内陸なのに「海」に由来する地名があるのはなぜ?

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地名には、梅と桜などの花や虫の類、包丁やノコギリといった道具など、モノの名前を冠したり、内陸に実は多い「海」がつく地名などの意外な名付けられ方をしているものがある。不思議な地名はどのような経緯でつけられたのか。

■内陸なのに「海」に由来する地名がある理由

『地名散歩 地図に隠された歴史をたどる』(今尾恵介著、KADOKAWA刊)では、日本地図センター客員研究員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査などを務める地図研究家の今尾恵介氏が、全国の不思議な地名を取りあげ、土地や日本語の由来を紹介する。

内陸にある「海」地名で、「渚」という駅が国内に2か所、いずれも海に面していない長野県と岐阜県に存在する。一つはアルピコ交通上高地線の駅で、松本駅から二つ目の住宅地の中。『角川日本地名大辞典』によると、地名の由来は、「地内を奈良井川、穴田川、大門沢川、女鳥羽川などが流れ、絶えず水がただよう場所であったことによる」という。現在では渚の字から連想するのは海辺の波打ち際かもしれないが、本来の字義は海に限ったものではなく、水のある所なら川であっても渚になるので、山の中に渚の地名があっても不思議ではないのだそう。

もう一つの渚駅はJR高山本線の下呂と高山の中間あたりにある。江戸初期には記録にある渚村の由来は『斐太後風土記』によると、「波際に住居を構えたことに由来」としている。こちらも水際ということになる。

また、意外に多いのが「虫の類」の地名だ。たとえば、蟻の地名。最も人が多く住んでいるアリ地名は長野県松本市蟻ヶ崎で、松本城の北側に広がっており、地内には蟻ヶ崎高校と松本深志高校などが集まる文教地区。古くからの地名で、かつては阿礼崎と表記されることもあった。アレ・アリの意味は不詳だが、平野を見下ろす突端の地形となる。

他には、蛍の地名もある。ホタルが住むのは清流というイメージが定着したことからか、平成になって高知県南国市蛍が丘、福島県会津若松市北会津町ほたるの森、千葉県木更津市ほたる野などが新たに誕生している。

自分の出身地や今住んでいる街など、身近なところに不思議な地名は存在するもの。その地名の歴史や由来、どんな物語を伴ってきたかを知ると、地名の奥深さを感じることができる。

(T・N/新刊JP)

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