6月4日からヨーロッパ遠征を行なっていたU−22日本代表が、遠征最後の実戦となるオランダとの親善試合を行ない、0−0で引き分けた。

 中立地のオーストリア・ウィーナーノイシュタットで行なわれたとはいえ、日本から見ればヨーロッパに乗り込んでの試合である。しかも、相手は若手の育成に定評のあるヨーロッパ屈指の強豪国であり、2000年生まれの選手も含む、年齢的には格上のU−23代表だった。

 加えて、内容的に見ても、多くの決定機を作り、よりゴールに近づいていたのは日本のほうである。

 こうしたさまざまな条件を考慮すれば、十分評価に値するスコアレスドローだったと言っていいだろう。


強豪オランダと引き分けたU−22日本代表

 とりわけ守備面は、非常に強度の高いプレーを連続して行なうことができており、いい位置でボールを奪って速い攻撃につなげる。そんな小気味いい展開が何度も見られた。

「守備のところでは非常にアグレッシブにやっていた。チームとしてスタンダードが上がった」

 試合後、大岩剛監督もそう話しているとおりだ。

 しかし彼らは、まだ年代別の日本代表であるとはいえ、すでにその最終段階のU−22代表である。

 だとすれば、彼らはまもなくA代表に入ってくることが期待される選手であり、彼らに求められているのはA代表基準、すなわちワールドカップでのベスト8進出を狙うにふさわしいプレーということになる。

 そうなると、強豪国相手に善戦したからといって、高い評価を与えられている場合ではない。むしろ、ここであぶり出された課題にこそ、より一層光を当てるべきなのだろう。

 ならば、彼らのどんなプレーに課題があったのか。

「守備のところ」については選手たちを称えた指揮官も、前述のコメントに続けてこんな話をしている。

「もっともっと自信を持ってボールを動かすところ、(それを)やり続けるところをもっと前半から出せれば、もっともっと1試合の評価が高くなるんじゃないかと思う」

 つまりは、ビルドアップ。このチームもまたA代表同様、ボールを保持した時のプレーにまだまだ問題を抱えているのである。

 背番号10を背負い、攻撃の中心を担うMF鈴木唯人が厳しい言葉を口にする。

「単純にみんなが前を見ないので、(ボールを)下げることがセオリーになってしまっているし、下げることがいいプレーみたいな感じに、感覚としてなっている。もっと前を見ることが必要だし、前にプレーすることが絶対的に必要だと思う」

 すでに記したように、日本はいい守備ができていた時(とりわけ、高い位置でボールを奪った時)に、いい攻撃につなげることができていたのは確かだ。

 いい攻撃とは、すなわち、縦に速い効果的な攻撃と言い換えてもいいだろう。

 だが、裏を返せば、ひとたび低い位置でボールを持たされてしまうと、なかなか攻撃がスピードアップせず、効果的な攻撃につなげられない。鈴木唯のコメントにもあるように、ボールを大事にしていると言えば聞こえはいいが、横パスやバックパスばかりが目立ち、なかなかボールを前進させられなかった、とも言える。

 堅守からの速攻ならチャンスは作れるが、ボールを持たされるとチャンスメイクがままならない。これでは、ドイツやスペインに勝ってもコスタリカに負けてしまう、カタールでのA代表を見ているかのようだ。

 鈴木唯の辛辣な指摘は続く。

「安パイにサッカーをしているってことだと思う。それが日本のサッカー。Jリーグとかを見ていれば、そんな感じなのかなと思う。目的はゴールをとることなので、決して(パスで)ボールを何本つないだところで点は入らない。無理に(縦パスを)蹴ろとは言わないが、そういうところが必要なのではないか」

 90分を通してみれば、まったく効果的な縦パスが入らなかったわけではないし、遅攻から相手ゴールに迫れなかったわけでもない。

 しかし、だからといって、鈴木唯の言葉が厳しすぎるとも思えない。スタンドから試合を見ていて、そこでバックパスしてしまうのかと、ガッカリさせられたシーンは、一度や二度ではなかったからだ。

 そうしたプレー選択の拙さには、試合勘の不足も少なからず影響しているのだろう。

 自らもストラスブールでなかなか出場機会を得られていない鈴木唯は、「自分のところでミスが多かった」と自戒の言葉も口にしつつ、こう語る。

「(所属クラブで)試合に出続けている選手は正直、あまりこのチームにはいない。そのなかでも、もうちょっとみんなが試合のなかで感覚を取り戻してうまくできればよかったが......」

 本来なら、選手それぞれが所属クラブで実戦経験を重ねることによって、相手のプレッシャーにも慣れ、安全第一を優先させるだけでなく、多少のリスクを背負いながらのプレー選択もできるようになっていくものだろう。

 ところが、このチームの選手の多くは、残念なことにその機会を得られていない。大岩監督が語る。

「(所属クラブで日常的に)ゲームにグッと入れていない選手が多いなかで、90分という試合時間をどうマネジメントするかというところを、自信を持ってできていない選手たちも何人かいる。そういう部分では日常が大事なのかもしれない」

 昨秋来ヨーロッパ遠征を繰り返すなかで、チームは着実に戦える集団へと成長してきているのは間違いない。

 だからこそ、鈴木唯が「組織としてはできるんじゃないかなと思うので、個人個人のところで優位性を持ってできれば、全然試合を支配することはできるっていう感覚はある」と話しているように、あとは選手個々のレベルアップというところにフォーカスしていかざるを得ないのだろう。

 日本サッカー(Jリーグのサッカーと言ってもいい)が抱える根本的な課題と、選手個々が解消すべき課題。

 U−22日本代表がもう一歩前に進むため、越えなければならないハードルである。