◆2023年女子ツアー「メルセデスランキング」
(リシャール・ミル ヨネックスレディス終了時点)
1位 山下美夢有
2位 申 ジエ
3位 岩井明愛
4位 穴井 詩
5位 岩井千怜
6位 吉田優利
7位 川岸史果
8位 上田桃子
9位 吉本ひかる
10位 ささきしょうこ

◆2022年女子ツアー「メルセデスランキング」
(リシャール・ミル ヨネックスレディス終了時点)
1位 西郷真央
2位 稲見萌寧
3位 山下美夢有
4位 高橋彩華
5位 堀 琴音
6位 小祝さくら
7位 菅沼菜々
8位 青木瀬令奈
9位 西村優菜
10位 植竹希望

 今季の日本女子ツアーはおよそ3分の1を早くも消化したが、リシャール・ミル ヨネックスレディス(14試合)終了時点の『メルセデスランキング』を見てみると、昨季の同じ時点とはベスト10の顔ぶれがガラッと変わっていることがわかる。昨季も今季もベスト10に名前があるのは、山下美夢有だけである。

 ここ十数年来、若手選手の台頭が著しく、選手層が厚くなっているとはいえ、これほどトップ選手の入れ替えが激しいのは、驚きである。そこには、何かしらの理由があるのだろうか。永久シード保持者の森口祐子プロに話を聞いてみた――。


飛距離を武器に今季、早くも2勝目を挙げた岩井千怜

 ひとつの要因として、試合会場となるコースが飛距離を求めるセッティングになっている、ということが挙げられます。

 たとえば、5月のブリヂストンレディス。今年は中京ゴルフ倶楽部 石野コースで開催されましたが、同コースで行なわれた前回の2021年大会では6486ヤードだったのが、今年は6573ヤードに設定されました。そのため、前回はパー5(504ヤード)だった13番をパー4(443ヤード)にしたり、他のパー4でもバックティーを使用したホールを設けるなどして、トータル100ヤード近く距離を伸ばしたのです。

 そのうえ、パー72だったのをパー71にしているので、選手にとって、距離的な負担はかなり増えました。ですから、飛距離のアドバンテージを持っている選手が有利になっていることは間違いありません。

 実際、昨季の同時期のメルセデスランキングのトップ10入りしている選手のなかで、年間のドライビングディスタンスの最上位は1位の西郷真央さんで、19位(243.63ヤード)でした。それが今季は、現時点(6月11日現在)のドライビングディスタンスで上位に入っている選手が、メルセデスランキングのトップ10に数多く名を連ねています。3位の岩井明愛さん(ドライビングディスタンス9位/251.47ヤード)、4位の穴井詩さん(同1位/257.47ヤード)、5位の岩井千怜さん(同7位/252.98ヤード)らがそうです。

 私の感覚では、昨季は平均飛距離が235〜245ヤードあたりの人が戦えるセッティングだったのが、今季は平均245〜250ヤードくらい飛ぶ人じゃないと、厳しいようなセッティングになっている印象があります。昨季と今季のメルセデスランキング上位の顔ぶれを変えた、大きな要因のひとつになっているのではないでしょうか。

 メルセデスランキングのベスト10だけでなく、ベスト50位以内の顔ぶれを見ても、飛距離のある選手が目立つようになっています。フジサンケイレディスクラシックで優勝したメルセデスランキング21位の神谷そらさん(ドライビングディスタンス2位)、同23位の櫻井心那さん(同6位)、同25位の竹田麗央さん(同3位)らがいい例です。いずれも20歳前後の若手で、彼女たちの今後の活躍次第ではランキング上位の顔ぶれはさらに変化していくかもしれません。

 ところで、選手の低年齢化が進むなか、すなわち20歳前後の若い女子プロにとって、試合における精神面や情緒面でのコントロールは重要な課題です。その意味でも、人間関係が成績に与える影響は大きなものがあります。

 試合中で言えば、キャディーさんです。プレー中に揺れ動く選手のメンタルの動きを察知して、時に励ましながらポジティブな方向に助言するキャディーさんは、相性もあるかと思いますが、プレーヤーのいいものを引き出す影響力のある存在と言えます。

 年間を通して契約をしている選手以外は、キャディーさんとは試合ごとに契約をかわすことが多いので、昨季は調子のいい時に多くの試合で担いでもらったキャディーさんが、今季は他の選手と契約していて頼めなかった、という場合もあるでしょう。それが、成績に影響している可能性もあるかもしれません。

 また、人間関係で言えば、コーチとの契約もそのひとつ。こちらもコーチング内容を含めて、関係性が順調にいっていれば、成績に表れると思います。

 その点、辻村明志コーチに教わっている上田桃子さんと吉田優利さんは、14試合終了時点の昨季と今季もランキング上位(上田=昨季12位、今季8位、吉田=昨季13位、今季6位)。コーチとの関係性の良好さを示していると思われます。

 最後に、同年代の選手同士の人間関係も時に成績に影響するものです。たとえば、あれだけ成績上位に名を連ねていた『黄金世代』ですが、今季はメルセデスランキング10位以内に入っているのは、吉本ひかるさんだけです。

 今季から、勝みなみさんが米女子ツアーに挑戦。これで、同ツアーを主戦場とする『黄金世代』が、畑岡奈紗さん、渋野日向子さんを含めて3人になったこともありますが、一緒に切磋琢磨してきた面々が近くにいなくなったことで、モチベーションに少なからず影響を与えているかもしれません。

 一方で、海外で奮闘する同世代の選手の動向や活躍はやはり気になるものです。2000年生まれの古江彩佳さんと西村優菜さんも含めて、そうした存在が気持ちのパワーアップにもなりますし、将来米ツアーでやりたいと考えている選手にとっては、いい刺激になっている可能性があります。