションが少ないと、ベーシックなグレードは省かれ、上級グレードのみの設定になりやすい。そのために日本メーカーの輸入車は、選択肢が少ない上に価格は高めだ。先ごろ発売したトライトンの価格は、求めやすいGLSでも498万800円に達する。アコードもフル装備の1グレードのみで、価格は544万9400円だ。
このほか、納期に影響を与えることもある。前述のとおり選択肢が少ないため、基本的には大半の車種が1〜3カ月で納車できるが、販売店では「生産台数の少ないボディカラーを選んだりすると、半年程度を要する場合がある」としている。
トヨタの商用車、タウンエースもインドネシア製の輸入車だ。販売店によると、「生産タイミングとの関係でときどき納期が長引く。とくに商用車は、短期間の納車を求められることが多いから、納期が長いと販売しにくい」という。
以上のように海外製の日本車があまり売れない背景には、さまざまな理由がある。しかし、その一方で、新型車のホンダWR-Vは、インド製ながらも商品力が高く価格は割安だ。これから売れ行きを伸ばして、海外製日本車の流れを変えるかも知れない。