(漫画:筆者作成)

職場で会社や上司の批判ばかりする「社内批評家」に困った経験はないでしょうか。そうした人にどう対処すればいいのか。著書に『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』などがある漫画家・イラストレーター・グラフィックデザイナーのJamさんが、自身の経験を基に解説します。

「社内批評家」が生まれる理由


(漫画:筆者作成)

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会社では、否定的な視点からだけの意見を述べて、自分の会社を批判する「社内批評家」がいることがあります。「あれもダメ、これもダメ」と否定ばかりする「社内批評家」は、なぜ生まれてしまうのでしょう?

考えられる大きな理由の1つは、「自分に自信がないから」です。

自分に自信があって周りからも認められている人は、わざわざ批判に時間を費やしたりはしません。しかし、自分に自信がない人や周りに認めてもらえない人は、会社を否定することで、職場でうまくいかない自分の立場をごまかしていることがあります。

仕事の評価や人間関係で満足いく結果が得られないのは、自分が悪いのではなく、自分を正当に評価できない会社や上司が悪いことにしてしまえば、傷つかないですむからです。批判されることが怖い人ほど、周りを否定する傾向があります。

「否定することができる自分はすごい」と錯覚

「承認欲求を満たしたいから」という可能性もあります。SNSの誹謗中傷やマウントを取りにくる人もそうですが、他を否定することは、一番簡単に満足感を得ることができる方法だからです。自分はなんの努力をせずとも周りを否定するだけで、優位に立ったような気持ちになれます。

ターゲットにされた人は落ち込んだり、謝ったりすることもあるので、そうやって否定することで得た成果によって、「否定することができる自分はすごい」と錯覚してしまうのです。

そんな「社内批評家」の人が、仕事で成功することができるかというと、正直なところ、難しいと思います。誰だって自分や勤めている会社を悪く言う人には協力したくないし、好意的な印象を持てません。「否定的な人」への対処法は、たいていの場合は「気にしないこと」や「関わらないこと」です。

だから、「アレもコレもダメだ」と否定する人は周囲から避けられ、どんどん孤立していきます。よほど特殊な仕事や、技術職など、代わりがいない仕事でないかぎり、他人の協力なしに成果を出すことは難しいはずです。だから、「社内批評家」の人が会社で成功する可能性は低いのです。

もし「社内批評家」だった人が気持ちを改めて頑張りたいなら、まずは否定してきた相手や、自分が勤めている会社に対して、感謝や配慮の気持ちを持つことです。今までたくさん批判してきた人ほど、状況を変えていくのは難しいでしょうが、会社であるからこそ挽回の余地があります。

これが友人や恋人であれば、一度嫌われたらもう二度と会わない……ということもありますが、会社にいるかぎりは「仕事だから切れない縁」もあります。今までブラックだった会社でも、職場環境を見直せば受け入れられることがあるように、状況さえ改善されれば、やり直す機会もあるのが会社です。だから、方向転換をするなら早いほど良いと思います。

仕事も人間関係も、相手があってのものです。人間ですから、ときには否定的なことを言いたいときもあるかもしれませんが、それが常態化しないように、気をつけていきましょう。

育ててやったのに裏切られた?有能な若手が突然退職


(漫画:筆者作成)

「有能な若手がびっくり退職してしまった」という話をよく聞きます。今は売り手市場ですし、昔のような年功序列より成果主義を求める若者が多いので、転職は当たり前の時代です。人手不足ですから、有能であればあるほど引く手あまたです。しかし、退職を宣告されてムカムカしたり、若者に非があると感じたりするなら、それは、お門違いです。

よく聞くのは、「育ててやったのに裏切られた」という声です。確かに時間を割いて育ててきた部下に、やっと使えるようになったところで退職されたら、がっかりするでしょう。

しかし、こういった考え方も退職につながった理由かもしれません。有能な若手ですから、おそらくは日ごろから自己研鑽に励み、精力的に働いてきたはずです。

それに対する正当な評価がされていれば、わざわざ退社して、他社でゼロから始めようという選択は、なかったのではないでしょうか?

「びっくり」したのは、退職の気配に気づけなかったからだと思います。昔と違って今はSNSも普及していますし、退社を決意するまでの相談を、社内の人や身近な人にするとはかぎりません。そういった意味では「辞めそうな兆し」は昔よりもわかりにくいと思います。

また、最近の真面目な若者ほど「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、退職を決意してからも適当にはせず、最後まで仕事を頑張ったりします。そうすると、「あんなに頑張ってやる気もあったのになぜ?」という勘違いが起こります。

結局は、目が行き届いていなかったゆえの「びっくり退職」です。何も言わなければ不満がないだろうと、評価がおろそかになったり、人間関係の悩みに気づけなかったり。今の職場を離れたほうがメリットは大きいと感じる理由があったはずなのです。

「最近の若者は…」と言うのは簡単

若手の「びっくり退職」にムカムカしてしまう気持ちも、わからなくはありません。教育した努力が無駄になってしまった以外にも、相談されなかったことで、信頼されていなかったと感じたり、社内での自分の評価が下がってしまったり、有能な若手であったなら、部署の売り上げにも影響が出たかもしれません。

でも、それはあくまで上司の都合で、若手の都合とは何の関係もありません。どちらかが我慢しなければならない都合が、今まで、偏り過ぎていたということはないでしょうか。

「最近の若者は……」と言うのは簡単ですが、上司にとっては突然でも、若手にとっては突然ではなかったのだと思います。優秀な若手がなぜ、突然退職してしまうのか? 古い価値観が更新されていたのか、会社の仕組みに問題はなかったのか、きちんと向き合っていく必要があると思います。

(Jam : 漫画家・イラストレーター・ゲームグラフィックデザイナー)