シティ戦で圧巻のプレーを見せた遠藤航【写真:ロイター】

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自身の公式インスタグラムで公開

 イングランド1部リバプールの日本代表MF遠藤航は現地時間3月10日のプレミアリーグ第28節マンチェスター・シティ戦(1-1)で大車輪の活躍を見せ、国内外から大きな注目を浴びた。

 この一戦を現地で観戦したテレビ朝日の寺川俊平アナウンサーが自身の公式インスタグラムを更新。2022年のワールドカップ(W杯)で話題となった寺川アナウンサーが思いの丈を綴った。

「Endo」の名に世界中が酔いしれたシティ戦。前半23分、シティのデザインされたコーナーキックからDFジョン・ストーンズが先制点を挙げた。それでもリバプールは後半5分、FWダルウィン・ヌニェスがペナルティーエリア内で倒されて獲得したPKをMFアレクシス・マック・アリスターが決めて同点とした。“世界最高峰”と言える白熱した試合は1-1のまま終了。フル出場した遠藤には英国内にとどまらず、国外からも高い評価が与えられた。

 この一戦に足を運んだのが2022年のカタールW杯で実況を務め、MF本田圭佑との掛け合いでも話題になった寺川アナウンサー。1月、2月に行われたアジアカップでカタールに滞在し、準々決勝イラン戦の実況を担当した。大会を通じて追ってきた日本が敗戦した姿を心に焼き付け、チームについて考え、たどり着いたのが1つの結論だったという。

「1ヶ月前。アジアカップ準々決勝の放送を終え、サッカー中継班の中でただ1人ドーハに残った。世界水泳のキャビンの中で短絡的な代表批判に埋め尽くされるSNSやYouTubeのアルゴリズムに心が苦しくなった。僕は今の日本代表に産みの苦しみみたいなものを感じている。ボトムアップとかトップダウンとか批判がないと文化が育たないとかそういう形骸化されたものに当てはめて見るべきものではない、と思っている。過去を超えるために、新しいことに全員でチャレンジしている最中。誰にこれを甘いと言えるだけの根拠や論拠があるというのか。

 無条件に応援されるべきとももちろん思ってない。でも、『俺たちの代表』を非難して否定して統計学に落とし込んだわけでもない『みんな言ってる』に嫌な思いにされるのはもう懲り懲りだと思っている。だから、自分の足で訪れて、自分の耳で聴いて、自分の目で見たくなった。そのままの勢いでドーハのキャビンから冬休みを申請し航空機のチケットを買った」

 上司や先輩に頼んで仕事の都合をつけ、リバプールへ。「それくらい、どうしても行きたかった。世界最高峰の舞台で走り回り、大歓声に包まれる日本のキャプテンがなんとしてでも見たかった」と、冬休み取得の決断に至った理由を明かしている。

 実際、そこまでして足を運んだアンフィールドは想像以上、思い描いたイメージなど遥かに超えた光景が広がっていた。

「試合が始まる前に既に高まりきって、『来て良かった』と連呼する36歳、3月のアンフィールド。霧雨ととも吹いていた冷たい風はスタンドが埋まるにつれてもう感じなくなった。ダウンを脱いで、買ったばかりの赤の3番をトレーナーの上から着る。You’ll never walk aloneは誇り高く円陣が歌の終わりに合わせて解けていく。その場所からほとんど動かず試合に入っていく日本代表のキャプテン」

 円陣の中心に位置したままポジションを取る遠藤の姿を見て「泣いた。試合前なのにとすぐに隠したけど。昂っていた」と率直な気持ちを明かし、「正直、轟音のような歓声にビリビリと心が震えマンCが先制するくらいまで記憶があんまりない」と、見たままの興奮が伝わる文を綴っている。

 遠藤とは以前から交流があったが、その「いつも通り」な姿にまた心が打たれたという。誰がなんと言おうと世界が注目した“最高の舞台”で結果を残した遠藤の凄みを「いつだっていつも通りどんなピッチにも馴染んで立ってしまうその再現性な気がしている。同点に追いついた時も、歓喜の輪には入らずスッと次への準備に入る。いつもよりいつも通り。思わず笑ってしまった」と感じている。

 どんな試合も「来て良かった」とはならないかもしれない。だが、必ず心を動かす瞬間がある。寺川アナウンサーは日本代表キャプテンがスタジアムを、イングランドを、世界をそうさせた瞬間に立ち会えたのだろう。だからこそ心の底から「本当に見に行って良かった」と思ったはずだ。(FOOTBALL ZONE編集部)