【賃貸トラブル】「退去費用」負担は借主? それとも貸主? “間違えがち項目”ランキング発表
2月に入り、新生活に向けて引っ越しを控えている人も多いのではないでしょうか。「LIFULL」(ライフル、東京都千代田区)が運営する不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」が、引っ越しシーズンに毎年話題となる「退去費用トラブル」に関する調査を実施。その結果を「退去費用は入居者負担?間違えがち項目ランキング」として発表しました。
「『原状回復』を正しく理解している人」半数届かず
調査は2023年12月15日から同月18日、5年以内に賃貸物件から引っ越しをした人(「不動産業」を除く)を対象に、インターネットリサーチで実施。1075人から有効回答を得ています。
まず、賃貸物件の退去費用について「納得はいったか」を聞いたところ、「納得がいかなかった」と回答したのは全体の51.6%を占めることが分かりました。なお、そのうちの10.9%は「納得がいかず交渉をして減額となった」と回答しており、「提示額はそのまま飲み込まなければならないもの」というわけではないようです。
次に、賃貸契約で義務付けられる「原状回復」について、選択項目の中から「意味として適切だと思うもの」を聞いてみると、「借りた当初の状態に戻すこと」を選んだ人が48.2%、「故意や不注意によってできた汚れ・傷について元の状態に戻すこと」を選んだ人が42.7%となりました。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」には、「原状回復」義務は「貸借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、貸借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による消耗・毀損を復旧すること」と記載されており、わざと壊したり、不注意で傷をつけたり、掃除を怠ったりしてできた汚れなど、入居者の使い方に問題があったことでできた汚れや傷の修繕費用を入居者が負担することが定義されています。しかし、正解である「故意や不注意によってできた汚れ・傷について元の状態に戻すこと」を選んだ人が42.7%と半数にも届いていないことから、原状回復について正しく理解している人はまだ少ないことがうかがえます。
また、「入居者(借主)が負担しなくていい費用」として正解率が低かった順にランキング化した「間違えがち項目トップ10」では、「ポスター等を貼ったことによる画びょうやピンの穴」が1位に。正解率は最も低い33.4%でした。
次いで、2位が「家具を設置してできた床やカーペットのへこみや跡」(正解率39.6%)、3位が「冷蔵庫設置による壁焼け」(同43.9%)、4位が「エアコンを設置したことでできた穴や跡」(同46.1%)、5位が「水漏れが発生したエアコンの修理・交換代」(同46.9%)となり、上位5つは正解率が半数を割り込む結果となっています。
同社によると、ポスターやカレンダーなどの掲示は「通常の生活において行われる範囲のものとされ、壁の下地にまで達しない画びょうの穴は通常の損耗と考えられる」一方で、「釘やビスなどを壁に打ち込んだ場合の補修費用は、入居者負担になる」とのこと。「家具を設置してできた床やカーペットのへこみや跡」や「冷蔵庫設置による壁焼け」も同じく通常の損耗範囲であり、貸主負担が基本だということです。
LIFULL HOME’S PRESS編集部の渋谷雄大さんは「2020年に民法が改正され、原状回復の義務は『賃借人(入居者)の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない』ことが明文化されました。しかし依然としてトラブルは絶えず、国民生活センターには原状回復に関する相談が毎年1万3000〜1万4000件程度寄せられています。これは賃貸住宅に関する相談の約4割に当たります」と説明。
また、調査結果を受けて「トラブルの多くは、退去時の費用に納得できないことで起こることから、つい退去時の問題と思いがちですが、実は入居時から始まっている問題でもあります。例えば、入居時に既にある傷や損耗などを撮影して記録に残しておいたり、原状回復に関する不明点をしっかり質問し、双方が納得したうえで契約を結ぶようにしたり、入居時の対応次第で防げるトラブルは多くあります」「退去予定がある人はもちろん、これから賃貸物件で新生活を始めるという人にこそ意識していただきたいテーマです」とコメントを寄せています。