ビジネスでのSNS運用がうまくいかない人が陥りがちな「4つのNG」を紹介します(写真:takeuchi masato/PIXTA)

広報・マーケティング・営業・人材採用... これらのビジネス活動に、もはやSNSの活用は外せない時代になったともいえる。

しかしながら、「自分勝手な」SNSの使い方を続けていると、運用が伸びるどころか個人や企業のブランドにとってマイナスになってしまうこともある。

「SNSの運用や発信がうまくいかないケースには、共通するNG事項が見られます」と、『LinkedIn(リンクトイン)活用大全』の著作がある松本淳氏は言う。

その松本氏が「嫌われる人が『SNS発信』でやりがちな4つのNG」について解説する。

「SNS発信が続かない人・伸び悩む人」が増えている

自分の仕事に役立てるため、さらにはセルフブランディング強化のためにSNSを運用することは今や普通のことになりました。

筆者のまわりでも、あらためてきちんとSNSに取り組もうとするビジネスパーソンは着実に増えています

長らくの間、日本国内においてビジネス活用のためのSNSといえばFacebookが定番でした。

しかしながらその後、TwitterやInstagramを仕事に使うことも一般的になりましたし、さらには動画や音声の各種SNSの活用も進んでいます。

さらに最近では、グローバルではスタンダードになったビジネスSNSであるLinkedIn(リンクトイン)も、国内においての普及が着実に進みつつあります。

しかしながら一方で、張り切ってSNSを始めてみたのはいいものの、どのように使えばいいのかわからない伸びなくて悩んでいる、あるいは「NG的な投稿」ばかりで"嫌われている"という人も少なくありません。

その結果、運用が続かずに途中であきらめてしまう人自分の印象をかえって下げている人も一定数います。SNSのキモは「継続」であり、続かずに挫折してしまうことはそれまでの時間をムダにしかねない最大の失敗だともいえます。

筆者は、これまで多くの企業や経営者のブランディングや発信活動をサポートしてきましたが、うまくSNSを運用できない、がんばっているのにリアクションやフォローが増えないという結果には「ある共通する原因」があると感じています。

今回は、SNS運用がうまくいかない人、その投稿が嫌われる傾向にある人が陥りがちな「4つの共通NG」について考えていきたいと思います。

1. 宣伝投稿ばかりしてしまう

「さあSNSで自社のサービスの認知度を上げるぞ」と意気込むのはいいのですが、投稿する内容といえばひたすらに自分が宣伝したいことばかりというアカウントは少なくありません

投稿履歴を見ると、自社のサービス説明やイベントの案内だけがずらりと並んでいます。そしてそれらの投稿にはほとんど「いいね」などのリアクションも付かず、ただ寂しい雰囲気が漂うばかりです。

たんなる宣伝や自分が言いたいことだけの投稿に終始するのは、SNS運用の失敗の典型だといえます。

反応や効果が少ないからといって投稿数をもっと増やさねばとがんばりますが、いくら数だけを増やしても効果は上がりません。

「企業の公式アカウント」でよく見られるNG

これは、企業の公式アカウントにとくによく見られます。公式アカウントは自社のサービスを知ってもらうことが目的だと意識するあまり、どうしても一方的な宣伝ばかりになりがちです。

これが、公式アカウントの運用が難しい理由のひとつです。

宣伝のみしかしないSNSアカウントをフォローするのは、会社の関係者やコアな既存ユーザーだけです。これでは、「まだ見ぬ新たなファン」を増やすことは難しいでしょう。

個人アカウントでも、企業公式アカウントでも、SNS運用において大事なのはまずは「Give精神」のある発信を心がけることです。

「また見たくなるような投稿」を続けることにより、少しずつリアクションやフォロワーも増えていくでしょう。

2. 借りてきたような一般論に終始する

宣伝だけではなく、読んでくれる人たちに喜ばれる情報を発信することが、伸びるアカウントを目指すための第一歩です。

しかしながら「有益な」投稿をしようと意識するあまり、うまくいかないケースもあります。

SNS運用でリアクションやフォローが増えない理由の1つに、発信内容が、「ごく一般的な情報や、ありきたりな教訓」になってしまっている場合があります。

たとえばニュース記事をシェアできるのもSNSの重要な機能ではありますが、いつもニュースの引用だけで、自分のオリジナルな意見がない投稿ばかりだと読む人にどう思われるでしょうか。

情報のシェア自体にも意義はあるとはいえ、それしかしないSNSアカウントをフォローする人は多くありません。

よっぽどのレアなキュレーション力があるならともかく、たんなるありきたりの引用のみではそのアカウントの価値を感じられないからです。

「見た目が有益」な情報を増やしてもダメ

また、「ビジネスあるある」な教訓やハック術だけを延々と流し続けるアカウントも同様です。

「マーケティングとは 〜 あるべき」とか「経営とは 〜 あるべき」などのような、SNSではどこでもよく見られるような陳腐な内容のことです。

独創性が高い発信内容であれば価値はあります。しかしながら借り物や、ワンパターンで押し付けがましい教訓をありがたいと思う人は多くありません。

もっともらしい「見た目が有益」な情報を、いくら数だけ増やしてもダメなのです。

投稿で最も大切なのは「その人らしさ」です。型にはまった教科書的な有益性よりも、「現場の生の声」「自分自身のユニークな考え方」にこそ価値があるのです。

個性のない、数や量だけの発信は印象に残りません。発信者の考えや想いを知ることにより、「もっと交流してみたい」と思ってフォローしてくれるのです。

そしてこれが、セルフブランディングへの第一歩だともいえます。


SNS投稿をマッピング。縦軸の「有益性」を意識しただけでは「有益だが一般論」に留まり記憶に残らない。横軸の「自己開示/具体的」という要素こそが重要(出所『LinkedIn(リンクトイン)活用大全』)

3. 「自分だけ」の一方通行な発信のみ

「では、自分のオリジナリティーや個性を存分に打ち出して投稿しよう」と意識し、うまくやれたとしても、まだ理想的なSNS運用に届いていないかもしれません。

それは、「オレがオレが」と、自分の発信ばかりに力を入れ、独りよがりになってしまっている場合です。

現実世界でも、人の話を聞かず、自分の話しかしない人は好かれません。それはSNSの世界でも同じです。

SNSでは、気合を入れてがんばろうとする人ほど、自分の発信だけに力を入れがちです。

他者の投稿には興味を持たず、相互コミュニケーションではなく、たんなる一方的な発信に終始してしまうのです。

SNSは「アルゴリズム」によって動いている

そしてこれは、たんに人から「好かれる」「好かれない」という話ではありません。

SNSの世界は、アルゴリズムによって動いています。あまりにアルゴリズムを意識しすぎるのもよくないでしょうが、やはり最低限は押さえておかないと、ムダな時間を多く使ってしまうことになりかねません。

SNS運営会社の立場に立ってみれば、「他者に貢献し、場を盛り上げてくれるユーザー」はありがたいものです。そういったアカウントが伸びて、より大きな働きをしてくれるようにアルゴリズムを調整します。

だから、他者に対し、積極的にリアクションやコメントを付けるアカウントには「ボーナス」が与えられるのです。

たとえばシンプルな例をあげると、AさんがBさんに「いいね」をすると、その後、BさんのタイムラインにAさんの投稿が多く表示されることになります。これが「ボーナス」の一例です。


SNSのアルゴリズムの一例。AさんがBさんに「いいね」をすると、その後、BさんのタイムラインにAさんの投稿が多く表示されることになる

このように、SNSには「他者に貢献すればするほど、自分にもベネフィットが返ってくる」というロジックが組まれています。

実社会の人間関係においても「TakeよりもまずはGiveする」精神が重要だといえるでしょう。SNSの場合は、それが理想だということにとどまらず、実際の仕組みがそのようになっているのです。このことは、ほとんどのSNSプラットフォームに共通する方針です。

その意味では、SNSアルゴリズムとは結局、自然の摂理や人の社会のあり方をロジック化したものにすぎないともいえます。

人が集まるコミュニティーにおいて、常識的かつ好ましい行動を続けると、そのぶん正しく評価され、信頼もされるということです。

4. いきなりDMで営業してしまう

SNSをビジネスに活用するためには、「外側」の動きである投稿や交流の質を上げることが重要ですが、一方で「内側」かつ1 to 1のアクションとしてDMを活用することも大切です。

しかしながら、このDMの活用について、よくない事例を見ることが多くあります。それは他者との関係性が構築できていない状況において、いきなり営業色の強いDMを送り付けてしまうことです。

LinkedInやFacebookにおいては、フォロー機能以外に「つながり申請」「フレンド申請」の機能があり、他者と「知り合いとしてつながる」ことができます。

このときに割とあるのが、他者からのつながり申請を承諾した瞬間に、テンプレのような営業DMが送られてくることです。

そのようなDMを送る側としては、テレアポの延長の感覚でやっているのかもしれません。膨大なリストを元にひたすらアポイントの電話をかけ、相手が反応してくれたらすかさず売り込みやアポイント依頼をしてしまう。

これは、組織的に行われているケースも多いようです。このようなDMを送ってくる人の所属社名を見ると「またあの会社か……」ということがよくあります。

そのようなマイナスの情報はSNS中に広がりますし、たんに会社のイメージを悪くするばかりで、営業的な効果もほとんどありません

「焼き畑」型のDM、やってませんか?

SNSで何かを提案するためにDMを送る際には細心の注意が必要です。

テレアポのような「焼き畑」型のアクションは、SNSにおいては履歴として残ってしまいます。その結果、個人や法人としてのブランドを毀損してしまうことになりかねません。


また、SNSの個人アカウントは、いずれ自分が転職・独立したとしてもずっと自分のものです。

それは自分の「分身」だともいえるくらいの存在かもしれません。それほど大切なものが、多くの人から悪く見られてしまうとしたらどうでしょうか?

SNSでは、長期的な信頼構築や交流が重要です。

そのことを肝に銘じ、他者との関係においては、できるだけプラスになるようなDMの送付や1 to 1のコミュニケーションを心がけることこそが大切だと思います。

(松本 淳 : アースメディア代表取締役CEO)