パソコン作業の効率化をはかる「ショートカットキー」を一気に覚える方法とは(写真:prathanchorruangsak/PIXTA)

耳馴染みのない専門用語、難解な公式、膨大な英単語、数分間のスピーチ原稿やプレゼンの台本、複雑な歌詞やセリフ、何人もの顔と名前……。

大量に覚えなければいけない課題やテキストを前に圧倒され、絶望した経験が皆様にもあるかもしれません。そんな方にオススメしたいのが「A4・1枚記憶法」

A4・1枚の「魔法のシート」に書くだけで、覚えにくいものも大量に記憶できる画期的なメソッドです。

考案したのは、記憶力日本一を6度獲り、日本人初の「世界記憶力グランドマスター」の称号を得た池田義博氏。

池田氏は、40代半ば「ド素人」の状態からたった1年で記憶力日本一になりました。

その体験から生まれた「超効率的なシート学習法」をまとめたのが新刊『まるごと覚えて 頭も良くなる A4・1枚記憶法』で、同書は発売後たちまち重版がかかるなど、大きな話題を呼んでいます。

以下では、その池田氏が「ショートカットキーの覚え方」について解説します。

ショートカットキーはイッキに覚える

今の時代、Web上には便利な情報が溢れています。ほぼ無料で有益な情報を集め放題なのですから、ありがたいことです。

とはいえ、あなたはそれらを確実に血肉化できていますか?


たとえば便利なノウハウを集めたサイトを見つけたとき。「お気に入り」「ブックマーク」に登録をしたまま、その存在を忘れていませんか?

「時間ができたら、ゆっくり見よう」「余裕のあるときに、腰を据えて読み込もう」。このような「先延ばし思考」は私にもよくわかります。

ですが現役で何らかの活動をしている限り「余裕のあるとき」はなかなか訪れないでしょうし、仮にゆとりが生まれたとしても、すでに別のことに興味が移っている可能性は高いもの。

ですから「いい情報を見つけた!」と感情が動いた瞬間に、その勢いで記憶をできると理想的です。

「簡単に覚えられれば苦労しない」

そう反発したくなる人も多いかもしれません。ですが感情が動いた直後は、通常よりも記憶をしやすくなっています。

なぜなら脳には、感情が動いた記憶ほど残りやすいという性質があるからです。

脳は、感情が伴った情報を優先して記憶するため、「これ使えるかも」と思ったときに学習すると、強く反応してくれます。

「感情が動いた直後」が難しければ、せめてその日のうちに記憶をしてしまうことをおすすめします。

ここでは、先延ばしにしがちな「パソコンのショートカットキーの覚え方」をお話ししましょう。

ショートカットキーといえば、誰にとっても有益な時短術のひとつ。

記憶の仕方とともに、パソコンスキルも更新させましょう。

それも3つや4つを覚えるのではなく、イッキに20個、大量に覚えてしまいましょう(パソコン操作に詳しい方は、おさらいの意味でお付き合いください)。

「ラク・手間」という二分割法

では、いったいどうすれば、大量の事柄を気軽に、そして確実に覚えられるのでしょうか。

秘訣は、まず「覚えたいこと」の全体を「ラクに覚えられること」「ちょっと手間なこと」の2つに分けることです。

自分が「これから注ぐであろう労力の差」によって、全体を区分けします。そして「ラクに覚えられること」はできる限り早めに記憶し、残りのリソース(時間、体力、気力)を「ちょっと手間なこと」に集中して注ぐのです。

そのような分別をせずに、全ての事柄を同じような熱量で覚えようとするのは非効率です。

いったいどういうことか、実際に見ていきましょう。今回は「ショートカットキーの表」を覚えようとするとき、どうすれば効率よく覚えられるかを見ていきましょう。

まず表の全体に目を通し、すぐに覚えられそうなものをピックアップします。ここでは便宜上、私の主観で進めていきますね。

また下の表を見ていただくとわかりますが、ショートカットキーの多くは「Ctrl」「Win」を押しながら「ほかのキーを打つ」というパターンになっています。

さらに細かく見ると「Ctrl」は、狭い範囲、「Win」はパソコン全体にまつわる指令が多いと読み取れます。

ですから覚える際は、「ほかのキー」に注目をして記憶をすればよいのです。

ショートカットキー(Windows用)一覧

全てのテキスト(セル)を選ぶ…Ctrl + A
印刷プレビューを表示する…Ctrl + P
選んだ範囲をコピーする…Ctrl + C
選んだ範囲を切り取る…Ctrl + X
選んでコピーし、切り取ったデータを貼る…Ctrl + V
ファイルを保存する…Ctrl + S
複数開いたウィンドウを切り替える…Alt + Tab
(複数のアプリケーションを同時使用中に便利)
画面を最大にする…Win + ↑
画面を最小にする…Win + ↓
直前の操作をキャンセルする…Esc
直前の操作を元に戻す…Ctrl + Z
元に戻した直前の操作をやり直す…Ctrl + Y
 取り消した直前の操作を再び行なう

(操作を直前に戻したが、操作内容に問題がない際に便利)
「ユーザー辞書」に単語を登録する…Ctrl + F10
(単語を選んだ状態で押すとIMEのメニューが現れる。
そこから「単語の登録」を選び登録)
調べたい単語を検索する…Ctrl + F
デスクトップを表示する…Win + D
(開いているウィンドウを閉じずにデスクトップを表示できる。
再度押すと、元に戻る)
パソコンをロックする…Win + L
ファイルやフォルダの名前を編集する…F2
(ファイルを選んだ状態で押すと、編集できる)
ウィンドウを新しく開く…Ctrl + N
Webページを閲覧時、最新状態に更新する…F5
Webページを閲覧時、URLバーに移動して検索する…Ctrl + L

※Windows用のショートカットキーです。

あくまで私の場合ですが……この表のうち「ラクに覚えられること」は次の11個です。

英単語の頭文字がフックになる

◆全てのテキスト(セル)を選ぶ…Ctrl + A(「all」のAで覚えられる!)
◆印刷プレビューを表示する…Ctrl + P(「preview」のPで覚えられる!)
◆ファイルを保存する…Ctrl + S(「save」のSで覚えられる!)
◆選んだ範囲をコピーする…Ctrl + C(「copy」のCで覚えられる!)
◆画面を最大にする…Win + ↑(大きくするから「↑」で覚えられる!)
◆画面を最小にする…Win + ↓(小さくするから「↓」で覚えられる!)
◆直前の操作をキャンセルする…Esc(「escape=回避」のEscで覚えられる!)
◆調べたい単語を検索する…Ctrl + F(「find」のFで覚えられる!)
◆デスクトップを表示する…Win + D(「display」のDで覚えられる!)
◆パソコンをロックする…Win + L(「lock」のLで覚えられる!)
◆ウィンドウを新しく開く…Ctrl + N(「new」のNで覚えられる!)

こうなると、「ちょっと手間なこと」残りの9個です。この9個の情報を、頭に入れやすいように加工していきます。

覚えたい事柄と感情を紐付けるために、技術を使うのです。平たく言うと「覚えたい内容」をイメージ化、エピソード化(物語化)したりして、脳に強烈なインパクトを与えることです。

そのイメージ化は荒唐無稽でも、自分しかわからないものでも大丈夫

誰かがつくったイメージよりも、パーソナルなイメージのほうが、より強烈なインパクトを脳に刻むことができます。それを自己生成効果と呼びます。他人が行うより、記憶する本人が情報の加工を行うほうが記憶テストの成績が高くなる傾向があることがわかっています。

ですから、安心して自由に発想をしてください。次のようなやり方に沿って、あなた自身でイメージを加工してみてください(下記はあくまで一例です)。

覚えにくいものはイメージに変換を

◆選んだ範囲を切り取る…Ctrl + X(Xの形がハサミみたい=「切る」と覚える)
◆選んでコピーし、切り取ったデータを貼る…Ctrl + V(「データを貼れて嬉しくてVサイン」しているイメージを覚える)
◆複数開いたウィンドウを切り替える…Alt + Tab(「窓の切り替えは『折るとタブー』」と覚える)
◆直前の操作を元に戻す…Ctrl + Z(「Z世代に操作を戻してもらう」と覚える)
◆元に戻した直前の操作をやり直す…Ctrl + Y(「ワイワイやり直し」と覚える)
◆「ユーザー辞書」に単語を登録する…Ctrl + F10(「BMW5シリーズF10型に乗って単語を登録する」と覚える)
◆ファイルやフォルダの名前を編集する…F2(「2」の形=白鳥のイメージから「白鳥の名前を編集する」と覚える)
◆Webページを閲覧時、最新状態に更新する…F5(「5」の音=ゴリラから「最新のゴリラを鑑賞する」と覚える)
◆Webページを閲覧時、URLバーに移動して検索する…Ctrl + L(「Lサイズの服を着て移動する」と覚える)

「Z世代に操作を戻してもらう」など、字面だけ見ると「なんのこっちゃ!?」と感じる人がほとんどでしょう。ですが、それがあなた自身から出たフレーズである場合は、記憶がしっかりと固定されます。また、ビジュアルでイメージすると、より強固に定着します。

頭から順番に覚えなくてもいい

どうでしょう、20ものショートカットキーをあっという間に覚えられました! 

このように大量に暗記をしたい場合は、初期の段階で「ラクに覚えられること」「ちょっと手間なこと」分ける作業が大事です。

そのような情報の選別から、覚えることはすでに始まっているとも言えます。「頭から順番に覚えていこう」とする癖のある人は、「ラク・手間」という二分割法を一度試してみてください。

またどんな人でも、この二分割法を活用すれば「大量暗記」への心理的なハードルを下げられますよ。

(池田 義博 : 記憶力日本選手権大会最多優勝者、世界記憶力グランドマスター)