便潜血検査が陰性なら大腸カメラの必要はない? 検便で引っかかる原因と対応を医師が解説
いわゆる「検便」で引っかかる原因にはどんなものがあり、引っかかった場合どうしたら良いのでしょうか? 検便で引っかかる原因と対応について、消化器内科医の佐々木大樹先生(佐々木医院院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
佐々木 大樹(佐々木医院)
2009年東邦大学医学部を卒業後、東邦大学医療センター佐倉病院初期に研修医として入職、その後、香取小見川医療センターでも経験を積む。2021年、佐々木医院院長に就任。日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医。
検便で引っかかる原因は何が考えられる? どんな細菌・ウイルスが見つかるの? 切れ痔や生理中の場合は?
編集部
健康診断のいわゆる「検便」で引っかかるのは、どんな理由がありますか?
佐々木先生
一般的な健康診断での「検便」は「便潜血検査」という検査のことです。こちらで引っかかるのは、便に血液が混じっていた場合です。血液が混ざっていると「陽性」や「要精密検査」という結果が出ます。また、食品取扱い従事者に行われる「検便」は「腸内細菌検査」と呼ばれるもので、便に特定の細菌やウイルス、ぎょう虫などがいないかを調べます。
編集部
まず、どうして便に血が混ざるのですか?
佐々木先生
血が混ざる場合は胃や腸、肛門などに何らかの問題があることが考えられます。切れ痔など、肛門に近い病気ほど、血液が赤く、逆に肛門から離れたところの病気だと血液は赤黒くなります。
編集部
「腸内細菌検査」では、どんな細菌やウイルスが見つかるのですか?
佐々木先生
例えば赤痢菌やチフス菌、腸管出血性大腸菌、コレラ菌、ノロウイルスやロタウイルスなどの有無がわかります。
編集部
検便は生理中には避ける方がよさそうですね。
佐々木先生
受けられないことはないですが、生理中は血液が混入する可能性が高いため、避けていただいた方が確実です。
検便で引っかかったらどうすればいい? 便潜血検査が陽性ならすぐ大腸カメラを受けるべき?
編集部
健康診断で検便に引っかかったらどうすればいいですか?
佐々木先生
なるべく早く消化器内科に行き、検査を受けましょう。統計的には、健康診断で検便に引っかかっても、9割以上の方は精密検査で「異常なし」になることが多いですが、まれに大腸がんなどが見つかる場合もありますので、大腸カメラで検査してもらいましょう。
編集部
大腸カメラはどんな検査ですか?
佐々木先生
大腸カメラは「大腸内視鏡検査」と呼ばれる検査で、肛門からカメラを入れて大腸全体(約80cm)を観察する検査です。検査中にポリープやがんを疑う病変が見つかった場合には、組織を一部採取したり、ポリープの切除を行ったりすることも可能です。
編集部
検便で引っかかる原因は、大腸がんの可能性もあるということなのですね。
佐々木先生
はい。早期の大腸がんは自覚症状がほとんどなく、また、仮に血便が出たとしても、初期の場合は量も少ないため、気が付かない方も多いのです。目で見てわかるほどの血便が出てからではかなり遅い可能性があるため、検便で引っかかったら、まずは一度、精密検査を受けましょう。
検便で引っかかっても便潜血が陰性なら大腸内視鏡検査は必要ない? 便潜血検査に大腸がんの見逃しはないの?
編集部
では、便潜血が陰性の場合は、大腸カメラは受けなくても良いですか?
佐々木先生
難しい質問ですね。スクリーニング(選別・ふるい分け)のための検便ですが、検便で「異常なし」と出た場合でも、ポリープなどの前がん病変などがある場合も考えられますので、受けていただいた方が安心だと思います。
編集部
受ける目安などはありますか?
佐々木先生
大腸がんは40代以降に急激に増えてくるというデータがあるので、症状がなくても、40歳を過ぎたら一度は受けてほしいですね。20~30代の方も、下痢・血便などの症状がある場合やご家族で大腸がんにかかったことのある方がいる場合などは、意識して検査を受けていただきたいです。
編集部
便潜血検査や大腸カメラに大腸がんの見逃しはないのですか?
佐々木先生
「見逃し」という言葉が適切かどうかは分からないのですが、大腸がんがあっても、一度の便潜血検査では引っかからない場合はあります。また、大腸という臓器は、曲がりくねっていたり、腸の内側に絨毛というヒダが無数にあったりするため、カメラのいわば「死角」になる部分がどうしても出てきてしまいます。ですから、一度の検査で「陰性」「異常なし」であっても、定期的な検査をお勧めします。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
佐々木先生
大腸内視鏡検査、いわゆる大腸カメラは、「肛門からカメラを入れて大腸の内部を観察する」というハードルの高い検査だとは思いますが、最近は、検査前の下剤も錠剤や粉末タイプなど飲みやすいものが出ていますし、検査時も、鎮痛剤などを使うことで苦痛を大幅に軽減することができるようになっています。「検査を受けなきゃ」とは思ってはいても、やはり不安という方は、まずは専門家に相談してみると不安も軽減されると思います。
編集部まとめ
検便はあくまでも「スクリーニング」であり、「要精密検査」という結果が出ても、9割以上は「異常なし」なのだそうです。「だから精密検査を受けなくても良い」というわけでは決してなく、過度に怖がらず、きちんと精密検査を受けましょうということですね。一方で、検便で引っかからなかった場合でも、40代以降の方は、一度は大腸内視鏡検査を受けていただくと安心とのことでした。
参考:
一般社団法人日本消化器内視鏡学会「昨年大腸内視鏡検査を受けました。今年も受ける必要がありますか?」
一般社団法人日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査は、どんな時に行う検査でしょうか?」
おなかの健康ドットコム「大腸がん検診」