タレント・見栄晴が公表した「下咽頭がん」とは? 症状・原因・生存率も医師解説

写真拡大 (全5枚)

タレントの見栄晴さんがステージ4の下咽頭がんを患っていることを、所属事務所がホームページで報告しました。入院して治療に専念するため、タレントとしての活動を休止するそうです。インスタグラムでは「元気な姿で戻れるように頑張ります!」と復帰を誓っています。

下咽頭がんとは、咽頭の下部に発生する悪性腫瘍のことを指します。初期症状があまりなく、発見が遅れてしまうことが多い病気です。

病気を治癒するためには、早期発見・早期治療が大切になります。また、その病気に関する知識を身につけ、対策を知っておくことも欠かせません。

そこで、下咽頭がんの特徴や症状などの基礎知識を紹介しています。これらの情報を把握しておくことで、病気への向き合い方が分かるようになるでしょう。

※この記事はMedical DOCにて【「下咽頭がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)

徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

下咽頭がんの基礎知識

下咽頭がんの特徴を教えてください

下咽頭がんとは、下咽頭に発生する悪性腫瘍のことです。鼻の奥から食道までの空気の通り道である咽頭は、上から順に上咽頭・中咽頭・下咽頭と分けられます。下咽頭は最も下にあり、喉頭蓋谷から輪状軟骨下縁までの部位を指します。
下咽頭はリンパ節に近いため、悪性腫瘍ができるとリンパ節転移が起きやすいです。また、中咽頭がんが重複して発症するケースもよくみられます。
下咽頭がんは大きく3つの種類に分けられます。それぞれで発症の頻度も異なり、梨状陥凹型がおよそ70%・後壁癌が25%・輪状後部癌がおよそ5%です。

下咽頭がんに初期症状はありますか?

下咽頭がんは、初期症状がほとんどみられないことが特徴です。そのため、病気の早期発見が難しいといわれています。
発見時にはすでに進行している場合が多く、診断時に病気の進行がみられるケースはおよそ80%となっています。下咽頭がんによって引き起こされる症状は、喉の痛み・違和感・声の出しにくさなどです。血痰や吐血がみられる場合もあり、進行すると呼吸困難が生じます。
また、リンパ節に転移がある場合、首にしこりが確認できます。このしこりから病気が発覚するケースも多いです。病気を治癒するためには、早期発見することが大切になります。以上のような症状が気になった場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

下咽頭がんの原因は何ですか?

下咽頭がんは、タバコやアルコールが原因となって発症します。そのため、喫煙や飲酒の習慣がある人は発症のリスクが高いです。
がんの予防には発症のリスクを高める要因を回避することが有効であるため、喫煙・飲酒の習慣がある人は生活習慣を見直してみると良いでしょう。

下咽頭がんの発症率はどのくらいですか?

下咽頭がんが発症しやすいのは、50~60歳代です。また、70・80歳代でも発症するケースがみられます。
男性の方が発症率は高く、女性の4~5倍発症しやすいです。男性のおおよその発症率は10万人あたり2人程度になります。加えて、過度な喫煙・飲酒は発症のリスクを高めるため、喫煙・飲酒のある年配の男性は特に発症しやすいです。

下咽頭がんのステージごとの生存率はどのくらいですか?

下咽頭がんのステージは、3つの観点から悪性腫瘍の状態をみて判別します。みられる観点は、がんの広がり・がんのリンパ節への転移の有無と個数・遠隔転移の有無です。
がんが大きく広がり、リンパ節やその他臓器への転移が1個以上確認された場合、進行したがんとして診断されます。ステージが進んだがんになると、生存率が低くなります。
ステージが軽い場合、5年生存率は80~90%ほどです。しかし、ステージが進むにつれて生存率が下がり、30~40%ほどになります。さらにいえば、下咽頭がんは早期発見が難しい病気です。そのため、発見時にはがんのステージが進んでいることも少なくありません。
できるだけ早く病気を発見し、治療に取り組むことが生存率の上昇につながります。

下咽頭がんの検査と治療について

下咽頭がんの検査について教えてください

下咽頭がんの検査は、いくつかの方法を組み合わせて行います。主に行われる検査は、経鼻内視鏡検査・生検・CT・MRI検査・触診などです。経鼻内視鏡検査では、内視鏡を用いて下咽頭の腫瘍を確認します。
がんが疑われた場合細胞を採取し、顕微鏡で細胞を詳しく調査します。この調査が生検という検査です。CT・MRIは、腫瘍の広がりや転移を確認するために行われます。リンパ節への転移がある場合、触診で首のしこりが確認されます。
また、この病気は食道がんや胃がんを併発しているケースも多いです。そのため、これらの検査に合わせて上部消化管内視鏡検査も行い、悪性腫瘍がないかを調べます。
以上の検査の結果を踏まえ、がんやステージの診断がされます。

下咽頭がんの治療方法について教えてください

治療方法は、がんのステージや患者さんの健康状態を考慮し、適切なものが選択されます。
初期の場合、経口切除を行うケースが多いです。経口切除は内視鏡を使用して長い鉗子で腫瘍を取り除きます。この方法では身体にかかる負担が少なく、長期間の入院も必要ありません。
がんが広がっている場合、放射線治療抗がん剤治療が行われます。この2つを併用して治療が行われるケースも多いです。
ただし、これらの化学療法には副作用があります。治療後に嚥下障害などが残る可能性も高いです。ステージがかなり進んでいる状態であれば、咽頭切除手術が行われます。切除部分が小さければ治療後の影響は少ないですが、場合によっては声帯の切除が行われ、発声ができなくなります。早期に治療を行うほどリスクが少なくスムーズに行えるので、病気の早期発見・早期治療を目指しましょう。
不安なことがあれば担当医に相談して、適切な治療の方針や方法を決めていくと良いでしょう。

下咽頭がんの予防方法はありますか?

下咽頭がんの原因となるのは、過度な喫煙と飲酒です。そのため、喫煙の習慣がある人は禁煙し、お酒を飲む人は適度な飲酒に止めることが効果的です。生活習慣に問題がないかを見直し、改善できる部分は直しましょう。
また、口腔ケアも予防に効果があります。日ごろから口内の清潔に気を配り、歯磨きやうがいなどを実施すると良いでしょう。加えて、がんを発症してしまった場合は、できる限り早く対処をすることが大切です。
しかし、下咽頭がんは初期症状がほとんどなく、早期の発見が難しいです。早期発見をするためには、定期的に健康診断を受けると良いでしょう。自覚症状があまりなくても、検診で病気が発見される可能性があります。

下咽頭がんの治療後について

下咽頭がんは再発する可能性はありますか?

下咽頭がんは再発する可能性がある病気です。再発を防ぐためには、予後の経過に気を配ることが大切になります。
再発の確率が高いのは、治療後2年以内です。その間は通院を続け、定期的な検診を受けるようにしましょう。2年経過した後も再発する可能性はあります。リスクが低くなったからと油断せず、定期的に健康診断を受けると良いでしょう。
また、生活習慣を見直すことも重要です。喫煙・飲酒はがんを引き起こす要因になります。それらの習慣がある人は控えて、健康的な生活を行うことを心がけましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

下咽頭がんは初期症状があまりみられず、早期発見が難しい病気です。しかし、発見が遅れると治療に様々なリスクが伴うようになります。5年生存率も下がるため、できるだけ病気の早期発見・早期治療に取り組むことが望ましいです。
自覚症状が弱くてもがんが発見できるように、定期健診を受けると良いでしょう。また、気になる症状や不安などがあれば、医療機関を受診してみてください。早めの対応が病気の治癒や良好な経過につながります。

編集部まとめ


下咽頭がんとは、咽頭の下部にできる悪性腫瘍のことです。喫煙・飲酒が原因となって引き起こされる病気です。

この病気は、初期症状が強く表れることはほとんどありません。そのため早期発見が難しく、発見時にはステージが進行していたケースも多くあります。

発見・治療が遅れると5年生存率が下がり、治療にもリスクが伴うようになります。このことから、できるだけ早期の発見・治療をすることが望ましいです。

早期発見をするために、定期的に検診を受けるようにしましょう。また、予防のために喫煙・飲酒を控えることも大切です。