バイエルン:負けられない2試合で連敗、フリック監督復帰も?
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「この敗北には苛立ちを覚えるよ。ラツィオが試合に勝ったかどうかはどうでも良い。我々がこの試合に負けたのだ。一体なぜ、後半から緊張の糸が切れてしまったのか、私には皆目見当もつかない。この劣勢は自らの手で招いたものだ。このレベルでの戦いでは、試合の半分でうまくやった所で、何にもならないよ」これはバイエルン・ミュンヘンのトーマス・トゥヘル監督が、水曜夜に行われたチャンピオンズリーグ16強初戦、ラツィオ・ローマとのアウェイ戦で0−1と敗戦を喫した直後に漏らした言葉だ。
その結果バイエルンは、2019年以来となるチャンピオンズリーグ16強での敗退の危機に瀕している。
実際にバイエルンが試合の前半でみせたパフォーマンスは良かった。ケイン、サネ、ムシアラがビッグチャンスをつかむなど、「ラツィオとのアウェイ戦であそこまで絶好機を手にしたのだから、あとはそれを決めなくてはならない」とトーマス・ミュラー。しかし自慢の攻撃陣は不発に終わっただけでなく守備陣でも「後半では2度の致命的ロストをおかし、それから完全に自信とリズムを失ってしまった」とトゥヘル監督。「もう後半は良くなることはなかったよ」
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守備面:ウパメカノの退場に、トゥヘル監督も苦言
結局その試合を決定づけてしまったのは、ダヨ・ウパメカノだった。グスタフ・イサクセンの足首をペナルティエリア内で、フランス代表DFは足裏から蹴っており、「あれはあまりにもラフプレーすぎるよ。本来ならブロックするだけで十分だったし、緊急措置を繰り出さなくてはいけない状況でもなかった。止めるだけでよかったのに」と悔やむ指揮官。結果はウパメカノの退場によって数的不利となり、更に冷静に決めたインモービレの値千金のゴールが決勝点となって、ラツィオがリードを奪い第二戦へと臨む事になる。加えてウパメカノはその試合でも出場停止だ。
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攻撃面:9年ぶりの屈辱、2015年以来の連続無得点
またこの試合でバイエルンは週末のレバークーゼンとのブンデス首位攻防戦に続いて、無得点で公式戦連敗を喫することに。実はこれは20年間で5度目のことで、しかも2015年5月以来の屈辱。「こんな事になるなんて。ここに足を運んでくれたファンの皆さんの気持ちも痛いほど良くわかる」とミュラー。「でもこれ以上、自分たちを落ち込ませるような事柄にばかり眼を向けるわけにも行かないよ」と前を向き、「30分近く数的不利となり、それでも0−1でしのいで折り返したのだから、問題というわけではないさ」と強調。チームが「怖がって」「しっかりと仕留め切れなかった」と指摘しつつ、「僕たちはチームとしてしっかりと団結して、そして最後の最後まで全ての試合で力の限りを尽くす。これから僕らと対戦するチームには、そう覚悟してもらいたい」と宣言した。
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ドレーセンCEO「それでも前を向くのがバイエルン」
バイエルンのドレーセンCEOは「もっと嬉しい結果を期待していた。それは確かなことだよ。でもこういう教訓とすべき日だってあるものだ。前半では明らかにエネルギッシュなプレーが見られていたし、レバークーゼンでの悔しい敗戦を払拭しようという気概が見受けられていたよ。ただラツィオが後半からは優位に立っており、これについては何も言い訳などできない。別のことを期待していたのは明らかだからね」と総括。「ウパメカノの退場は非常に残念なものであった。」と述べつつ、バイエルン生え抜きのミュラーと同様にあくまで次戦に向けて前を向いた。「アウェイ戦で0−1で敗れた時、へーネス氏やルメニゲ氏ならば常にこう口にしていたよ。『これはまだ受け入れられる結果だよ。これからホームで勝てる可能性があるのだから。』それが今日の我々からのメッセージとならなくてはならないよ!」
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だが一部のファンからはウパメカノに心無い言葉
それでも一部の心無いファンたちは試合後、前向きとは程遠い、SNS上にてダヨ・ウパメカノに対する人種差別的投稿を展開しており、ドレーセンCEOはこれに「不快」で「卑劣」と強く批判。「我々はウパメカノを支持する」と擁護し「この手の輩たちはバイエルンとの世界を共有すべきではない。これはバイエルンの世界観ではない。我々は明らかに嫌悪するものだ」と強調。1年弱前のマンチェスター・シティとのCLでも同様に致命的なミスをおかした際にも、このような人種差別行為を受けておりクラブ側は「限界を超える強烈な批判」と「そのような発言をした人々はバイエルンのファンではありません。ウパ、我々は君の側にいる!」と投稿している。
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トゥヘル監督、10ヶ月経過も本領発揮できず
ただいずれにしても一体なぜバイエルンは、トーマス・トゥヘル監督就任から10ヶ月が経過したにもかかわらず、いまだ軽快さ、自信、相互理解、意欲、規律面など、多くの部分での不足がピッチ上で見受けられてしまっているのだろう?トゥヘル監督も、そしてミュラーも練習におけるバイエルンは、エネルギッシュさもスピード感も集中力も、十分なものが見受けられていると話していた。それではハリー・ケインをはじめ現在の欧州クラブの中で3番目となる高額サラリーを支払っている、バイエルン首脳陣はトゥヘル監督に対する疑念を抱いてはいないのだろうか?
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ドイツ王者、負けられない2試合で共に敗戦
事実としてバイエルンは2024年で最も重要と位置付けられていた2試合、無敗の首位レバークーゼンとの直接対決と、そしてチャンピオンズリーグ優勝を目指し負けられない16強初戦を落としただけでなく、その敗戦の仕方も一貫性に欠けた。無論トゥヘル監督が手をこまねいているわけではなく、例えば前半32分にミュラーがみせたトリッキーなフリーキックのアプローチなどは、如何にチームが模索し、そしてサネのシュートがポストに嫌われたように如何に結果にそれが結びつかないかを、如実に表した場面とも言えるだろう。このまま不甲斐ない結果が続くのであれば、必然的にブンデス11連覇中の絶対王者の身にも激震が走ってもおかしくはない。
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バイエルン首脳陣はトゥヘル監督を支持
だがキッカーが得た情報によれば監督が問題の核心にあるとは見ていないようで、ヘルベルト・ハイナー会長は問題点については認識しつつも、トゥヘル監督を支持。「その後の夕食や、帰りの飛行機で選手たちと話をしており、とにかくできるだけ早く軌道修正をはかろうというのが目指すべきところだ。バイエルンとは最後の最後まで自分たちを信じて戦い抜くものだ」と意気込む。それでもトゥヘル監督、そして昨夏より一新された首脳陣も含めて、この「結果が出ない状況の転換」が図れない場合の責任も負っていることに変わりはない。
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後任候補に、ハンジ・フリック監督?
実際にこれまでにもバイエルン・ミュンヘンでは、やむを得ないと判断したときにヒッツフェルト監督や、ハインケス監督など、経験豊富で成功をおさめた指揮官を火消し役として復帰させるスタイルも持ち合わせているのは周知のこと。そういった点でいえば噂される、ハンジ・フリック監督の復帰を望む声が必然的に高まってくるかもしれない。たとえハイナー会長があくまでも「我々は今、チーム一丸となって浮上のきっかけを掴むために取り組んでいるところであり、必ずやそれを共に果たせるものと信じて疑わない」と口にしていたとしても・・・。
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ハリー・ケインもトゥヘル監督支持を強調
またトゥヘル監督をリスペクトするハリー・ケインは、TNTスポーツとのインタビューの中で「選手として、しっかりと責任を負わなくてはいけないと思うし、実際に僕たちはそうありたいと思っている」と述べ、監督交代という選択肢は「決して正しいとは思わない」と返答。「僕たちは一丸となって再浮上するために全身全霊を傾けている。この僕たちの中には、監督自身も含まれているよ」と述べており、そして同僚ミュラーやトゥヘル監督らが指摘していたように、「僕らはもっと伸び伸びと、もっとエネルギッシュなプレーをみせたいんだ」と語気を強めた。
「それが確かに試合の半分まではできたのだけど、それを最後まで保ち続けられなかったことは残念に思う。後半はエネルギーと自信を失ってロストを多く犯してしまった。それを改善するために皆で話し合う。状況は困難だが、だからこそ一致団結しないと。CLはまだ終わっていない。数週間後にはまたホーム戦は待っている。それに向けた準備をして、あとは前を向き、そして結果を待つのみだ」