「セクシー田中さん」ドラマ公式Xより

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 日本テレビは2月15日、昨年放送された「セクシー田中さん」の制作過程などを検証する社内特別調査チームを設置すると発表。外部有識者などの協力も得て「ドラマ制作部門から独立した態勢」で「真摯に検証」すると表明したが、早くも不安視する声が広がっている。

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 原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなった経緯について、より詳細な情報公開に期待がかかる一方で、「日テレから独立した第三者委員会でない点から、全容解明にどこまで迫れるのか」(民放キー局関係者)と実効性を疑問視する声が同業者からも上がっている。

 今回の問題について「原作漫画を実写ドラマ化することの難しさ」を背景に挙げる民放関係者も少なくないが、「そう単純な話ではない」と語るのは、これまで沈黙を守ってきたアニメ業界関係者である。

セクシー田中さん」ドラマ公式Xより

「アニメ化に際しても過去、漫画原作者とトラブルになった事例はあり、古くは手塚治虫先生の『海のトリトン』が有名です。本来のタイトルは『青いトリトン』で、原作とアニメでは話の内容もかなり変わっていた。手塚先生も“(アニメ版は)自分の作品ではないと思っている”と生前、漏らしていたと聞きます。また業界内では『SLAM DUNK』原作者の井上雄彦氏もテレビアニメに関して、そのクオリティーに決して満足していなかったと伝えられます。他にも、有名なところでは高橋留美子氏の原作漫画を映画化した『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』が挙げられます」

異例だった「はじめの一歩」事件

「ビューティフルドリーマー」は1984年に公開され、監督を務めたのは「攻殻機動隊」などの作品で知られる押井守氏だ。

「高橋さんも映画公開後、『(ビューティフルドリーマーは)押井さんの“うる星やつら”です』と、やんわりと自分の作品ではないと語っています。オリジナルストーリーはまだしも、登場人物のキャラクターにまで“手を加える”かのような押井氏のやり方に高橋さんは我慢がならなかったそうですが、この一件については“作家性の対立”として理解されている部分もある」(同)

 最近では、人気漫画『はじめの一歩』の原作者・森川ジョージ氏が自身のXで明かしたエピソードが話題になっている。森川氏はテレビ放送を見てアニメのクオリティーの低さに失望し、2話目が放送された段階で「今すぐやめてくれ。やめないなら僕が連載をやめる」と制作会社に通告。慌てた制作サイドが「必ずクオリティーを上げる」と約束し、実際、その後は森川氏も納得のいく仕上がりに変わったという。

「ただし『はじめの一歩』のケースは例外中の例外。アニメの場合、企画のスタートから実際に放送されるまで通常2年程度の時間をかけて制作します。その間に原作者の意向なども確認でき、なかには企画会議に出席する原作者も珍しくない。逆にいえば、一度、放送が始まったアニメを途中から変えるのは至難の業で、森川さんはソレをやってのけた前代未聞のケースです」(同)

原作改変の責任は誰に?

 制作期間だけでなく、もう一つ、実写ドラマとアニメで違う点として「絵コンテ」の存在が挙げられるという。絵コンテとは、登場人物のセリフや動きなど動画のイメージをイラストで表した「アニメの設計図」に当たる。

「アニメ化する際、脚本ができた後に絵コンテ作成の作業を挟みますが、絵コンテによって脚本が大きく変わることもしばしば。つまりアニメの場合、脚本家などより、演出や監督の関与が大きいのが特徴です。だから今回、アニメ畑の人間から見ると、作品により責任を負うはずの演出や監督の存在がスルーされていることが不思議でなりません」

セクシー田中さん」問題では、脚本家のSNSが「騒動を拡大させた」と指摘される事情などがあったが、それでも原作改変の責任までも脚本家に向けられている点が奇異に映るという。

「実は今回の問題が起きる前から、アニメ化に際しては“原作に忠実に”という傾向が業界内では強まっていた。理由は、一番の視聴者でもある原作ファンの気持ちを無視したり、裏切ると“アニメ化は成功しない”との考えが主流になってきているためです。一方で難しいのはアニメはビジュアル面でも原作に寄せやすい特色がありますが、実写ドラマはキャスティングこそが重要になってくる点。そのためテレビのドラマ制作部門がアニメ業界と同じ歩調を取るのはそう簡単ではないと囁かれています」(同)

“芦原さんはなぜ亡くなったのか”――。この重い問いかけに、誰が答えられるのか。

デイリー新潮編集部