アメリカとイギリスが選挙に関するサイバー攻撃で中国を非難、中国人7人を起訴
中国政府の支援を受けたハッカー集団「Advanced Persistent Threat Group 31(APT31)」による選挙や政治活動へのサイバー攻撃に関与したとして、アメリカとイギリスが複数の中国人を起訴もしくは制裁の対象者にしたと発表しました。
Office of Public Affairs | Seven Hackers Associated with Chinese Government Charged with Computer Intrusions Targeting Perceived Critics of China and U.S. Businesses and Politicians | United States Department of Justice
UK holds China state-affiliated organisations and individuals responsible for malicious cyber activity - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/uk-holds-china-state-affiliated-organisations-and-individuals-responsible-for-malicious-cyber-activity
Embassy Spokesperson on the UK’s hype-up of so-called cyber attacks by China
http://gb.china-embassy.gov.cn/eng/PressandMedia/Spokepersons/202403/t20240325_11270580.htm
Britain blames China for hack that accessed data of millions of voters
https://www.cnbc.com/2024/03/25/britain-blames-china-for-hack-that-accessed-data-of-millions-of-voters.html
イギリスのオリバー・ダウデン副首相は2024年3月25日の議会演説で、「中国の国家関連組織が、我が国の民主的機関と国会議員を標的にした2件の悪質なサイバーキャンペーンに関与していたことを確認しました」と述べました。
イギリス政府の発表によると、1件目のサイバー攻撃は、中国の組織が2021〜2022年にかけてイギリスの選挙管理委員会のシステムに対して行ったものだとのこと。
選挙管理委員会は2023年8月に、「ハッカーが2014年から2022年の間にイギリスで有権者登録をした人の名前と住所にアクセスした」と発表していました。
2件目のサイバー攻撃として、中国政府系のサイバー犯罪組織・APT31が2021年に、イギリスの国会議員に対するスパイ活動を行っていたことが、イギリスの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)によって確認されています。
中国政府が標的とした政治家の大半は、中国の悪質な活動について訴えていた著名人でした。ただし、当局は「国会議員のアカウントへの不正侵入はすべて失敗した」としています。
この件を受けて、イギリス外務・英連邦・開発省は中国のフロント企業1社と中国人2人を制裁したと発表しました。個人名は明かされていませんが、いずれもAPT31の構成員だとのこと。
イギリスのデビッド・キャメロン外相は、「中国政府に関連する組織や個人が、私たちの民主的な制度や政治プロセスを標的にしたことは、まったく容認できません。イギリスの民主主義を妨害しようとするこうした試みは成功しませんでしたが、私たちは引き続き脅威を警戒し、弾力的に対処していきます」と述べた上で、中国の王毅外相に直接抗議したことを明かしました。
イギリスの発表と同日に、アメリカ司法省はおよそ14年間にわたってアメリカを含む中国国外の批判者を標的にしてきたとして、7人の中国人を起訴したと発表しました。
今回コンピューター侵入の共謀および電信詐欺の共謀の罪で起訴されたのは、倪高彬(ニー・ガオビン)38歳、翁明(ウェン・ミン)37歳、程锋(チェン・フェン)34歳、彭耀文(ペン・ヤオウェン)38歳、孙小辉(スン・シャオフイ)38歳、熊旺(ション・ワン)35歳、赵光宗(チャオ・グアンゾン)38歳で、全員が中国在住とみられています。
メリック・B・ガーランド司法長官は声明で、「私たちは、国民に奉仕するアメリカ人を脅迫したり、アメリカの法律で保護されている反体制派を黙らせたり、アメリカ企業から盗みを働いたりする中国政府の取り組みを容認しません。この事件は、アメリカと同盟国の国家安全保障を脅かすことを目的とした悪意のあるサイバー作戦の開始を含め、中国政府が自国の批判者を標的にし、威嚇するためなら手段を選ばないことを思い起こさせるものです」と述べました。
こうした非難に対し、在イギリス中国大使館は「中国がイギリスに対して、いわゆるサイバー攻撃を行ったというのは完全なでっち上げであり、悪意のある中傷です。私たちはイギリスの関係者に対し、虚偽の情報の拡散をやめ、自作自演の反中政治的茶番劇をやめるよう求めます」との声明を発表しました。
イギリス政府は2020年に、Huaweiの5Gネットワーク機器の使用を禁止したほか、アメリカでは事実上のTikTok禁止法とされる法律の制定が急ピッチで進んでいるなど、両国とも特にIT技術の分野で中国に対して積極的な姿勢をとり続けており、今回の発表が中国の反発を招くのは必至だとメディアは報じています。