道端カレン インタビュー後編(全2回)

 モデル・タレント業のかたわら、トライアスロンの国内大会で優勝するなどトライアスリートとしても活躍してきた道端カレンさん。ここ数年は、ビキニフィットネス競技に目覚め、多くのコンテストに参戦している。

 カレンさんは、芸能人であり、ふたりの息子を育てる母親であり、ボディメイクに励むアスリートでもある。「3刀流」とも言える多彩な顔を持つ、カレンさんのライフスタイルに迫っていきたい。

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【10代は無茶なダイエットの日々】

ーースポーツと健康美を極めるカレンさんですが、小さい頃からスポーツをやっていたのですか?

道端カレン(以下、同) 母親が私をモデルにしたかったみたいで、小さい頃からテニスなどの競技はさせてもらえませんでした。片手運動で右腕だけ太くなったら困るということで。全身運動の水泳は習わせてもらっていました。運動は全体的に得意でしたね。むしろ、体育くらいしかいい成績の科目がなかった(笑)。

ーーそして中学卒業とともに上京。モデル活動を本格化させます。

 1990年代のモデル業界はやせてないと使いものにならないという考え方だったから、ひたすらに食事抜きダイエットみたいな無茶をたくさんしましたね。今と違って、やせる以外にトレーニングで引き締めるという選択を日本も海外もまだ知らなかったんだと思います。

ーーその後、どのように体づくりへの意識が変化していくのでしょうか?

 25歳で息子を産んでから、食事を抜くダイエットでは10代の頃と違ってやせられなくなったんです。それで「これは運動するしかないな」と思って、ヨガを始めたり、ジムに通うようになったんです。

 ただ、その当時はまだ筋トレをしてなくて、トレッドミル(ランニングマシン)でのウォーキングやストレッチをするくらいでした。

 モデル事務所から芸能事務所に移った30歳も転機でした。モデルよりもタレントの仕事がメインになってきて、それまでは服をきれいに見せるためにやせていなきゃいけないと思っていたのが、多少は肉をつけても問題がなくなったからです。

【今が人生で一番スタイルがいい】

ーーそして、トライアスロンを始めます。

 2012年、30代前半でロタ島(北マリアナ諸島)のレースに初挑戦したのがきっかけです。本当にキツかったんですけど、ゴールした時の喜びが忘れられなくて、日本に帰ってきてすぐにスクールを探して、気がつけば何カ所も登録してました。

 筋トレもその頃から少しずつ始めるようになりました。ただ、夜のランニングや(自転車の)ローラーに影響するので筋肉痛になるほど追い込むことはしませんでした。

ーーそれまで本格的な運動経験がないにもかかわらず複数回総合優勝するなど、表彰台の常連になるのはすごいことですね。

 トライアスロンはエリートと一般でカテゴリーが分かれていて、さすがに私は一般の枠ですが、それでも表彰台に上がれるようになるまでは始めてから丸3年かかりました。

ーーそして、2021年からビキニフィットネスに注力しています。シングルマザーとして子どもふたりを育てながら、この引き締まり方は圧巻で、子育て世代のママから憧れの的になっているかと思います。

 ホントですか? それはうれしいですね。でもたしかに、今が人生で一番スタイルがいいと思っています。

 ただ、コンテスト出場者のなかには1歳の子どもがいるのにお腹がバキバキで私よりスタイルがいいママもいて本当にすごい方々ばかり。私は、次男を産んでからもう16年もたっていますからね。

【子育てしながら筋トレを続けるコツ】

ーー現在の子育ての状況は?

 長男は大学生で、次男が高校生なので、ひと段落しています。男の子の反抗期は大変ですが、休みの日に映画や海水浴などへ行ったりと、一緒に出かけることはありますよ。

ーーふだんの時間の使い方は?

 母親としてご飯をつくったりはしますけど、子どもが小さい時に比べれば、自分のために使えますね。月に数回は朝のスイムをしたり、日中の仕事の空き時間でジムに行ったり、数検(数学検定)の勉強をしたり。

ーーカレンさんに刺激を受けて、子どもたちも筋トレをしていたり?

 私は関係なしに、家にあるバーベルなどの器具を使ってふたりとも自主的にトレーニングをしてますよ。前は私が家のなかでサイクルトレーナーをしていると、「邪魔だよ」みたいな目で見てきていたのですけどね(笑)。少し前の時代と違って、筋トレの重要性は学校の部活でも認識されているみたいなんです。

ーートレーニングを始めてみたいけど、なかなか時間がとれないという子育て世代の読者にアドバイスはありますか?

 ハードルを下げるのがめちゃくちゃ大事だと思います。私はモデル時代、やせなきゃいけなくなってランニングを習慣にしようと思ったんですが、3日坊主で終わってしまった。それはちゃんとした距離を走らないと意味がないと思い込んでいたからです。

 ある時、「5分でもいいから走ろう」とハードルを下げる努力をしたんです。そうしたらいつの間にか走るのが習慣になっていました。ふたり目を産んだ時も外に出られないからと毎日3分のテレビ体操を10カ月間続けました。継続できるってとてもうれしいことで、それだけで自己肯定感がすごく上がるんです。

ーーたしかに継続することで自分に自信が持てそうですね。

 私はテレビ体操を続けただけで友達から「体形が変わったけど何かしてるの?」と聞かれるようにもなった。そういう努力によって自分が認められる体験はすごく大事で、それがあるだけで次のステップに踏み出しやすくなると思うんです。

 それに、世のなかのお母さんは家事育児に追われてすごく消耗する毎日を過ごしているかと思いますが、運動することで心身をリセットできるから、家庭を守るうえでもメリットは大きいんじゃないかと思いますね。

ーー先日、カーリング女子日本代表の藤澤五月さんがフィットネスコンテストに登場し、バキバキにボディメイクしていたことが話題になりました。あれをご覧になって感想は?

「うん、その気持ちわかるよ」と共感しましたよ(笑)。あるスポーツを熱心にやっていると、他のスポーツにも情熱を注ぎたくなるんだろうなって。

 私もトライアスロンからフィットネスに目覚めましたし、それはオリンピックでメダルを獲る人でも変わらないんですね!


前編<道端カレン「自慢の部位は肩とかお尻って言ってみたい」40代でバキバキボディを目指したワケ>を読む

写真提供/道端カレン 
撮影協力/ゴールドジム

【プロフィール】
道端カレン みちばた・かれん
1979年、アルゼンチン人の父親と日本人の母親の間に生まれる。福井県出身。中学3年の時にモデル発掘を目的とした世界的コンテストの日本代表に選出。卒業後に上京し、モデル活動を本格化させ、その後タレントとしても活躍。20代でふたりの息子を出産。30代前半からトライアスロンを始め、国内大会で総合優勝も。40代で今度はボディメイクをスタートし、2022年の「オールジャパン マスターズ フィットネス・チャンピオンシップ」(JBBF主催)女子ビキニフィットネス・40歳以上45歳未満・160センチ超級で4位入賞。ジェシカ、アンジェリカとともに「道端3姉妹」の長女。