冷蔵・冷凍に次ぐ第三の鮮度保持技術「ゼロコ」事業始動、予備冷却で使えば冷凍変性を防いで大量生産も/ZEROCO

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ZEROCO(東京都渋谷区、楠本修二郎社長)は4月12日、冷蔵庫、冷凍庫に次ぐ第三の鮮度保持技術「ZEROCO(ゼロコ)」事業を始動すると発表した。

温度役0℃かつ湿度100%弱の保管環境を生み出すことで、食材や食品の鮮度を長期間、高品質に保つことができる、世界初の技術だという。生鮮食材の保管のほか、冷凍前の予備冷却に利用すると、急速凍結機を使用しなくても冷凍変性を防げるとしている。ZEROCOの社長はカフェ・カンパニーの楠本修二郎社長が務める。本格始動は今年3月となる。

ZEROCO・楠本修二郎社長

このプロジェクトは、鮮度を長期間・高品質に保つことで食材本来のおいしさを生活者に届けるとともに、生産者の出荷に関わる業務負担の軽減、食材の寿命をフレッシュなまま伸ばすことでフードロス削減にも貢献するというもの。商品名でもあるZEROCO は冷却庫内の温度と湿度を厳密に管理し、食品を芯温まで均一に約0℃に保つ冷却庫やシステムだ。

低温・高湿による食材保管は、雪の中で保存して越冬させる雪下野菜に着想を得た。氷融解時と同じエネルギーを利用し「温度役0℃・湿度100%弱」の状態に庫内を安定させることを可能にしているという。

食材に含まれる水分をコントロールすることが長期保存を可能にしているという。

実験ではイチゴやメロンは3カ月、鮮魚のノドグロは2週間、バラは4カ月、鮮度を保って保存できたとしている。

食品を冷凍する前の予備冷却装置としての用途も提案する。

庫内の食品は表面温度も芯温も0℃に均一となり、食品中の水分を“水と氷の区別がなくなる状態=固液臨界状態”となる。この状態を保つことで氷結晶の発生を抑制している。この状態の食材は凍結スピードが非常に速くなり、細胞の氷結晶が大きくなるのを防げる。緩慢凍結でもドリップや冷凍焼けなどの冷凍変性を防げるという。

ZEROCO と緩慢冷凍とを組み合わせれば、エネルギー効率が高くかつ大量生産が可能になる。近年普及が進んでいるブライン凍結機を使用した場合と比較すると、保管や凍結のために食材をパウチする必要がなく、設備容量の比較では約88%削減できるとしている。

ZEROCO は3坪・5坪・10坪用の機種を現状そろえている。例えば、漁港などサプライチェーンの川上に導入して、予備冷却装置として使用し、高品質な冷凍保存につなげたい考えだ。既存の冷蔵倉庫の建屋を活用した事業化などを想定している。

ZEROCO は解凍にも活用できる。冷凍前の状態に近い品質で大量に解凍することができるとしている。

〈テクノロジーを使い食で世界に貢献〉

楠本修二郎社長は次の様に語る。

【楠本修二郎社長】

東日本大震災の際にサプライチェーンが分断され、東の食の会を立ち上げた。
これから少子高齢化の日本の地方では同じような危機に瀕する恐れがある。急激な少子高齢化はこれからだ。日本には美味しさのノウハウを中小零細企業が蓄積している。今後、その豊富なノウハウが失われるリスクがある。これを継承する人的なネットワークだけでは不足なので、テクノロジーで支えていかなければならない。
この先、農業は農業、物流は物流、外食は外食――とバラバラの産業ではなく、食産業全体として120兆円を支えていく必要がある。農業・漁業関係者の方々が自らブランドを持ち、販路を持ち、ソリューションをもって事業展開していくことで強い地方をつくっていく時代になると確信している。
一方で世界人口は1.3倍になる。食料需要は1.7〜1.8倍ともいわれる。われわれ日本人が一致団結して、人口爆発の地球において、食で世界に貢献できないかと考えてきた。それがこの事業を進めてきたモチベーションだ。