「スキルス胃がんの進行速度」はご存知ですか?手遅れとなる症状も解説!

写真拡大

「なんとなく胃の不快感がある。」「家族に胃がんの人が多い。」「自分は胃がんかもしれない。」と不安になったりしていませんか?

今や誰もががんに罹る可能性のある時代。一般的な胃がんも患者数が多くなってきていますが、今回はその中でも、発見が困難で進行の速い「スキルス胃がん」についてまとめたいと思います。

自覚症状があまりみられないがんのため、その原因や症状をしっかり知ることで少しでも早期発見できるようにしていきましょう。自分の体の違和感に気づくことは非常に大切です。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

スキルス胃がんとは

スキルス胃がんとは、胃がんの10%ほどに発生する胃がんの一種です。
早期発見が困難な上に増殖スピードが速く、治療が困難な胃がんだとされています。ほかの胃がんに比べて女性や若い人にみられることが多いです。
内視鏡検査でも診断が難しいため早期発見は容易ではなく、発見時にはすでに進行してしまっていることが多いといわれています。

スキルス胃がんの原因

ここからは、スキルス胃がんの原因について紹介していきます。原因は、主に以下の2つが挙げられます。

ピロリ菌

遺伝子

それぞれについてみていきましょう。

ピロリ菌

ピロリ菌は胃内に存在するグラム陰性螺旋状桿菌(ぐらむいんせいらせんじょうかんきん)で、胃潰瘍の原因は70%がこの菌が原因だといわれています。
この菌に感染すると胃粘膜が急性・慢性の胃炎を起こしてしまい、その後に胃がんを引き起こすといわれ胃がんの大きな原因のひとつとなっています。
近年では衛生状態が良くなったため、感染率の低下が少しずつ進んでいる状態です。

遺伝子

がんといえば遺伝性が気になると思いますが、胃がんの発生にはさまざまな遺伝子異常が関わっており、その原因はひとつとは限りません。
よく「がん家系だ」と表現することがありますが、家族間で胃がんが多く発生することを家族集積性胃がんといい、胃がん全体の10~20%と数字としては少数派です。
遺伝性のがんは3%未満となっており、家族間の遺伝が要因なものは少なく、そのほとんどが他の原因からくるものであることがわかっています。

スキルス胃がんの症状

ここからは、主な症状を紹介します。代表的な症状としては、以下の6つがあります。

食欲不振

腹痛

嘔気

体重減少

胸やけ

胃の不快感

それぞれを解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

食欲不振

スキルス胃がんと通常の胃がんでの食欲不振は症状としてはほとんど違いはありません。
胃粘膜や胃壁の伸縮性が低下することにより、食べたものが通過しにくくなったり、消化活動が低下して胃もたれを引き起こすことなどがあります。
スキルス胃がんでも初期の頃は軽い食欲不振程度を感じることがあっても、胃がんに気づくほどではありません。
末期になって本格的に食欲不振になり、体重減少が起こってから発見されることが多いでしょう。

腹痛

初期の段階では無症状なことが多く、軽い食欲低下や胸やけ程度の症状しか自覚できないスキルス胃がんですが、がんが進行するとみぞおちあたりの痛みに気づくことがあります。
これほど進行すると、同時に胸やけや嘔吐などが合併するため自覚されることが多いです。
また、スキルス胃がんが腹腔内に転移して広がっていくと、腹水が溜まることにより腹痛が生じてしまいます。
つまり、腹痛を感じる時にはがん進行は随分進んでいる目安と考えてよいでしょう。
ただ、胃炎や胃潰瘍でも同様の腹痛や胃痛を感じることがありますので、痛みを感じたら一度受診されることをおすすめします。

嘔気

先程もお伝えしましたが、スキルス胃がんは進行が速く治療困難な胃がんです。
しかし、初期症状はほとんどなく、あっても軽い胸やけや食欲不振程度です。
嘔気があるような場合は進行した状態と判断されます。ひどい場合には嘔気に続いて、嘔吐・吐血・下痢・下血・血便などがみられるようになります。

体重減少

初期症状に乏しいスキルス胃がんですが、胃壁を這うように広がる胃がんのため、徐々に胃壁が硬くなり胃の伸縮性が低下してきます。
胃の蠕動運動が妨げられ消化が困難となり、消化不全の胸やけや嘔気・食欲低下が引き起こされた結果、徐々に体重が落ちてくることがあります。
胃部の違和感やなんとなく食欲が出なくなってきたなどが同時にあれば、念のため早めに検査を受けるように心がけてください。

胸やけ

初期段階の症状ははっきり自覚できないものの、注意深く観察してみれば軽い胸やけや食欲不振に気づくことができるかもしれません。
胃が炎症を起こしていたり、スキルス胃がんで胃壁が硬くなっていたりすると徐々に出てくる症状なので、気のせいだと軽く流さず受診しましょう。

胃の不快感

明確に症状を感知できなくても、なんとなくの不快感であれば感知できるかもしれません。いつもよりなんとなく優れないというその感覚を大事にしてください。
体内の不調に気づくことは非常に難しいことですが、そのなんとなくが非常に重要なことがあります。
いつも自分の体に敏感であれば、早期発見の難しいスキルス胃がんに気づくことができるかもしれません。

スキルス胃がんの進行速度

ここからは、進行速度について紹介します。進行速度が気になる人は、ぜひ参考にしてみてください。

早期がん

がんは徐々に進行し、数年かけてスキルス胃がんに成長します。
その始まりの粘膜層または粘膜下層のとどまるものを「早期がん」と呼びます。
スキルス胃がんは進行が非常に速いため、症状に気づいて検査を受ける段階では末期であることがほとんどといわれています。
内視鏡検査でも発見が困難であることが、スキルス胃がんは早期発見が極めて困難といわれる所以です。

進行がん

がんは大きく分けて分化型と未分化型がありますが、進行の緩やかな分化型に比べて、未分化型は進行が速い傾向にあります。
未分化型の特徴として、がん細胞にまとまりがなく広がっていくという特徴があります。
スキルス胃がんは未分化型であることが多いので、進行が非常に速いがんだといえるでしょう。

「スキルス胃がん」の進行速度についてよくある質問

ここまで「スキルス胃がんの進行速度」などを紹介しました。ここでは「スキルス胃がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

スキルス胃がんが手遅れになる症状について教えてください

中路 幸之助(医師)

前述しましたが、スキルス胃がんは末期まで症状のあまりみられない胃がんです。症状としては進行するほど胸やけ・食欲不振・嘔吐・腹痛などがみられるようになりますが、症状が出てきた時点でかなり進行しているといってよいでしょう。これらの症状が出てからもなお放置していた場合、手遅れになってしまう可能性もあります。

スキルス胃がんの進行速度と自覚症状の関係について教えてください

中路 幸之助(医師)

スキルス胃がんは早期がんから2~3年かけて進行するがんだといわれています。初期症状はほとんどが自覚できるものではないため、発生から3年後頃には自覚できる症状へと悪化しておりその段階で病院を受診するとすでに随分進行していた、ということになりかねません。自覚症状は軽いもので胸やけや食欲不振・胃部不快感などがありますが、この症状を見逃さず、早期に受診する必要があります。

編集部まとめ

スキルス胃がんについてまとめましたが、いかがでしょうか。スキルス胃がんは早期発見が困難といわれる進行の速いがんです。胃壁を伝って広がるため取り除くことも難しく、治療が大変困難といわれています。

少しでも速く発見するためには、日頃から自分の身体の調子を気にかけておく必要があります。何か違和感を覚えたり、いつもと違うと感じたりしたら、迷わず一度病院を受診しましょう。早期発見ができるかもしれません。

スキルス胃がんと関連する病気

「スキルス胃がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

ピロリ菌

鳥肌胃炎

女性ホルモン異常

少しでも不安なことがあれば、早めに相談するとよいでしょう。

スキルス胃がんと関連する症状

「スキルス胃がん」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

胸やけ

胃痛

嘔気

腹痛嘔吐

下痢

体重減少

食欲不振

下血

吐血

黒い便

これらの症状がなくても、定期的に病院で健康診断を受けることも大切です。

参考文献

ピロリ菌と胃病変

遺伝性胃癌の病態と内視鏡検査の役割

胃がんについて(国立がん研究センター)