老後に向けて徐々に身軽な暮らしにしよう…そう考える中で、処分するハードルが高いものが「思い出の品」ではないでしょうか。50代に入り、思い出のものを少しずつ処分していったというブロガーで整理収納アドバイザーの原田さよさんに、罪悪感を感じず手放すルールを伺いました。

50代のうちに始めたい。捨てにくい思い出のものを減らすコツ

50代になって時間的な余裕が出てきたとき、あらためて、「こんなに家の中にものが多かったっけ…、片づけておかないと将来困ったことになるかも」と焦り始める人がいらっしゃるのではないでしょうか。私もその一人でした。

【写真】亡き息子との思い出がつまったテレビデオ

明らかなガラクタや、まったく使っていないし使うこともないとわかっているものであれば、処分をするのはさほど難しくなかったです。たとえ体力や気力が必要だったとしても、要不要を迷わずにすむ場合が多かったからです。客用布団や大きな家具を捨ててきたことも、以前紹介してきました。

なかでも難しいのが、罪悪感を感じやすい思い出のあるものの処分ではないでしょうか。今日は、私が50代になってから手放し始めた思い出のものの、捨てどきと見極めポイントについてまとめました。

●思い出のものを手放すタイミング

思い出が色濃く残っているものでも、手放さないといけない場合も出てきます。たとえばライフスタイルが変わり、思い出のものを入れていた収納がいっぱいになってきて、別のものを入れられなくなったときなど。

また、思い出のものに対する気持ちが変わったときも、捨てるタイミングです。量が多すぎて見返すこともなくなっていると気づいたときや、思い出のものの片づけを子どもの代にまで持ち越してしまうのは避けたいと思い始めたときなどです。

●思い出のものを整理するときのルール

整理が難しい「濃い思い出」があるものを仕分ける場合、次のようにルールを決めておくとラクです。

・思い出のものとして残す量の限度を決めておく(押入れのこの一角に収まる分だけとか、納戸のこの段に乗る分だけというように)

・残すものの基準をはっきりさせておく(自分を勇気づけてくれるもの、見ればやる気が出てくるものは残すという具合に)

●手放す罪悪感を減らす“儀式”を決めておく

また、手放すときの儀式があると、罪悪感が少なくてすみます。私は思い出のものを手放すとき、写真に撮ってからというのもしていますが、思い出の濃いものなら「最後にもう一度使ってから捨てる」というようにしています。面倒なことと思われるかもしれませんが、これで気持ちよく手放せるようになりました。

これは30年近く前に買った、テレビデオという家電です。ご存じですか? テレビとビデオデッキが一体化しているものです。

亡くなった息子には重い知的障害があり、目を離せないほど多動な状態でしたが、このテレビデオで好きなビデオを見るということは楽しんでいました。そのときのうれしそうな様子が忘れられなくて、なかなか手放す気になれなかったものです。でも数年前、思いきって処分しました。押入れのなかで場所を取っていたし、代わりに孫のものを入れておきたいと思うようになったからです。

処分する前に、「最後にもう一度使ってから」というのをやってみました。息子が好きだったビデオを再生してじっくり鑑賞したら、バックで流れている歌も思い出し、胸がいっぱいになりました。と同時に、「これでいいんだ」という思いもこみあげてきました。思い出のものを手放す私の儀式が終わり、納得して処分できたのです。

どうしても捨てられず、だれかに役立ててもらいたい場合は、人に使ってもらえる方法を探しました。上記の鯉のぼりやおもちゃは、寄付できるところを探し、手放しました。

私自身が昔もらった賞状や記念品は、可燃ゴミと不燃ゴミに分けて捨てました。写真も念のため撮っておきましたが、もう見ない気もします。捨てられないと思っていても、捨ててみたら案外そうでもなかったというものがにほかもありましたから。

●50代は「思い出」を整理しやすい時期

私のブログの読者さんや片づけセミナーをご受講いただいた方からは、「思い出のものを捨てることに罪悪感があって…」というお話を伺うことがあります。その気持ちは私も同じだったので、よくわかります。だから、思い出のものを整理したいという気持ちより、手放す罪悪感の方が勝るうちは無理をしなくていいです。

それでも、私が思い出のものの整理についてこのように書くのは、年齢を重ねれば重ねるほど手放すハードルが上がるというのを、母や義母をみていて思ったからです。子どもに負担をかけたくないという思いはあっても、手元からなくなるのが寂しいと母たちが思っているのがわかったから。50代の今なら、思い出のものの整理でそこまで寂しくなることはないと思います。これからも思い出が残るような経験ができるからです。

思い出のものを片づけると自分の過去と向き合うことになるので、頭の中が整理できます。これからの自分に必要なものが何かを、確かめることにもつながります。そろそろ整理したいと思っている方は、ぜひ始めてみてください。

原田さよさんの最新刊『50代はやめどき、捨てどき、楽しみどき』(扶桑社刊)が発売中。