スマートフォン市場、規制後の市場動向と売れ筋上位シリーズのユーザー属性の違い
2023年のスマートフォン市場は、2月に公正取引委員会の廉価販売に関する緊急実態調査が発表され、スマートフォンの販売方法にメスが入ったことから始まった。12月には総務省による電気通信事業法施行規則の改正で、廉価販売に対する規制が強化された一年だった。その後の市場動向を家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」で探っていく。また、マクロミルのアンケートを用い、スマートフォンの購入重視点と売れ筋上位シリーズにおけるユーザー属性の違いを明らかにする。
○過去3年におけるスマートフォン市場動向の比較
スマートフォン市場は3月と9月に需要が高まる。そこで、22年1月第1週(1/3-1/9)の販売台数を「100.0」とした指数を算出し、スマートフォン市場を振り返る。まず、新生活前の3月の需要増について。毎年2月4週から動きはじめ、3月の4週まで多少の上下動を繰り返しつつ、高い水準を維持する。22年は3月3週(22/3/21-3/27)に143.4を記録、22年で最も高い値となった。翌23年3月3週(23/3/20-3/26)は119.6と前年の水準に及ばず、年初の124.5にも届かない状況。しかし、2月4週(23/2/20-2/26)から四週に亘り需要は高い水準を保っていた。
次に9月の動きをみると、22年、23年とも9月2週(22/9/12-9/18、23/9/11-17)から動き出し、翌週にピークを迎える。これはiPhoneの新モデル販売と連動している。22年は9/16にiPhone 14シリーズが発売、翌週に指数は117.1に達した。iPhone 15シリーズは23/9/22発売で、当週に114.1と需要のピークを迎えた。
また、23年は12月3週(12/18-12/24)にも需要の山が存在している。これは、総務省が廉価販売に対する規制強化のため、電気通信事業法施行規則を一部改正したことに起因する。11月に入るとテレビやネット上で改正に関する報道が始まると、前年とは異なる動きを見せ始めた。12月3週(23/12/18-12/24)に143.9と22年1月以降最も高い指数を記録。翌週には反動で80.2まで落ち込んだ。24年に入ってからは年初こそ大きく前年を下回ったものの、若干下回る程度で推移。これは、キャリアが規制をかいくぐる価格設定で、需要を下支えしているという証左と言える。ちなみに24年も新生活需要の立ち上がりは過去2年と同様、急速に立ち上がっていることが明らかだ。
○スマートフォンの購入重視点
高単価のスマートフォンを購入してもらうため、キャリアは廉価販売を行ってきた。ハイエンドはより高単価に、エントリーモデルは安値安定といった感じに、最近の端末価格は二極化している。マクロミルが実施したアンケートからスマートフォンユーザーの購入重視点を探った。最も高い比率となったのは「使いやすさ」の48.7%、「手頃な価格・お得感」が45.9%と続く。特にこの二項目の比率が突出していることが明らかだ。後者は、前段の廉価販売の規制強化による端末価格の上昇とは相反する項目となるため、安価で購入できなくなると需要低迷に直結すると言ってよいだろう。重視点に話を戻すと、他に1割を超えた項目は「安心・安全」(22.6%)、「慣れ親しみ」(17.5%)、「製造・販売元の信頼性」(14.7%)がある。「使いやすさ」や「慣れ親しみ」が上位に来ていることから、今まで使っていたメーカーやOSの端末を再び選ぶ可能性が高い結果があらわれている。
○シリーズ別のシェア動向
次は、スマートフォン市場におけるシリーズ別の販売台数シェアについて。今回、iPhoneはモデルごと(無印、Pro、Pro Max、Plus、mini)に分けて集計している。「iPhone 13(無印)」は23年1月から9月まで首位を維持、特に3月には32.4%に達した。23年9月に「iPhone 15」シリーズが発売となったが、首位は「iPhone 13(無印)」の後継にあたる「iPhone 14(無印)」へと世代交替したに過ぎない。これは前述した廉価販売により、「iPhone 14(無印)」需要が集中した結果。規制前の駆け込み需要により、同製品のシェアは33.5%まで跳ね上がった。その後、24年に入ると「iPhone 15(無印)」のシェアは11.5%に達しており、規制後に「iPhone14(無印)」から現行モデルへと流れたとみて良さそうだ。
Android勢では、「Google Pixelシリーズ」が頭抜けた恰好。他にシャープの「AQUOSシリーズ」、SAMSUNGの「Galaxyシリーズ」、ソニーの「Xperiaシリーズ」、OPPOシリーズが上位にランクインしている。上位の動向を見る限り、廉価販売の規制以降、シェアが大幅に増加したのは「iPhone 15(無印)」のみであることも明らかとなった。
○上位シリーズのユーザー属性の違い
では、上位のiPhone 14/13(共に無印)、Google Pixelシリーズ、AQUOSシリーズを利用しているのは、どのようなユーザー属性なのだろうか。再びマクロミルが実施したアンケートを基に、それぞれのシリーズにおける性別と年代の違いをみていく。まず、性別を比較すると、iPhone 14/13、AQUOSシリーズでは、ほぼ半々の比率となった。しかし、Google Pixelシリーズでは73.9%と突出して男性ユーザーの比率が高いことが特徴的。年代において、iPhoneは共に20代女性の比率が高い。一方、Google Pixelでは50代男性が20.0%と偏っている。AQUOSシリーズでは男女共に50代以上において2ケタだった。大まかに言うと、iPhoneは若年層、Androidは高齢層が利用しているという結果になった。(BCN総研・森英二)
*マクロミルが実施したアンケートの調査概要
調査名 :スマートフォンに関する調査
調査機関 :マクロミル
調査方法 :インターネットリサーチ
調査対象者 :全国15〜79歳男女
回答者数 :2,856人
割付方法 :エリア性年代均等割付後、人口推計に合わせて構成比を補正
調査実施期間 :2023年4月〜2023年6月
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
○過去3年におけるスマートフォン市場動向の比較
次に9月の動きをみると、22年、23年とも9月2週(22/9/12-9/18、23/9/11-17)から動き出し、翌週にピークを迎える。これはiPhoneの新モデル販売と連動している。22年は9/16にiPhone 14シリーズが発売、翌週に指数は117.1に達した。iPhone 15シリーズは23/9/22発売で、当週に114.1と需要のピークを迎えた。
また、23年は12月3週(12/18-12/24)にも需要の山が存在している。これは、総務省が廉価販売に対する規制強化のため、電気通信事業法施行規則を一部改正したことに起因する。11月に入るとテレビやネット上で改正に関する報道が始まると、前年とは異なる動きを見せ始めた。12月3週(23/12/18-12/24)に143.9と22年1月以降最も高い指数を記録。翌週には反動で80.2まで落ち込んだ。24年に入ってからは年初こそ大きく前年を下回ったものの、若干下回る程度で推移。これは、キャリアが規制をかいくぐる価格設定で、需要を下支えしているという証左と言える。ちなみに24年も新生活需要の立ち上がりは過去2年と同様、急速に立ち上がっていることが明らかだ。
○スマートフォンの購入重視点
高単価のスマートフォンを購入してもらうため、キャリアは廉価販売を行ってきた。ハイエンドはより高単価に、エントリーモデルは安値安定といった感じに、最近の端末価格は二極化している。マクロミルが実施したアンケートからスマートフォンユーザーの購入重視点を探った。最も高い比率となったのは「使いやすさ」の48.7%、「手頃な価格・お得感」が45.9%と続く。特にこの二項目の比率が突出していることが明らかだ。後者は、前段の廉価販売の規制強化による端末価格の上昇とは相反する項目となるため、安価で購入できなくなると需要低迷に直結すると言ってよいだろう。重視点に話を戻すと、他に1割を超えた項目は「安心・安全」(22.6%)、「慣れ親しみ」(17.5%)、「製造・販売元の信頼性」(14.7%)がある。「使いやすさ」や「慣れ親しみ」が上位に来ていることから、今まで使っていたメーカーやOSの端末を再び選ぶ可能性が高い結果があらわれている。
○シリーズ別のシェア動向
次は、スマートフォン市場におけるシリーズ別の販売台数シェアについて。今回、iPhoneはモデルごと(無印、Pro、Pro Max、Plus、mini)に分けて集計している。「iPhone 13(無印)」は23年1月から9月まで首位を維持、特に3月には32.4%に達した。23年9月に「iPhone 15」シリーズが発売となったが、首位は「iPhone 13(無印)」の後継にあたる「iPhone 14(無印)」へと世代交替したに過ぎない。これは前述した廉価販売により、「iPhone 14(無印)」需要が集中した結果。規制前の駆け込み需要により、同製品のシェアは33.5%まで跳ね上がった。その後、24年に入ると「iPhone 15(無印)」のシェアは11.5%に達しており、規制後に「iPhone14(無印)」から現行モデルへと流れたとみて良さそうだ。
Android勢では、「Google Pixelシリーズ」が頭抜けた恰好。他にシャープの「AQUOSシリーズ」、SAMSUNGの「Galaxyシリーズ」、ソニーの「Xperiaシリーズ」、OPPOシリーズが上位にランクインしている。上位の動向を見る限り、廉価販売の規制以降、シェアが大幅に増加したのは「iPhone 15(無印)」のみであることも明らかとなった。
○上位シリーズのユーザー属性の違い
では、上位のiPhone 14/13(共に無印)、Google Pixelシリーズ、AQUOSシリーズを利用しているのは、どのようなユーザー属性なのだろうか。再びマクロミルが実施したアンケートを基に、それぞれのシリーズにおける性別と年代の違いをみていく。まず、性別を比較すると、iPhone 14/13、AQUOSシリーズでは、ほぼ半々の比率となった。しかし、Google Pixelシリーズでは73.9%と突出して男性ユーザーの比率が高いことが特徴的。年代において、iPhoneは共に20代女性の比率が高い。一方、Google Pixelでは50代男性が20.0%と偏っている。AQUOSシリーズでは男女共に50代以上において2ケタだった。大まかに言うと、iPhoneは若年層、Androidは高齢層が利用しているという結果になった。(BCN総研・森英二)
*マクロミルが実施したアンケートの調査概要
調査名 :スマートフォンに関する調査
調査機関 :マクロミル
調査方法 :インターネットリサーチ
調査対象者 :全国15〜79歳男女
回答者数 :2,856人
割付方法 :エリア性年代均等割付後、人口推計に合わせて構成比を補正
調査実施期間 :2023年4月〜2023年6月
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。