2022-23 V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN(V1女子)は、NECレッドロケッツが激戦を制し6年ぶりに優勝を果たした。今シーズンのVリーグのなかから、リーグを盛り上げた日本代表の主力選手やニューヒロインとして期待される選手など、活躍が光った女子バレーボーラー10人を紹介する。

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【古賀紗理那】photo by 坂本清

■古賀紗理那(こが・さりな)
所属:NECレッドロケッツ アウトサイドヒッター・180cm

1996年5月21日生まれ
佐賀県出身 熊本信愛女学院高

 昨年度に続き日本代表の主将に就任。昨年の大晦日に、男子日本代表の左腕エース・西田有志との結婚を発表して話題になった。

 NECでは主将などの肩書きはないが絶対的支柱で、高いオフェンス力、ブロック力を武器にチームを6年ぶりの優勝に導き、自身2度目のMVP、3度目のベスト6受賞。さらに初のサーブ賞も受賞した。

 レギュラーラウンドは最終日に4位が決まってプレーオフに勝ち上がった。ファイナル4では東レにストレートで敗戦するも、埼玉上尾とのファイナル進出をかけた直接対決に勝利。東レ相手のファイナルはフルセット、しかも最終セットがデュースという大激闘になったが、古賀の活躍もあって勝利した。そんな大一番での勝負強さを、今年に開催されるパリ五輪最終予選でも発揮してくれることを期待したい。


【石川真佑】photo by 堀江丈

■石川真佑(いしかわ・まゆ)
所属:東レ・アローズ(4月30日付で退団) アウトサイドヒッター・174cm

2000年5月14日生まれ
愛知県出身 下北沢成徳高

 レギュラーラウンドで総得点735点と、Vリーグの日本人最多得点記録を更新した。チームはレギュラーラウンド1位、ファイナル4も首位でファイナルに勝ち進んだ。NECとの決勝戦の最終セットでは、一度東レがマッチポイントを握るもデュースとなり、最後は石川の攻撃がブロックされて、ゲームセット。11年ぶりとなる優勝はならなかった。

 昨年12月の皇后杯でも決勝でNECに敗れたが、石川は試合後の記者会見で「最後はトスを自分に託してほしかった」と発言。その言葉どおり、セッターの関菜々巳はファイナルでは最後を石川に託し、「あそこは真佑しかいないと思っていたので後悔はない」と涙ながらに振り返った。

 最後は悔しい思いもしたが、石川は敢闘賞、ベスト6を受賞(ともに初受賞)。そして4月25日には、東レ退団を発表。本人からの発表はまだないものの、イタリア・セリエAに挑戦するとの報道もある。しかしまずは、今季のVリーグで蓄えた力が日本代表でどう発揮されるのかに注目したい。


【中島咲愛】photo by 堀江丈

■中島咲愛(なかじま・さえ)
所属:久光スプリングス アウトサイドヒッター・174cm

1999年6月18日生まれ
宮崎県出身 宮崎日大高→鹿屋体育大

 ルーキーながらスターティングメンバーとなり、攻守で安定したプレーを見せて新人賞を獲得した。また、Vリーグのホワイトデー企画「きゅん1グランプリ」の人気投票では、日本代表の経験もないルーキーながら、石川真佑に次ぐ2位となった。

 子どもの頃憧れた選手は、元東レの迫田さおりさんとのことだが、守備のよさは久光OGの新鍋理沙さんを彷彿とさせる。酒井新悟監督も「中島が入ると守備が安定する」と話すように、落ち着いたプレーでチームに安心感を与えた。

 迫田さん、新鍋さんは中島同様、あまり身長は高くなかったが日本代表に選出され、ロンドン五輪で銅メダルを獲得。偉大な先輩たちを目標にスキルアップし、将来的には代表でのプレーも目指してほしい。


【西村弥菜美】photo by 堀江丈

■西村弥菜美(にしむら・みなみ)
所属:久光スプリングス リベロ・168cm

2000年3月23日生まれ
福岡県出身 東九州龍谷高→岡山シーガルズ

 2021年5月に前所属チームからの退団と現役引退が発表されたが、翌年2月に久光に入団し、1年を待たずに現役復帰した。

 もともと高校や岡山でリベロ経験があったが、久光では今年初めてリベロのポジションに入った。正リベロを務めてきた戸江真奈(今シーズンで引退)のコンディションが落ちたための起用だったが、サーブレシーブ部門のトップに。成功率74.8%と、それまで新鍋さんが保持していた記録(70.0%/2018-19シーズン)を上回り、サーブレシーブ部門で日本記録賞に輝いた。

 この活躍が認められて日本代表にも選出されたが、海外の強力なサーブやスパイクに対し、西村がどこまで動けるのか注目される。アンダーカテゴリーでは、石川真佑を主将に金メダルに輝いた2019年U20(ジュニア)世界選手権のメンバーにも名を連ねていた。シニア代表では福留慧美(デンソー)、小島満菜美(NEC)らとリベロのポジションを争うことになるが、そこで一歩抜け出すことができるのか見守っていきたい。


【荒木彩花】photo by 堀江丈

■荒木彩花(あらき・あやか)
所属:久光スプリングス ミドルブロッカー・184cm

2001年9月2日生まれ
福岡県出身 東九州龍谷高

 東九州龍谷高では主将を務め、春高バレーでチームを日本一に導いた。2020年に久光に入団するが、当時はミドルブロッカーに外国籍の絶対的な選手がおり、その対角1ポジションを日本人ミドルが争うという状況だった。さらに、2021年4月、右膝外側半月板損傷、全治6カ月という大ケガを負い、昨シーズンはリハビリ生活を余儀なくされた。

 満を持して臨んだ今シーズンはスターティングメンバーに定着し、スパイク賞、ブロック賞をW受賞。ベスト6入りを果たし、日本代表に初選出された。今シーズンのレギュラーラウンドでは8本のブロックを止めた試合も。チームメイトの西村とは高校の先輩・後輩でもあり、荒木もU20世界選手権の金メダルメンバー。当時の経験も活かし、シニア代表でも活躍してほしい。


【佐藤優花】photo by 堀江丈

■佐藤優花(さとう・ゆうか)
所属:埼玉上尾メディックス アウトサイドヒッター・172cm

1994年1月24日生まれ
岡山県出身 就実高→トヨタ自動車

 レギュラーラウンドでは、チーム過去最高の2位に貢献(総得点日本人で5位、アタック決定本数同3位)。過去には下部リーグで得点王を受賞するなど圧倒的な攻撃力を誇り、2018年に埼玉上尾に移籍。172cmとV1では小柄なアタッカーだが、ジャンプ力と攻撃力を活かしてレギュラーに定着した。

 昨年は28歳で遅咲きの日本代表デビュー。BチームでAVCカップ(アジアカップ)に出場し、優勝メンバーとなった。佐藤の出番は少なかったが、スタメンで出場していた同じポジションの田中瑞稀、西川有喜(ともにJT)の動き出しの速さなどを学び、参考にしたという。年下の選手から学ぶ謙虚さや探究心で成長を続ける佐藤は、今年度も日本代表に選出されている。そこでも新たな引き出しを増やすことになりそうだ。


【和田由紀子】photo by 堀江丈

■和田由紀子(わだ・ゆきこ)
所属:JTマーヴェラス アウトサイドヒッター/オポジット・174cm

2002年1月8日生まれ
京都府出身 京都橘高

 2020年に入団し、2年目の昨シーズンから少しずつコートに立つ機会が増えていったが、今シーズンは出場機会が急増して成長。日本代表にも初選出された。

 今シーズンのJTは新外国人選手がなかなかフィットせず、オポジットのポジションは和田の活躍が目立った。吉原知子監督は「和田は得点能力があり、スタートからでも途中からでも起用できる選手」とコメントしている。ここ数年、3位以内をキープしてきたJTが5位に沈んだのは日本代表の林琴奈のコンディション不良も原因のひとつだが、その分も和田が活躍していた印象がある。

 身長は174cmと高さのあるスパイカーではないが、173cmの林がお手本になっており、「攻守に安定していて、技が幅広いところを尊敬している」と話す。「自分はサーブレシーブの負担がない分、攻撃でチームを引っ張ることを心がけている」と語る和田だが、そのオフェンス力を日本代表でも見たい。


【横田紗椰香】photo by 堀江丈

■横田紗椰香(よこた・さやか)
所属:デンソーエアリービーズ ミドルブロッカー・177cm

1999年9月30日生まれ
愛知県出身 古川学園高→東海大

 今年入団のルーキー。東海大では主将を務め、インカレ優勝に貢献している。2歳違いで日本代表の姉・真未とはミドル対角を組むが、姉はクイックが得意な一方で、妹はブロードが得意。愛知県の出身だが、中学から家を出て裾花中(長野県)に進学。高校は宮城県の古川学園高、そして地元に戻ってデンソーと、姉の真未とすべて同じコースを歩んできた。

 新人ながらアタック決定率3位という成績を残したが、「自分の強みであるブロード攻撃は今まで決まっていたボールが決まらなくなったり、ブロックも今まで止めることができていたのに止められなくなったりしたことがあった。学生とプロの差を感じたシーズンであり、課題が見えたことのほうが多かった」と謙虚に話す。

 セッターの松井珠己とのコンビを入念に合わせてきた結果が数字に反映されたとも振り返ったが、その松井が退団を発表。チームのセッターには東海大の同級生・山口結可もいるが、来季はどんなコンビが生まれるのか。


【佐藤彩乃】photo by 堀江丈

■佐藤彩乃(さとう・あやの)
所属:KUROBEアクアフェアリーズ セッター・165cm

1999年11月4日生まれ
千葉県出身 敬愛学園高→青山学院大

 大卒ルーキーのセッターとして、主に2枚替えなどで出場した。日本代表の佐藤淑乃(筑波大4年)の2歳違いの姉で、妹からは「アヤ」と呼び捨てにされるほど仲がいい。代表入りした妹については、SNSでも「自慢の妹です」と発信している。

 プレー面では、身長165cmとセッターとしても決して大きくはないため、「毎回同じようなリズムで攻められるように、できるだけジャンプトスをして上げるようにしている」と話す。また、ブロックも積極的に跳ぶようにしているという。高校は同じチーム、大学では対戦相手だった佐藤姉妹。将来的には姉妹Vリーガ―としてともに活躍する姿も見ることができそうだ。


【森木かれん】photo by 坂本清

■森木かれん(もりき・かれん)
所属:ブレス浜松 セッター・176cm

1999年9月11日生まれ 
広島県出身 市立沼田高→岐阜協立大

 V2女子に彗星のごとく現れた注目の大型セッター。高い位置でのトス捌きはもちろん、ブロック力、サーブ力も高い。

 大学時代、一度バレーを辞め、指導者の道などを考えたこともあるというが、V1監督経験も豊富な濱田義弘監督からブレス浜松にスカウトされて入団した。濱田監督は、「課題はミドルの攻撃を増やすこと。高さを活かした自分の持ち味を追究し、ツーアタックなどの引き出しも必要」と話す。

 ビジュアルも華があり、Vリーグのホワイトデー企画「きゅん1グランプリ」のファン投票ではV2部門1位。来シーズンは技術面でもさらに成長し、ニューヒロインとしてチームを、リーグを盛り上げてくれることを期待したい。

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