「IMGA世界ジュニアゴルフ選手権」を前に日本代表合宿が行われた。井上日本選手団団長(左)や保護者らが見守る中でショット計測する選手たち(筆者撮影)

かつて宮里藍や池田勇太、金田久美子らも出場した「IMGA世界ジュニアゴルフ選手権」が7月11日からアメリカで開催されます。日本代表選抜大会には1000人以上が挑戦。大会でシード権を取った選手を合わせて、過去最多の45人が出場します。世界ジュニアに出た選手たちはどのような進路をたどりプロの道を歩んでいくのでしょうか。(文中敬称略)

7月11日から「世界ジュニアゴルフ」が始まる

高校生以下のジュニアのゴルフで、世界を舞台にする試合は多くない。その中の1つに「IMGA世界ジュニアゴルフ選手権」がある。今年は7月11日から3日間、アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴで行われる。

世界56国、全米42州(大会HPより)からの代表が、男女別で6歳以下、7〜8歳、9〜10歳、11〜12歳、13〜14歳、15〜18歳の6つの年齢カテゴリーで争う。

日本から出場するには、2〜4月に行われる「PGM世界ジュニア日本代表選抜大会」という予選会で代表権を手にするか、アメリカ各州などで行われる予選に出場して代表権を取るしかない。

日本からの出場希望者が少なかった頃は、サンディエゴ・ジュニアゴルフ協会に直接申し込めば出場できた。かつては宮里藍や池田勇太も出場している。昨年女子ツアーで復活優勝した金田久美子は8歳から5回優勝して「天才少女」と言われた。

2011年から日本代表選抜大会で日本代表を選出する方式になり、今年は全国で1000人以上が挑戦した。この大会で日本代表になれるのは低年齢カテゴリーで6歳以下男女各1人、7〜8歳、9〜10歳、11〜12歳で男女各2人、13〜14歳、15〜18歳の高年齢カテゴリーは男女各4人で計30人。狭き門だ。

今年の日本代表選手団は、前年までの大会でシード権を取った選手を合わせて、過去最多の45人になった。将来性豊かな選手たちだ。

日本代表選抜大会から世界ジュニアに出場した選手で、現在男女ツアーや海外ツアーで活躍している「世界ジュニアOB・OG」は多い。

男子では、2017年に15〜18歳の部で出場した河本力、中島啓太が男子ツアーで勝利を挙げ、中島は現在賞金ランクトップに立っている(7月2日現在)。2011〜2013年の低年齢カテゴリーに加えて2018年に15〜18歳の部で出場した蟬川泰果は、東北福祉大時代にアマチュアで日本オープンを制し、今年はプロとしてツアー勝利を飾った。

男子の場合、高校生までのジュニア時代を卒業後は大学進学という選手が多いが、大学在学時、卒業後すぐにプロで結果を出しているOBがいる。

女子はツアー全体が低年齢化していることもあり、世界ジュニアOGたちはジュニアを卒業後すぐにプロ入りし、活躍しているケースが多い。

畑岡奈紗、笹生優花も出場

その筆頭が2014〜2016年に15〜17歳の部(当時)に出場し、2015、2016年と世界ジュニア2連覇を果たした畑岡奈紗。そのときの世界ジュニアでのライバルは当時フィリピン代表で出ていた笹生優花で、ともにアメリカ女子ツアーで戦っている。

畑岡と同時期に世界ジュニアに出た永井花奈、蛭田みな美らが日本ツアーで活躍しており、ほかにも2016年に13〜14歳の部で5位に入った西郷真央、2017年に15〜18歳の部に出場した吉田優利など、日本女子ツアーの中心選手になっている。

世界ジュニアに出場したからといって、その後日本で、世界で、結果を残せるわけではない。ただ、ほとんどの選手にとって初めてとなる海外での試合、コースの体験ができ、世界には同世代にどんな選手がいるかを知ることもできる。また、縦のつながりもでき、先輩から後輩へ精神面や技術面も伝わっていくなど、この世代にとって貴重な経験が、その後に生きているといえるだろう。

日本代表選抜大会の出場選手に毎年配布されるパンフレットに、先輩たちからエールが送られている。

畑岡は「世界ジュニアはいろいろな国の人が出場しています。もしかしたら将来戦う選手がいるかもしれません。私も初めて優勝したときに争った選手が今は友達です。世界ジュニアは友達を作るチャンスでもあるし、今自分に何が足りないかを知る大会でもありました」と記している。

蟬川は「(10歳で)初めての海外で、いい緊張感と、試合への向かい方もよかった。世界で6位になって注目を浴びて、夏の日本の試合に出ていくときにすごくプレッシャーを感じたことを覚えています。勝ちたかったんですけど勝てなくて、悔しい思いを今も鮮明に覚えています。悔しい思いが糧になっている部分もあるので、今のゴルフ人生を支えているのは世界ジュニアだと思います」と述懐している。

今年も将来楽しみな選手たちが、関門を突破して世界の舞台に立つ。数年先には日本の男女ツアーや世界で活躍しているかもしれない13〜14歳の部、15〜18歳の部の選手たちの名前を最終ページでまとめた。頭の片隅に覚えておいても損はない。

ジュニアでもかなりレベルが高い

大会を前に6月10、11日の両日、埼玉・クリアビューGC&ホテルで日本代表合宿が行われた。代表のうち、初出場の選手たちを中心に30人が参加した。ゴルフは個人競技ではあるが、合宿で年齢や地元の違う選手たちが一緒に回ってチームという意識を高めることと、各自の今のスイングについてのデータを計測することが主な目的だった。


パットラボで計測する上村大和(左)と小林翔音(右)

ショットに関連して弾道測定器「GCクアッド」と、体重移動の状態を可視化する「FEELSOLE」という足底圧測定器、パッティングでは「パットラボ」と3つの機器を使用した。


井上団長や保護者が見守る中でショット計測を行う選手たち(筆者撮影)

個々の数値は公表できないが、日本選手団派遣を行う国際ジュニアゴルフ育成協会(IJGA)代表理事の井上透プロは「ショットは軌道、フェースの向き、打点の3要素が数値化され、パッティングでは一番大切な(インパクトでの)再現性などをチェックできます」といい、今回の代表の数値について「この範囲に入っていればというゾーンにみんな入っている。13〜14、15〜18の選手はもれなく上手」と、数値的にもスキルの高さを認める。

低年齢カテゴリーの選手も入れると、北海道から沖縄まで、全国各地から日本代表になった選手たち。皆さんの故郷から世界一になる選手が出てくるかもしれない。



将来性豊かな選手たち



(赤坂 厚 : スポーツライター)