「仕事がゆるいから辞めたい」現代の若手社員が抱える不安の正体
「若手社員が定着せずに辞めてしまう」
「若年層の離職率が高い」
こんな悩みを抱える企業は今も昔も多い。「若者はなぜ辞めるのか?」は日本の企業にとって古くて新しい問題である。古くは「職場の環境の悪さ」や「過酷な労働」が原因とされてきた。しかし、今や日本企業の労働環境は急速に改善している。しかし、やっぱり若手は辞める。
◾️大手企業で若手が辞めている
こうした労働環境の改善は、大手企業から中小企業へと浸透してきた。働き方改革関連法によって長時間労働の規制が強化され、パワーハラスメント防止法によって、理不尽なパワハラは減った。
しかし、意外なことに「早期離職率(初職就業後3年以内の離職率)」が、大手企業のみで上がっている、と指摘し、現代の日本企業で若者が辞めてしまう理由に迫るのが『ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由』(古屋星斗著、中央公論新社刊)だ。
大手企業への入職者の早期離職率は2009年卒(20.5%)から上昇傾向にあり、2017年には26.5%にまで達している。結果として大手企業と中堅企業の早期離職率の差は縮まってきているのである。ただ、繰り返しになるが、特に大手企業を中心に労働環境は着実に改善されてきている。だとするなら、この早期退職率の上昇は何を意味するのだろうか?
本書の著者がさまざまな業種の大手企業の新入社員に対して行ったインタビューの結果が興味深い。彼ら彼女らが口々に語ったのは「余力がある」「ゆるい、社会人ってこんなものなんですね」「学生時代に近い」といった言葉だったという。また、本来ストレスの元になりやすかった上司との関係性も「叱られたことは一度もない」といった発言がほとんど全員から返ってきた。こうした環境を本人たちは、決してポジティブには捉えていないばかりか、「持て余している」というのが実情なのだ。
◾️「仕事がゆるくて辞めていく」現代の若手社員の心理
だとしたら、辞めていく若手社員は「仕事がきつくて辞めていく」のではない。むしろ「仕事がゆるくて辞めていく」のではないか。本書ではそんな問題提起がされている。
これは一見、不合理に見える。「仕事がゆるくて辞める」ならば、仕事がゆるいが彼らにとってはストレスなのだ。本書ではさまざまな調査結果からそのストレスの正体を「このままでは別の会社や別の部署で通用しない」という不安だと結論づけている。
思えば、「仕事がきつくて辞める」若手社員が多かった時代は、その激務を辛いと感じながらも、自分が成長できているという実感は得られていたのかもしれない。翻って、職場環境が整備され、上司からの理不尽な仕打ちもなくなり、表向きは快適になった現代の職場で、若手社員は物足りなさを感じている。では、彼らが辞めないようにするにはどうすればいいのか。企業はこの難しい問題への対処を迫られている。
おそらく、この問題への答えは一つではないし、職場での心理的安全性や働きやすさを担保しながら若手が成長を実感できる環境を作ることは、おそらく可能だろう。しかし、いずれにしても現代の若手社員の心理についてもっと掘り下げて考える必要がある。本書では「ありのままの自分で、でも何者かになりたい」という彼らの心理に迫り、企業が彼らをいかに育成すべきかを考察していく。
新卒採用を行なっている会社であれば特に、若手は自社の未来を担う存在だ。人材の流動性が高まっている現代とはいえ、できれば若手が会社にとどまってほしいというのが願いだろう。本書はその願いを実現するために何をすべきなのかを考えるヒントをくれる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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◾️大手企業で若手が辞めている
しかし、意外なことに「早期離職率(初職就業後3年以内の離職率)」が、大手企業のみで上がっている、と指摘し、現代の日本企業で若者が辞めてしまう理由に迫るのが『ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由』(古屋星斗著、中央公論新社刊)だ。
大手企業への入職者の早期離職率は2009年卒(20.5%)から上昇傾向にあり、2017年には26.5%にまで達している。結果として大手企業と中堅企業の早期離職率の差は縮まってきているのである。ただ、繰り返しになるが、特に大手企業を中心に労働環境は着実に改善されてきている。だとするなら、この早期退職率の上昇は何を意味するのだろうか?
本書の著者がさまざまな業種の大手企業の新入社員に対して行ったインタビューの結果が興味深い。彼ら彼女らが口々に語ったのは「余力がある」「ゆるい、社会人ってこんなものなんですね」「学生時代に近い」といった言葉だったという。また、本来ストレスの元になりやすかった上司との関係性も「叱られたことは一度もない」といった発言がほとんど全員から返ってきた。こうした環境を本人たちは、決してポジティブには捉えていないばかりか、「持て余している」というのが実情なのだ。
◾️「仕事がゆるくて辞めていく」現代の若手社員の心理
だとしたら、辞めていく若手社員は「仕事がきつくて辞めていく」のではない。むしろ「仕事がゆるくて辞めていく」のではないか。本書ではそんな問題提起がされている。
これは一見、不合理に見える。「仕事がゆるくて辞める」ならば、仕事がゆるいが彼らにとってはストレスなのだ。本書ではさまざまな調査結果からそのストレスの正体を「このままでは別の会社や別の部署で通用しない」という不安だと結論づけている。
思えば、「仕事がきつくて辞める」若手社員が多かった時代は、その激務を辛いと感じながらも、自分が成長できているという実感は得られていたのかもしれない。翻って、職場環境が整備され、上司からの理不尽な仕打ちもなくなり、表向きは快適になった現代の職場で、若手社員は物足りなさを感じている。では、彼らが辞めないようにするにはどうすればいいのか。企業はこの難しい問題への対処を迫られている。
おそらく、この問題への答えは一つではないし、職場での心理的安全性や働きやすさを担保しながら若手が成長を実感できる環境を作ることは、おそらく可能だろう。しかし、いずれにしても現代の若手社員の心理についてもっと掘り下げて考える必要がある。本書では「ありのままの自分で、でも何者かになりたい」という彼らの心理に迫り、企業が彼らをいかに育成すべきかを考察していく。
新卒採用を行なっている会社であれば特に、若手は自社の未来を担う存在だ。人材の流動性が高まっている現代とはいえ、できれば若手が会社にとどまってほしいというのが願いだろう。本書はその願いを実現するために何をすべきなのかを考えるヒントをくれる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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