都市活性化へ向けてついに動き出した広島。さらに住み心地のいい街づくりへ。
中四国地方で最多の人口を誇り、最大の商店街・繁華街を擁する広島市。2023年5月には先進7か国首脳会議(G7サミット)も開催され、世界からも注目を集めています。2020年、広島市が中四国地方で初めて「特定都市再生緊急整備地域」に指定されて以降、急速に広島市中心部の再開発が進んできました。既に竣工・開業を迎えた施設も増え、だんだんとその全貌が明らかになってきています。今回は広島市内各所で進んでいる再開発事業の中でも、「都心の東西の核」と位置付けられている「広島駅周辺地区」と「八丁堀・紙屋町地区」を中心に、現在の様子と今後の展開も併せて紹介していきます。
被爆100周年(2045年)に向けた都心の将来像
2017年3月、広島市は県と共同で策定した「ひろしま都市活性化プラン」の中で、中四国地方の中枢として、国内外から多くの人を惹きつけ、市域を超えた地域全体に活力とにぎわいを生み出し、世界に広島を発信することを目標に掲げています。広島市においては、地域創生を実現するために広島都心の中枢拠点性をさらに向上させることを条件とし、「広島駅周辺地区」と「紙屋町・八丁堀地区」を都心の東西の核と位置付け、都市機能の集積・強化を図ることにより、相互に刺激し高め合う「楕円形の都心づくり」を進めています。現に今、JR広島駅では駅ビルの建て替え工事等が、紙屋町・八丁堀地区では再開発計画が進み、既に竣工・開業を迎えた施設もあります。
目指すのは「楕円形の都市づくり」
再開発事業が進む以前の広島市中心部の建物は、老朽化が進み、建て替えのタイミングは訪れていたにもかかわらず、郊外の大型店との激しい競合の中、集客力が徐々に低下し、再開発の機運は高まらなかったといいます。そんな折、2003年に広島駅周辺地区が国の「都市再生緊急整備地域」に指定され、停滞していた駅前の再開発が一気に進行しました。その後2018年10月、紙屋町・八丁堀地区も同整備地域に指定されたことを機に、市が掲げる「楕円形の都市づくり」が急速に加速します。2020年には、両エリアの一部がさらに手厚い優遇が受けられる「特定都市再生緊急整備地域」に指定されました。中四国地方では広島市が初めてのことです。
都心の東の核・広島駅周辺地区では南北で再開発が進行
「水の都ひろしま」の玄関としてふさわしい新駅ビルが建設中
都心の東の核・広島駅周辺地区では、新駅ビルをはじめ南北共通道路開通など数年前から様々な再開発計画が行われています。玄関口となる広島駅ビルは、2021年3月に着工し、2025年春の開業に向けて着々と建設が進んでいます。同施設は、建築面積約14,000㎡、延べ床面積約111,000㎡、地上20階・地下1階建ての高層ビルとなる予定です。2階には路面電車が高架で進入する空間が設けられており、JRや新幹線への乗り換えの利便性向上が期待できます。そして、中央口改札や新幹線口改札から段差なくフラットに繋がり、駅と歩行者空間、商業施設が一体となった魅力的な空間を創出します。
新駅ビルのフロア構成
新駅ビルのフロア構成は地下1階が駐車場、1階が駅前広場、2階が路面電車乗り場、2~6階がショッピングセンター、7階がシネマコンプレックス、7・9階が屋上庭園、7~20階がホテルとなる予定です。店舗面積約25,000㎡のショッピングセンターの運営は中国SC開発株式会社、シネマコンプレックスの運営は株式会社松竹マルチプレックスシアターズが担当します。また、高層階のホテルは、JR西日本ホテルズの新規ブランド「ホテルヴィスキオ」が開業し、事業主体は株式会社ジェイアール西日本ホテル開発、運営は株式会社ホテルグランヴィア広島が担当するそうです。
国有地売却から10年、元IKEA出店予定地がようやく動き出す
再開発が進んでいるのは広島駅南口だけではありません。北口・二葉の里地区でも高さ約120m、地上34階の複合ビルの建設が計画されています。この場所は元々、北欧家具店・IKEAの出店予定地でしたが、開発を断念。IKEAから土地を取得した住友不動産が事業主となり、マンションやオフィス、ホテル、温浴施設等が複合したタワーを建設予定。2024年に着工し、2027年の完成を目指します。また、その隣地には大和ハウス工業による商業施設を併設したオフィスビルが計画されています。こちらは2024年着工、2025年完成予定です。
ひと足先に竣工・開業を迎えた広島JPビルディング
JR広島駅南口にある広島東郵便局跡地は、日本郵政の大型複合ビル「広島JPビルディング」として2022年8月に竣工し、生まれ変わりました。ビルは地上19階建で、1・2階には郵便局や店舗、3~5階は駐車場、6階はテナント専用食堂やカフェテリア、7~19階はオフィスが入っています。低層部には緑豊かな公開空地や歩行者空間を設け、滞在空間を確保することで、憩いやにぎわいを創出します。また、2025年春の新駅ビル開業に合わせ、2階部分をペデストリアンデッキで広島駅ビルと直結される予定です。
紙屋町・八丁堀地区は都心の西の核としてにぎわいを増す
観光ビジネスに拍車をかけ、世界に誇れる「まち」へ
都心の西の核と位置付けられているのは「紙屋町・八丁堀地区」。平和記念資料館や世界遺産の原爆ドームがある平和記念公園を擁する地域として、年間40万人以上の外国人観光客が訪れています。水と緑に囲まれた美しい都市景観を活かし、都市機能を充実・強化させることで、さらなる観光客とMICE(国際会議等)の誘致に向けた取り組みを推進しています。
基町相生通地区には国際的なビジネス環境を形成予定
相生通りに面した朝日会館跡地、市営基町駐車場及び中国電力基町ビル一帯で進んでいる基町相生通地区第一種市街地再開発事業では、総面積約10,000㎡の区域にオフィスやホテル等で構成される地上31階、高さ約160mの高層ビルに加え、それぞれ地上5階建ての変電所と駐輪場棟の建設が予定されています。
都市再生緊急整備地域の地域整備方針に掲げられている「国際的なビジネス環境の形成に資する高規格オフィスの実現等による業務機能の高度化」、「国内外から多くの人を惹きつけるMICE・宿泊機能や観光・文化・情報発信機能の充実・強化」、「官民連携による公共空間を活用したにぎわいと交流機能の強化」等の導入を通じ、当エリアの活性化に向け、にぎわいのある街の形成を目指しています。
相生通りの道路空間と一体的な利用が可能となるオープンスペースも整備される予定なので、居心地が良くて歩きたくなる街中の沿道空間の形成に寄与してくれそうです。高層棟及び変電所は2027年度、駐輪場棟は2029年度の竣工を予定しています。
Jリーグサンフレッチェ広島の新たな本拠地となるスタジアムが建設中
広島市中区・中央公園内で進められている新サッカースタジアムは、2023年12月末に竣工し、2024年のJリーグ開幕から使用される予定です。また先日、新スタジアムの名称は「エディオンピースウイング広島」と発表されました。収容可能人数は3万人で、多種多様なバラエティシートやVIP席も用意され、日本代表戦も開催可能な国際基準を満たしたスタジアムとなります。試合のない日でも中央公園一帯で連携したイベント等を行い、年間を通じたにぎわい創出を目指します。
2023年3月末旧広島市民球場跡地に開業したHIROSHIMA GATE PARK
広島市民にとってかけがえのない大切な場所だった旧市民球場跡地にはHIROSHIMAGATE PARK(ひろしまゲートパーク)が2023年3月31日にオープンしました。定期的に開催されるイベントを中心に様々な活動や交流が生まれ、屋外で過ごす新たなライフスタイルを育む拠点となっています。
路面電車新ルート開通で広島駅~街中がさらに身近に
先述したように、広島駅ビルの2階に電停が移設され、路面電車が高架で乗り入れます。そのため新ルートとして駅前大橋から稲荷町交差点を経て比治山町交差点まで開線され、従来ルートである広島駅~猿猴橋町~的場町間は廃線となります。電停が駅ビル内に移設されることで、JRからの乗り換え時間は約2.1分から約1.3分に短縮。八丁堀・紙屋町地区への距離は約200m、所要時間は約4分短縮されます。街中へのスムーズなアクセス性に期待が膨らみますね。開業時期は新駅ビルと同じく2025年春とされています。