市川市は千葉県の北西部に位置し、東京都心から約20キロメートル圏内の街です。東京湾に面し、江戸川など自然豊かな市川市は、鉄道網の形成とともに人口が大きく増加。臨海部などの産業拠点に加え、都心近接の住宅都市としても発展しています。今回は、市川市の住宅事情について紹介します。

東京都心から20キロメートル圏内 50万人近い人口を誇る住宅都市へと発展

市川市は、北は松戸市、東は船橋市、鎌ケ谷市、南は浦安市と東京湾に面し、西は江戸川を隔てて東京都江戸川区・葛飾区と相対しています。

1934年に市川町、八幡町、中山町、国分村が合併して誕生。千葉県では3番目に市制施行された歴史ある街です。その後、行徳町なども合併し、埋め立てによりできた京葉工業地帯の二俣新町や塩浜などが編入され、総面積56.39平方キロメートルの大きな街になりました。

アイアイロード市川(筆者撮影)

1894年開業の総武線に加え、1914年には京成本線、1969年に東京メトロ東西線、1978年にはJR武蔵野線、1991年には北総鉄道が開業。市川市内の広範囲なエリアが電車で結ばれています。また市内には、京葉道路、国道14号などの都市計画道路が整備されています。

行徳駅前(筆者撮影)

東京隣接という地理的条件による臨海部への企業進出や鉄道網の形成に伴い人口が増加。市政がスタートした1934年に約4万人だった人口は、2023年6月30日時点で49万2,919人へと大きく増え、千葉県の中核都市として成長を続けています。

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【市川市のデータ】
総面積…56.39平方キロメートル
人口…49万2,919人(2023年6月30日時点)
世帯数…25万5,763世帯 (2023年6月30日時点)

東京都心などを結ぶ7つの鉄道路線 駅周辺に商業施設がそろう利便性の高い街

市川市の魅力は、東京都に隣接した交通利便性の高さです。都心方面と結ばれる鉄道路線が豊富で、市川駅からはJR総武線で東京駅へ直通アクセス。乗車時間は最短で20分程度とスムーズです。市川市内にはJR総武線に加え、大手町駅へ直通の東京メトロ東西線のほか、都営新宿線、JR京葉線、京成本線など都心主要エリアへと結ばれる鉄道路線が豊富。JR武蔵野線、北総鉄道も利用できます。

市川市の鉄道と主な道路(東京外かく環状道路は2018年に整備済み)出典:市川市ホームページ

京葉道路や国道14号線などの幹線道路が整備されているほか、2018年6月には東京外かく環状道路の三郷南ICから高谷JCTまでの千葉県区間が開通。交通環境が向上するとともに、物流施設の建設が進んで配送環境が改善するなど、市川市の物流拠点としての重要性も高まりました。

市川駅北口駅前(筆者撮影)

駅を中心とした生活利便性の高さも魅力です。例えば、市川市内にあるJR総武線の各駅は、ほぼ並行して京成本線が通っていることもあり、にぎわいのある市街地が形成されています。シャポー市川やシャポー本八幡などの駅直結の商業施設のほか、商店街も駅前に広がっています。

東京メトロ東西線沿線駅の街は、区画整理された整った街区が形成され、イオン市川妙典店をはじめとする商業施設も備わっています。駅を中心とした生活関連施設がそろう暮らしやすい住環境は、市川市に暮らすメリットでしょう。

西友行徳店(筆者撮影)

豊かな自然が身近にある文教都市 夏は大きな花火大会も楽しめる

江戸川や東京湾など豊かな自然が身近にあることも市川市の魅力です。南北にのびる市川市は、梨栽培など農業が盛んな北部と、東京湾に臨み京葉工業地帯の一翼を担っている南部で街の風景も大きく異なります。さらに、東京医科歯科大学や千葉商科大学のキャンパスが国府台にあるなど、文教都市としての顔もあります。

大町公園(画像素材:PIXTA)

市川市の北部にある大町公園自然観察園は、「長田谷津」と呼ばれる豊かな自然の残る谷あいの地につくられた公園。谷の両側は緑濃い斜面林が広がっています。谷の中ほどに立つと自然に包まれる感覚を味わうことができ、四季の変化に富んだ景観を楽しめます。

国府台にある里見公園は、下総国府が置かれた政治・文化のかつての中心地。廃城になった国府台城跡にあり、約8.4ヘクタールもの園内にはソメイヨシノが植えられているほか、バラ園なども設けられています。

里見公園(画像素材:PIXTA)

行徳にある野鳥の楽園(行徳近郊緑地)は、野鳥の生息の場と緑地を保全することを目的に人工的に造成された緑地。総面積は約83ヘクタール(東京ドーム約17個分)もあります。野鳥にとって貴重な生息空間であると同時に、市民が自然と触れあう場としても利用されています。

市川市民納涼花火大会(画像素材:PIXTA)

江戸川河川敷で行われる市川市民納涼花火大会は、2023年で39回目を迎える夏の風物詩。隣接する江戸川区との共催で、開催日は多くの人出でにぎわいます。こうした四季を感じるイベントが豊富にあるのも、市川市で暮らす魅力でしょう。

市川駅の市街地(筆者撮影)

「令和2年度市民意向調査報告書(市川市)」によれば、「市川市は快適な暮らしのあるまちだと思いますか」という質問に対し、「そう思う」が15.2%、「ややそう思う」が45.5%と、多くの人が市川市を暮らしやすいと感じています。「これからも市川市に住み続けたいと思いますか」の質問に対しては、「そう思う」が33.2%、「ややそう思う」が38.4%に。住み続けたいと思う人が7割超に及びます。交通利便性に加え、にぎわいや豊かな自然がある市川市は、住拠点として魅力を感じている人が多いようです。

ここからは、市川市の住宅事情を見てみましょう。

大手町直通の東京メトロ東西線と東京駅へと結ばれるJR総武線、どちらの街を選ぶ? 

都心への通勤利便性を考慮すると、東京メトロ東西線沿線とJR総武線沿線の街がまず候補に挙げられるでしょう。東京メトロ東西線利用なら日本橋や大手町方面へ、JR総武線快速利用であれば東京駅へ、軽快にアクセスできます。船橋や津田沼、千葉など、千葉県内への移動もJR総武線沿線ならスムーズです。

行徳駅の街並み(筆者撮影)

市川市内の新築マンションの供給状況は、JR総武線と東京メトロ東西線での分譲が中心になっています。執筆時点(2023年7月25日時点)では、JR総武線および東京メトロ東西線を含む数物件の新築マンションが市川市内でラインアップ。ほかのエリア同様に供給物件数に限りはあるので、地域を絞ってマンション購入を考えるのであれば、中古マンションも併せて検討しましょう。

通勤利便性の高さから、過去にはファミリータイプのマンションが多く供給されました。そのため70平方メートルを超える3LDK タイプの中古マンションの流通も活発です。東京メトロ東西線沿線は値頃感ある物件も多く、ファミリータイプの中古マンションの中には3LDKタイプの間取りで4,000万円台の物件も豊富。価格重視で選ぶのであれば、行徳駅など市川市内の東京メトロ東西線沿線が候補に挙げられるでしょう。

行徳中央公園(筆者撮影)

一方で、JR総武線沿線は交通利便性に加え商業利便性が高く、中古マンション価格も東京メトロ東西線沿線と比べるとやや高くなります。築年数が浅い2000年代以降に竣工したマンションであれば、3LDKタイプで5,000万円台以上の予算は見ておいたほうが良いでしょう。

東西線、JR総武線いずれの沿線も東京都内と比べるとリーズナブル。予算を抑えつつ利便性を求める人には、市川市の中古マンションは狙い目と言えます。

市川駅南口(筆者撮影)

市川市内の新築戸建ての分譲は活発です。既成市街地でまとまったマンション用地が限られる中、小規模な宅地流通が中心だからでしょう。価格帯は5,000万円台のものが目立ちますが、敷地を狭くした4,000万円台購入できる新築戸建ても。バス便エリアや市川大野駅などJR武蔵野線沿線の新築戸建ての中には3,000万円台で購入できる物件もあります。中古住宅も含め、戸建てなら選択肢は豊富にあります。

次に、市川市の筆者おすすめの街を紹介します。

展望施設もある45階建て複合施設も低層住宅街も 歴史・文化を感じられる市川駅

一つ目は、JR総武線市川駅です。

市川駅の魅力は、江戸川を挟んで向かい側が東京都という東京都心への近さ。JR総武線快速で市川駅から東京駅までは最短20分以内でアクセス可能。良好なアクセスは、市川で暮らす魅力でしょう。

市川駅周辺の住宅街(筆者撮影)

駅周辺の商業施設も充実しています。駅直結の商業施設シャポー市川や、市川駅南口には複合施設「I-linkタウンいちかわ」(アイ・リンクタウンいちかわ)が立地。2棟構成で、住宅と商業施設や図書館、行政サービスセンターなどのほか、45階には展望ロビーも設置されています。駅北口にはダイエー市川店イオンフードスタイルもあり、買い物施設も充実しています。

I-linkタウンいちかわ(筆者撮影)

市川駅周辺には、高層マンションの建設が目立ちます。一方で、市川駅北側エリアに位置する真間地区は、真間山弘法寺があるなど歴史・文化を感じる場所。市川の風景は、万葉集にもうたわれたとのことです。この地域は、落ち着いた低層の住宅街にもなっています。

市川駅の住宅街(筆者撮影)

市川駅周辺では、新築マンション「パークホームズ市川真間」の販売が予定されているほか、中古マンションの流通がメインとなります。人気エリアでもあり中古マンションの中には、70平方メートル超の3LDKタイプが7,000万円台になるものもあります。築10年程度のマンション流通は限られているので、気に入ったマンションがあれば、早めの検討をおすすめします。
一方、新築戸建ての流通は活発で、駅距離や敷地面積によって価格帯もさまざまです。

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再開発が進行する本八幡駅 都営新宿線、京成本線、総武線の3路線利用可能

本八幡駅前(筆者撮影)

次におすすめするのが、本八幡駅です。

本八幡駅は、JR総武線に加え、都営新宿線本八幡駅、京成本線京成八幡駅とも近接。都心へ複数のアクセス手段があります。また、行政機能も本八幡駅周辺に集積しており、市川市役所も本八幡駅から徒歩約10分の場所に立地しています。

ターミナルシティ本八幡(筆者撮影)

本八幡は、平安時代に創建された葛飾八幡宮を中心に発展しました。いち早く市街化が進んでいた本八幡駅周辺は、北口を中心に連続的に再開発が進行。住宅棟、業務棟、商業棟の3棟からなるターミナルシティ本八幡などが再開発で整備され、便利で暮らしやすい街へと進化を遂げています。

本八幡駅の北口では、「本八幡駅北口再開発基本構想」によって今後の街づくりの方向性が示されており、「多彩な魅力あふれる 複合交流都市拠点」として今後の発展が期待できます。

本八幡駅の駅前街区(筆者撮影)

駅前には、駅直結の商業施設であるシャポー本八幡があるほか、パティオ本八幡などの商業ビルが立地。複合商業施設であるターミナルシティ本八幡アイビスには、ヤマダ電機やカスミフードスクエアも入っています。メディカルモールや商店街もあり、市川駅と同様に便利な暮らしがかなえられます。

シャポー本八幡(筆者撮影)

本八幡のマンションも人気があり、駅前のタワーマンションの中には1億円を超える価格帯で売り出されている物件も。駅徒歩10分圏で探すのであれば、中古マンションでも3LDKタイプで5,000万円以上の予算は用意したいところです。新築戸建ての分譲も活発ですが、こちらも駅徒歩圏であれば6,000万円程度の予算は必要です。本八幡駅は交通利便性が高く、再開発による開発余地もあるので、街の将来性も注目されています。

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土地区画整理事業で誕生した新しい街 江戸川が身近で大規模商業施設も立地する妙典駅

妙典駅前(筆者撮影)

三つ目は、東京メトロ東西線の妙典駅です。市川市内の市街化区域面積の2割超は、土地区画整理事業によって街区の整備が行われています。南行徳駅や行徳駅など東京メトロ東西線沿線は、土地区画整理事業が行われた街区が多く、美しい街並みが形成されています。その中でも、妙典駅は1988年から2000年にかけて約50万平方メートルという広範囲の地域で土地区画整理が行われました。

イオン市川妙典店(筆者撮影)

妙典駅は、2000年1月の開業。現在イオン市川妙典店になっている商業施設も先立って駅前に開業し、小学校やマンションも誕生しました。東西線沿線の中でも新しい街で、歩道や公園が整備された均整の取れた街並みが広がります。妙典駅から徒歩約3分のイオン市川妙典店は、1番街から3番街までの3つの施設で構成。スーパーやファッション、グルメなどの多彩なお店と、イオンシネマ市川妙典も入っています。平日のカフェも多くの人でにぎわっており、地域住民の暮らしをサポートしています。

妙典公園から見た江戸川(筆者撮影)

また、江戸川などの自然が身近にあることも妙典駅の魅力。妙典駅から徒歩約7分の妙典公園は、1.2ヘクタールもある広々とした公園。園内は芝生で覆われており、小高い丘からは見晴らしも抜群。ピクニックやキャッチボールなど、思い思いに遊べる憩いのスポットになっています。

妙典公園(筆者撮影)

妙典駅では中古マンションが住宅流通の中心で、80平方メートルを超えるマンションが5,000万円台で検討可能です。70平方メートル台の3LDKタイプなら4,000万円台の物件も。広くて手の届きやすいファミリータイプの住宅を探す人におすすめです。

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交通利便性や生活利便性が高く自然も身近な市川市ですが、留意すべきポイントは江戸川や市を横断する真間川の水害リスクです。市川市が公表しているハザードマップによれば、万が一江戸川などの洪水が発生した場合、市街地の広範囲なエリアが浸水エリアとなります。戸建てなど住宅を探す際には、事前にハザードマップをよく確認しましょう。

妙典駅の美しい街並み(筆者撮影)

市川市の拠点性は、東京外かく環状道路が開業したことでさらに高まりました。住宅だけでなく物流などの拠点としても注目されており、職住近接ニーズも今後高まりそうです。東京方面へ20分から30分程度でアクセスできるフットワークの軽快さは大きな強みです。市川市は東京通勤で住まいを探しているファミリーにおすすめしたい街です。

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