フォードは中国市場にEVも投入しているが、売れ行きは芳しくない(写真は中国法人のウェブサイトより)

アメリカ自動車大手フォード・モーターの中国法人(フォード中国)では、2023年5月頃から人員カットの噂が絶え間なく流れている。直近では技術開発センターである福特汽車工程研究南京とスマートEV(電気自動車)の研究開発拠点の福特電馬赫科技南京について、社員解雇の情報が駆け巡った。

そんななか、フォード中国は6月14日、人員カットの噂を事実上認めるコメントを発表。「中国は極めて重要な市場だ。中国事業の持続可能な発展をゆるぎなく推進するという、当社のコミットメントに変化はない」と強調したうえで、背景を次のように説明した。

「合弁事業のパートナーとともに、中国市場における(販売車種の)EVシフトの加速と、輸出事業の強化を図る。この新戦略を効果的に実行するため、組織をよりシンプルで柔軟なものにしていく。その過程で(組織内における)既存のポジションの一部が影響を受けるのは避けられない」

フォード中国のリストラ実施は、業界関係者の間では早くから予想されていた。同社はピークの2016年に中国市場で127万台を販売したが、2022年の販売台数はその4割弱の49万6000台に減少。中国事業の損益は6億ドル(約844億円)の赤字に転落していたからだ。

外資系メーカーに共通の問題

「今後は中国市場への投資額を減らすとともに、利益率の高い事業に集中する。具体的にはSUVと(ピックアップトラックなどの)商用車を販売の中心に据え、同時に中国の工場をエントリークラスのEVやエンジン駆動の商用車の輸出拠点に育てていく」

フォード本社のジム・ファーリーCEO(最高経営責任者)は、5月2日に開催した2023年1〜3月期の決算説明会でそう方針を述べていた。

中国市場におけるフォードの苦況は、同社以外の多数の外資系メーカーに共通する問題だ。中国市場では世界に先駆けて急速なEVシフトが起こり、エンジン車の市場は縮小の一途をたどっている。そんななか、外資系メーカーは(中国メーカーに比べて)対応が後手に回り、販売台数の激減に直面している。


本記事は「財新」の提供記事です

例えば、韓国の現代自動車(ヒョンデ)と中国の北京汽車集団の合弁会社である北京現代汽車の販売台数は、2022年は28万4000台と前年比25.6%も落ち込んだ。同社の販売台数のピークは2016年の114万台であり、6年で約4分の1に縮小した格好だ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は6月16日

(財新 Biz&Tech)