2年ぶりのカタール。ドーハは気温40度の猛暑だった。それに加えて、砂漠のど真ん中ながら海が近いゆえに湿度も高い。レースは夜8時に行なわれるとはいえ、今シーズン最もタフなレースのひとつになることは間違いなさそうだ。

「この4〜5戦はマトモにレースができていませんけど(苦笑)」

 角田裕毅はカタールGPの週末を前に、そう言って笑った。


角田裕毅は熱くてタフなカタールをどう攻める?

 イタリアとシンガポールは早々に戦列を離れ、オランダと日本はレース週末全体を見据えたタイヤ戦略がうまくいかず、決勝で本来の競争力を発揮できなかった。

 マシンはシンガポールに投入したアップグレードでパフォーマンスが向上しており、その真価は高速コーナーが多いカタールGPのロサイル・サーキットで発揮されるはずだ。

 まだはっきりとした確証は掴めていないようだが、だからこそこのカタールでその効果を確かめたいと角田は語る。

「鈴鹿とシンガポールは大きく特性が違いますし、幸いなことにどちらもいいパフォーマンスを発揮することはできましたが、鈴鹿の予選では挽回できたものの、フリー走行で苦戦していてアップダウンがありました。Q3に行くのも決して簡単だったわけではありませんし。

 ただ、Q1で落ちることを危惧するような状況ではなかったので、前進していることは確かだと思います。もしカタールでいいパフォーマンスが発揮できれば、アップグレードの効果は確かだと言えるんじゃないかと思います」

 ロサイル・サーキットは100km/hを下回るコーナーがひとつしかなく、それ以外はすべて中速・高速コーナーで構成される。空力性能が問われるサーキットだけに、マシンの評価には打ってつけだ。

 アルファタウリのマシンは、すでにシーズン中盤までのような9〜10番目争いからは脱した感がある。だが、6〜7番目争いからさらに上に行けるかどうか、それが重要だ。

【角田は2年前のカタールGPで予選8位を獲得】

 角田は語る。

「中団グループはかなり接戦ですし、トップ10に入ることは簡単ではありませんけど、11位や12位を争う自信は持てるようになっています。アップグレードでパフォーマンスは少し向上できたと思います。

 特に予選ですね。想定どおりに機能していると思いますので、より自信を持って戦うことができるようになっています」

 日本GPのあともしばらく留まってイベント仕事をこなし、ヨーロッパに戻って火曜日にシミュレーター作業をこなしてからカタールへ飛んできた。

 その一方で、ダニエル・リカルドの左手の治癒が不十分であることから、チームは月曜の段階で再びリアム・ローソンにカタールでも走るように依頼した。ローソンにとっては初めてのカタールであり、初めてのスプリント週末になる。

 たった1度のフリー走行のみで予選に臨み、そこからセットアップを変えることはできない。

「フリー走行が1回しかなくて時間も短いから、かなり難しい週末になるだろうね。でも、代役出走の役目を終える前にスプリント週末を経験できるのはワクワクしているよ。このサーキットで走るのも初めてだしね。

 シミュレーターで走ってみて、とても高速なサーキットだという印象を持ったよ。低速コーナーがひとつしかないサーキットはあまり見たことがないしね。今週末をどう戦うことになるかはまだわからないけど、このサーキットをドライブするのは楽しみだ」(ローソン)

 角田は2021年にここで走り、予選8位を得ている。

 しかし、レイアウトこそ変わらないもののサーキットは全面的に再舗装が行なわれ、F1のスタンダードに合わせたピットビルディングとパドック、4万人収容のメイングランドスタンド、ターン1から3まで丘のようになった観戦エリアと、大幅にリニューアルが施された。

 新舗装のグリップレベルを不安視する声もドライバーたちから聞かれるなかで、角田は縁石に懸念を示した。

「2021年の時よりもアグレッシブな縁石になっているようです。縁石の上を走ること自体は問題ないと思いますが、その先のランオフエリアのターマック(舗装路)との段差が問題で、そこがスムーズでないので、縁石を越えてしまうとマシンにダメージを負うリスクまであると思います」

【アストンマーティンと紐づける憶測記事は迷惑】

 もし縁石でフロアを壊せば、パフォーマンスの損失は非常に大きい。レース中でなくても、シンガポールで投入した新型はスペアがひとつしかないため、予選・決勝では使えなくなってしまう。

「特にここは高速で走行しますし、今のマシンは車高がかなり低いので、たった1回のミスでも大きな代償を支払うことになるかも知れません。それが最も注意しなければならない点だと思います」

 予選で好パフォーマンスを見せながらも、シーズン後半戦はレースらしいレースができていないフラストレーションもある。

「2年ぶり2度目開催」という誰にとっても経験値の浅いサーキットにもかかわらず、スプリントフォーマットが実施されるこのカタールGPの週末だからこそ、角田の指摘する縁石のような万難を排してマシンと自身のパフォーマンスをすべて出しきってもらいたい。そうすれば、自ずと好結果が見えてくる。

 2024年の契約が発表されたばかりだが、角田としてはレッドブルのドライバーとして、レッドブルに昇格したいという思いがある。ホンダとの関係からアストンマーティンと紐づけるような憶測記事は迷惑だと明言する角田は、すでに2025年に向けてスタートを切っている。

「とにかく、僕がレッドブルにふさわしいドライバーということを納得してもらうには、僕自身がいいパフォーマンスを示すことが必要だと思っています」

 暑くてタフなカタールで、今週末こそ本来の力を見せてもらいたい。