秋の旬「栗」「ギンナン」 落ちていても持ち帰っちゃダメ? 弁護士に聞いてみた
秋は栗やギンナンが旬を迎えるほか、紅葉が見頃となります。栗拾いや紅葉狩りなどを計画している人もいると思います。
ところで、栗やイチョウ、モミジの木は行楽地だけでなく、公園や道路沿いにも植えられており、周辺に栗やギンナンの実、モミジの葉などが落ちていることがあります。これらの物を勝手に持ち帰った場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の弁護士・牧野和夫さんに聞きました。
窃盗罪に該当する可能性
Q.公園や道路などに落ちている栗やギンナンの実のほか、モミジの葉を勝手に持ち帰った場合、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「栗やギンナンの実、モミジの葉は、法律的には『樹木から分離した果実』という位置付けになり、当該樹木の所有者・占有者に果実の所有権が帰属します。実際に、民法89条1項では『天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する』と定められています。
つまり、街路樹(樹木)の所有者・占有者が自治体の場合、樹木から分離して自治体の所有地・占有地上に落ちた果実は、『自治体の所有物』となります。そのため、自治体が所有・占有する樹木に実っている果実や自治体の占有地上に落ちた果実を取得した場合、刑法235条の窃盗罪が成立する可能性があります。
樹木から分離して自治体の占有地ではない路上に落ちている場合、自治体の占有は及んでいないため、果実を拾って持ち帰ったとしても窃盗罪は成立しないと解釈することもできます。ただその場合でも、他人の占有を離れた物を横領したとして、刑法254条の占有離脱物横領罪(1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料)が成立する可能性はあります。
私有地の樹木に実っている果実や私有地に落ちている果実を取得すると、その私有地の所有者の所有権や占有者の占有権を侵害することになり、窃盗罪が成立する可能性があります。柵を乗り越えて他人の私有地に侵入して果実を取得すると、窃盗罪に加えて、刑法130条の住居侵入罪が成立する可能性があります」
Q.では、公園や道路などに落ちている栗やギンナンの実、モミジの葉などは持ち帰らない方がよいということでしょうか。
牧野さん「先述のように、樹木から分離して路上に落ちている栗やギンナンの実、モミジの葉といった果実については、原則として、当該樹木の所有者・占有者である自治体などに所有権が帰属します。
しかし、路上に落ちているギンナンの実やモミジの葉などを無断で持ち帰る行為について、所有者や占有者が文句を言うどころか、掃除の手間が省けると考え、当該行為を黙認しているような場合、事実上、所有権や占有権を放棄していると解釈されるでしょう。その場合、所有権や占有権が侵害されないため、犯罪は成立しないことになります」