U−22日本代表、プレミアリーグの若き精鋭が集ったイングランドに快勝しても満足度が低かった理由
昨秋からヨーロッパの強豪国と親善試合を重ねているU−22日本代表。今年に入ってからも3月にはドイツ、ベルギーと対戦し、1敗1分けと勝利を手にすることこそできなかったが、内容的には相応の手応えを得ている。
そして現在、今年2度目のヨーロッパ遠征を行なっているチームは、6月10日、イングランドと対戦。相手の希望により非公開で行なわれた試合は、日本が2−0で勝利した。
すでにプレミアリーグでも名を馳せる若き精鋭たちをそろえたイングランド相手に、日本は閉じられた扉の向こうでどんな戦いを繰り広げたのか。
この試合でインサイドハーフを務めたキャプテンの山本理仁、同じくアンカーを務めたMF藤田譲瑠チマの言葉から、日本の勝利をひも解いていく。
若きスターがそろったU−22イングランド代表と対戦したU−22日本代表
「イングランドがそんなに前からこなかったんで、(ボールの動かし方が)外回り、外回りになっていたところはあったけど、ボールを持つところに関しては、まずまずできていたんじゃないかな、と」
まず、そう話していたのは山本だ。
今年3月のドイツ戦、ベルギー戦を振り返っても、日本は前半相手に押し込まれ、後半に修正して押し返すという試合が続いていたが、今回のイングランド戦に関しては、前半からある程度ボールを保持してゲームを進めることができていたようだ。
山本は、「効果的な攻めができていたかっていうのはまだ課題だが」と前置きしながらも、「この間のドイツやベルギーとはちょっと違った試合運び、ゲーム展開だった」と語る。
「お互いに低い位置でボールを持って、ミスでカウンターもお互いあって、みたいな展開ではあった」(山本)
「前半自分たちの守備がうまくハマらない場面とかもあって、少しピンチになったりっていうのがあったけど、自分たちにもチャンスがあって、(小田)裕太郎の決定機があって、(平河)悠の決定機もあったなかでの前半0−0の折り返しだった」(藤田)
これまでの試合のように、一方的に近い形で前半押し込まれることがなかったのは、「ドイツ戦のようなオープンな展開にならなかった」からだと、山本は考えている。
「広い範囲で1対1を仕掛けられたりすると難しいところもあったけど、チームとしてコンパクトにミドルゾーンで守っているなかでは怖くなかった。相手を見ながら変にハイプレスをかけすぎず、ミドルゾーンで構えて、(ボールが)入ってきたところを潰す守備ができていた感覚はあった」
結果的に日本は、昨秋来のヨーロッパ遠征での7試合目にして初の無失点。それが強豪国を相手にしての勝利につながったことになる。山本が続ける。
「(ミドルゾーンで構えることで)うしろにスペースを作らせず、スペースがある形で相手のウイングに(ボールを)持たせなかったのが、今回ゼロ(無失点)に抑えられた要因だったのかなと思う。(これまでの試合で)手応えが徐々に積み上がってきて、それをイングランド戦で発揮できたっていうのはある」
とはいえ、せっかくの勝利に水を差すわけではないが、対戦したイングランドが、多少なりとも拍子抜けする相手だったことも確かなようだ。
エミール・スミス・ロウ(アーセナル)、ハーベイ・エリオット(リバプール)ら、プレミアリーグで注目を集める若手選手が名を連ねた今回のイングランド。そこには、日本がこれまでのヨーロッパ遠征で対戦してきた強豪国よりも、さらなる格上感が漂っていた。
ところが、そんな"スター予備軍"も、23歳以下の欧州王者を決めるU−21ヨーロッパ選手権(6月21日開幕)を目前にしているとあって、調整ムードがありあり。
試合前は、「トッテナムのボランチの(オリバー・)スキップがいるって聞いた時はちょっとテンション上がった」と藤田。しかし、いざ試合が始まってみると、「うまいはうまいけど、そんなに......、っていう感じだった」と振り返る。
「相手はシーズンが終わったばかりで、やっぱりモチベーションも結構下がっていると、試合中やっていて思った。リバプールのエリオットがちょっとうまかったな、ぐらいで。スミス・ロウとかも空気みたいな感じで(苦笑)。自分からしたら、今までのヨーロッパ(で対戦したチーム)のなかで一番......、なんかそんな、弱かったって言ったらアレですけど、っていう感じではあった」
そして藤田は、「あっち(イングランド)は本番の前だったんで、戦術確認とかも含めてちゃんとやってくれるかなと思ったけど、ちょっとそこは残念だった部分はあった」とつぶやいた。
だが、そもそもイングランドにしてみれば、はなからそれがわかっていたから、自前のトレーニング施設(セント・ジョージズ・パーク)内で試合を行なったのだろう。
非公開にしたのは、タイトルマッチを前にライバル国に自分たちの情報を与えたくない、というよりも、人に見せるような試合ではない、という意図があったのかもしれない。
山本が語る。
「観客も入っていないし、ホテルから歩いて移動してきて試合、みたいな感じだったんで、今までの観客ありの、この間のドイツ戦みたいな試合よりは、練習試合感が多少強かったというか。たぶんイングランドもそれを感じて、本気モードではなかったのかなっていうのは肌で感じた。自分の感覚的には、スペイン、ドイツ、ベルギーとかのほうが、全然強かった」
だからこそ藤田は、「自分たちとしてはやれた部分が多かったので、そこは自信を持っていいと思う」としながらも、「でも、もうちょっと相手の熱量が上だったらどうだったかっていうのはわからない」と認め、こう続ける。
「この結果で自分たちがもうできるようになったと過信するのはちょっと違うと思う。またここで気を引き締めて、次の試合、みんなで勝てるようにいい準備ができたらいいなと思う」
勝つには勝った。だが、思いのほか、満足度や納得度が低かった敵地での勝利を経て、次に臨むのは6月14日のオランダ戦。過去にはオリンピック世代の欧州王者の座についたこともある、ヨーロッパ屈指の強豪国を相手に、日本がどんな戦いを見せるのか。
相手ともども、見応えのある試合を期待したい。