過去問を「つぶす」ことが試験で結果を出す秘訣(写真:Graphs/PIXTA)

試験で結果を出せるかどうかに「がんばり」や「かけた時間」は関係ない。CFP6科目、行政書士、公認会計士試験、システム監査技術者と、自らが数々の難関試験に短期合格してきた宇都出雅巳氏はこう語ります。試験本番の問題を「あたりまえ」に解くために、過去問とどのように向き合うべきか説明します。

※本稿は宇都出雅巳氏の新著『どんな人でも1番結果が出る勉強法 合格は「あたりまえ化」の法則』から一部抜粋・再構成したものです。

時間・がんばりは結果と関係がない

司法試験に合格するには8000時間、公認会計士なら4000時間、税理士なら3000時間の勉強が必要です……。このように、資格試験であれば、合格にどれくらいの勉強時間が必要なのかを予備校などが出してくれています。これらはたしかに目安になります。

でも、それ以上でも以下でもありません。同じ1時間でも人によってその質は違うからです。

また、試験勉強を始めるときに、どれだけの知識・経験を持っているかや、論理的思考や文章を読む力などによっても変わります。ただ、わかりやすく計りやすいので、つい時間に目が向きがちです。

さらには、「がんばり」という試験への努力具合に注目しがちです。これも「これだけがんばったんだから」という、試験本番での自信につながるプラス効果があることは事実でしょう。でも、試験合格に直結しません。自分自身が感じることですから、ついこれにも注意が向きがちです。

実際、私が受験生の方からよく聞く言葉がこちらです。

「あれだけがんばったのに……(合格できなかった)」

勉強時間やがんばりは試験合格に直結しません。

何度もいいますが、あなたが注目すべきは「結果」です。「成果」でも「経過」でもないのです。では、試験勉強においてあなたが試験当日までにめざす「結果」とは何でしょうか?

過去問を「つぶす」

試験直前、「過去問」で合格点を超えられますか? それは過去問を「つぶす」ことです。試験直前、過去問をやって合格点を超えなかったら、合格できると思いますか?

もちろん、試験問題は毎回変わり、問題との相性もあります。当日のあなたのコンディションも大きく影響するでしょう。

でもまず、試験本番までにあなたが最低限めざすのは、「過去問」を解けるようになることです。さらには過去問を「つぶす」ことです。

単に「解ける」ではありません。「つぶす」のです。

では、「つぶす」とは具体的には何でしょうか?

詳しくは後ほど解説しますが、過去問で問われたほとんどの内容について、「こんなこと聞くなよ!」「これは常識、あたりまえでしょ」という状態になることです。

私はこれを「あたりまえ化」と呼んでいます。「あたりまえ化」したところは、「勉強する必要がない」「目を通す必要がない」ので、その部分に×印をつけたり、ホッチキス留めして、まだ「あたりまえ化」していないところに集中して勉強します。

そして、過去問をすべて「あたりまえ化」する、つぶすのです。「あれだけの過去問をすべてつぶしたから……」少なくとも、こういえるようになりましょう。

試験本番は時間・プレッシャーとの戦い

「まだ、1問も解けていない……」

公認会計士・短答式試験の2科目目の「管理会計論」。1時間の試験時間のうち30分過ぎたときの、私です。

ふつうは、理論問題は最初の15分で終わり、残り45分を使って計算問題8問中、少なくとも4問は解かないと合格ラインには届きません。しかし、問題の読み間違いから、30分経っても計算問題を1問も解けていなかったのです。

「もうダメだ」とあきらめかけましたが、なんとか踏みとどまり、次の2問はサクサクと解答できました。

3問目の途中でタイムオーバーとなったものの、たまたまのラッキーもあって、合格することができました。でも、冷や汗どころか大汗ものでした。

こんなふうに、試験本番は、時間とプレッシャーとの戦いになります。普段の勉強ではラクラク解けていた問題も、焦りから思わぬミスをしたり、わからなくなってしまうこともよくあります。

そうならないためには、単に「解ける」ようになるだけでは不十分なのです。

試験当日までにめざすのは、「こんなこと聞くなよ!」「これは常識、あたりまえでしょ」という状態です。

同じ問題を「解ける」にしても、何かの知識を「わかった」「覚えた」にしても、そのレベルにはかなりの幅があります。ウンウンと考えて、「たしかこれは……」となってから、「おそらくこれだ」と思い出して「解ける」のもあります。

しかし、この状態では、試験本番の時間の制約、プレッシャーのなかでは、得点に結びつかない危険性があるのです。

「あたりまえ化」はスピードが命

単に「解ける」「わかる」「覚えている」で判断してはいけません。どれぐらいそれが深く身についているのかを、常に意識しながら、「あたりまえ化」をめざすのです。そのためのバロメータになるのが「スピード」です。

どれくらいすばやく思い出せるか? どれくらいスラスラと語れるか? そのスピードが記憶力の強さ、理解の深さを表します。

常に、スピードを意識しつつ、「あたりまえ化」をめざすのです。私の会計士合格も、プレッシャーのなかでサクサク解けた2問が効いたのです。

「とりあえず過去問・いきなり過去問」

繰り返しいわれても、「まずは計画でしょ」と思っている方はいませんか? 多くの勉強本では最初に「勉強計画の立て方」が書かれています。しかし、ほとんどの「計画」なるものは、「経過(プロセス)」の話です。

繰り返しになりますが、大事なのは、何よりあなたがめざす「結果」です。そこが明確でないのに、1日何時間勉強するだの、どの問題集をいつまでにやるだのと考えたところで、まさに「机上の空論」です。

もちろん、数年におよぶ長丁場となる超難関試験では、中間目標などの「計画」は必須です。それでも、「結果」が明確でないと、「計画」は立てられません。

過去問を読んで、まずはめざす「結果」を明らかにしましょう。その後に、「結果」と自分の「現状」とのギャップを埋めていくのです。「結果」を出すためには、とにかく「過去問」を読むこと、解くことです。合格に結びつく、過去問を繰り返し読みまくり、解きまくりましょう。

「試験」は現場で起きている

「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」

少し古いですが、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998年)で主演の織田裕二さんが上司に叫んだ名ゼリフです。試験勉強での「現場」といえば、もう「過去問」しかありません。そこから離れて、「計画」を考えたところで何の意味もありません。

また、ビジネスの現場でも、「計画」の位置づけが見直されています。

業務改善の定番フレームワークの「PDCA」。これは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(測定・評価)・Action(対策・改善)を回していくというものです。変化の激しい現代では、計画を立てたそばから状況が変わり、後手に回ってしまうようになりました。

代わっていわれ始めたのが、「DCPA」です。D(実行)が最初にきて、P(計画)が3番目になっています。試行回数を増やしてトライアンドエラーを重ねながら成功確率を高めていこうとするものです。

まずは「Do」(実行)から始めること。これが試験合格には必要です。とりあえず「計画」なんて、のん気なことをしている場合ではないのです。そして、「Check」(評価)で現状と向き合う。この「D」と「C」を繰り返すのです。

試験当日にピークを持っていく

試験勉強をしていると、思うように進まずに落ち込んだり、逆にスラスラと解けて安心したりすることもあるでしょう。


ただ、大事なのは試験当日の状態です。今、理解・記憶できていなくても大丈夫です。試験当日に理解・記憶できていて、問題を解ければいいのです。逆に、今、覚えているからといって、安心してはいけません。人は忘れる生き物です。多かれ少なかれ、何もしなければ記憶は薄れます。

スポーツ選手が大事な大会当日に状態をピークに持っていくように、とにかく試験当日を意識することです。一喜一憂せず、勉強しましょう。そして、試験の各科目と各分野の理解・記憶の進捗を揃えつつ、全範囲で試験当日にピークを持っていくのです。

(宇都出 雅巳 : トレスペクト教育研究所代表・学習コンサルタント)