水原一平容疑者【写真:ロイター】

写真拡大

米スポーツ専門メディアがギャンブル問題専門家の声を紹介

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平投手の通訳を長年務めた水原一平容疑者は、銀行詐欺罪で訴追された。大谷の口座から1600万ドル(約24億5000万円)以上を不正送金したとされている。米連邦捜査当局が公開した訴状には、水原容疑者と胴元の生々しいやり取りが掲載されているが、米国の専門家は「珍しいことだと言いたいが嘘になる」とギャンブル依存症特有の症状を指摘している。

 訴状によれば、水原容疑者は2021年9月に賭博を始め、約2年間で総額4067万8436ドル(約62億3320万円)の損失を出した。賭けの回数は1万9000回、1日平均では25回。胴元に何度も限度額の押し上げを求めていた。米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」は「イッペイ・ミズハラのテキストメッセージの中に、問題ギャンブラーは馴染みある強迫観念を見る」と題する記事を掲載。専門家の意見を紹介している。

 水原容疑者の行動について、ラトガース大ギャンブル学センター長のリア・ノウワー氏は「珍しいことだと言いたいが嘘になる。実のところ、どんどん普通のことになりつつある」と指摘する。2018年に連邦最高裁判所がスポーツ賭博を禁止する法律を無効としてから、今では50州のうち38州で合法となっている。手軽に賭けられる状況もあり、賭博業界の収益は毎年記録を更新しているという。

 水原容疑者は現金がなくても“信用賭け”ができる状況だった。イェール大医学部の精神科医マーク・ポテンザ氏は「巨額のお金にアクセスできる人が、お金を借りられ、賭けに勝ってお金を取り戻せると信じてしまうのは想像できる。それが起きなければさらに深い穴にはまっていく。賭けで取り戻せると信じ、ますます手に負えないスパイラルに入っていく」と負の連鎖の流れを説明した。

 問題ギャンブル評議会のキース・ホワイト事務局長はギャンブル依存症の人に対し、制限をかけるツールを使用すること、友人に話すことを勧める。米国では約900万人が問題を抱えているとされているが、評議会の相談サービスを利用した人は32万5000人に留まるという。「電話の先にいるのは匿名の人ですが、それは他の全てを可能にするために一歩です」と1人で抱え込まないことを促した。

(THE ANSWER編集部)