かつて人気の「ステーションワゴン」なぜ不人気に? 一時は「大ブーム」も今では“絶滅危惧種”に… 今後「人気再燃」の可能性はあるのか

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かつて人気だった「ステーションワゴン」 なぜ“絶滅危惧種”に?

 現在、多くのメーカーでSUVが主流になりつつある昨今、「ステーションワゴン」の存在感はすっかり薄れてしまっています。
 
 なぜステーションワゴンは廃れてしまったのでしょうか。また今後、ステーションワゴン人気が再燃することはあるのでしょうか。

国内販売を終了する「MAZDA6ワゴン」

 もう30年も前の話となりますが、日本でステーションワゴンのブームが起きたことがありました。きっかけとなったのは1989年のスバル「レガシィツーリングワゴン」の登場。

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 それ以前の日本にもステーションワゴンが存在しなかったわけではありませんが、「バンの派生モデル」といったイメージが強く、一般的ではなかったのです。

 しかし、バン(商用モデル)をラインナップしなかった初代レガシィツーリングワゴンのデビューは、世間のツーリングワゴンに対するイメージを刷新。

 水平対向ターボエンジンに4WDを組み合わせた「ツーリングワゴンGT」が、“高性能ワゴン”という新たな路線を切り開きました。

 当時ブームだったスキーを楽しむ人々を中心に広まって「人生を楽しむ人のクルマ」という市場を開拓できたことも、ヒットの理由と言えます。

 そんな初代レガシィツーリングワゴンのブレイクをきっかけに、各社が続々ステーションワゴン市場へ本格参入。

 今では信じられませんが、トヨタ「カルディナ」や日産「ステージア」など、セダン派生ではなくステーションワゴン専用車種が多く登場したことも、当時のステーションワゴン市場がどれだけ盛り上がっていたかを端的に表すトピックと言えます。

 絶頂期は、ステーションワゴンのシェアが乗用車(登録車)全体の3割近くまで迫ったのだから驚くしかありません。

 しかし、今はどうでしょう。

 新車で買える国産ステーションワゴンはトヨタ「カローラ ツーリング」と「カローラ フィールダー」、マツダ「MAZDA6」(2024年4月中旬に生産終了予定)、そしてスバル「レヴォーグ」程度。

 あとは、メーカーは「SUV」としているスバル「レガシィ アウトバック」「レヴォーグ レイバック」も分類方法によってはステーションワゴンの仲間といってもいいかもしれません。

 そんなレガシィ アウトバックなどを含めて数えても、わずか6モデルしかないのですから、国産ステーションワゴンはもはや“絶滅”を危惧しなければならないほどのジャンルと言って差し支えないでしょう。

 なぜ、ステーションワゴンはここまで凋落したのでしょうか。

 それはステーションワゴンならではのメリットを考えるとヒントになるかもしれません。

ステーションワゴンのメリットとは? 今後の復活はありえるのか

 ステーションワゴンのメリットとは、荷物をたくさん積めるパッケージングながら、セダン感覚の走りや乗り心地を実現していることにほかなりません。

 ステーションワゴンが大ブレイクした当時でも、荷物をたくさん積めるタイプのクルマは存在しました。「ミニバン」や「ワンボックス」、そしてSUVの先輩である「ヨンク」です。

 しかし当時のそれらは、重心が高いこともあってセダンに匹敵する走行性能や乗り心地は実現できていませんでした。

 また長時間の運転や移動はセダンに比べて、疲労度が大きく違ったのも事実です。積載性の高さと走り&快適性を両立するカテゴリーは、唯一ステーションワゴンだけだったのです。

トヨタ「カローラ ツーリング」

 しかし、昨今は事情が違います。

 技術の進歩もあって、ホンダ「オデッセイ」やマツダ「プレマシー」のように(3列目を畳んで)、広い荷室とセダンに近い走りと快適性を両立するミニバンが現れました。

 さらに、もっと重心の高いSUVでも、技術の進化とクルマ作りのノウハウの向上によりセダンに匹敵する水準の走りと快適性を両立できるようになったのです。

 長時間運転し続けても、セダンに対して明確に疲れるようなことはありません。

 いうまでもありませんが、ある程度車体の大きなSUVはステーションワゴンと同様の広いラゲッジスペースを確保しています。そうなるとますます「ステーションワゴンでなければならない理由」が薄まってくるのです。

 SUVとステーションワゴンの違いは車高の高さといえますが、昨今は一般的な消費者からすればあえて「低いタイプ」を選ぶ理由が見当たらなくなったといってもいいでしょう。

 逆に、乗り降りのしやすさや見晴らしの良さ、そして高い最低地上高より段差を気にしなくていいことなど、ステーションワゴンにはないSUVのメリットも多く存在。そこに魅力が感じる人が増えてきたのです。

 それが、ステーションワゴンではなくSUVがここまで支持されるようになった理由と考えられます。

 現在、新車販売におけるボディタイプ別シェアでみるとSUVは「もっとも支持されているボディ形状」となりました。

 SUVとステーションワゴンを分けるポイントは、実質的に背の高さとタイヤの大きさ程度になったといえます。

 すなわち考え方を変えると、今のSUVブームは「形を変えたステーションワゴンブームの復活」といってもいいのではないでしょうか。

 いっぽうで、従来のような背が低くコンベンショナルなステーションワゴンの復権はあるのか。

 筆者(工藤貴宏)は「ない」と考えます。

 一般ユーザーの視点でいえば、ステーションワゴンのメリットは「背の高いクルマに対応していない機械式立体駐車場を利用できる」程度しかありません。

 もちろん、それを求める人や、走行感覚を突き詰めてステーションワゴンを選ぶ人もいるでしょう。

 実際にはそんな人は多くなく、大多数の人はいちどSUVの便利さを知ってしまうと、再びステーションワゴンに戻ることは考えにくいのではないでしょうか。

 その反面、メルセデス・ベンツ、BMW、そしてアウディといったドイツメーカーをはじめ、欧州にはステーションワゴンを複数車種用意するブランドも少なくありません。

 しかし、それらのブランドにおいてもかつてに比べると“SUV化”が進んでいるのが現実。

「輸入車のステーションワゴンは日本で多く見かける」と感じている人もいるかもしれませんが、それは国産車でワゴンを選べなくなった人や(SUVを選択せず)こだわりを貫く人が愛用しているケースが多いためで、新車市場における絶対数としてはそう多くはないのです。