春は新しい生活が始まる季節です。そして今年は年初から注目のスマートスピーカーが次々に発売を迎えています。つまり、音楽などエンターテインメントを楽しむ環境を整えるならばいまが狙い目。

 

今回は「音質」にもこだわり抜いた、Appleの「HomePod」とアメリカの人気スピーカーブランドであるSonos(ソノス)の新製品「Era 300」の特徴を比較しながら、最新スマートスピーカーのトレンドを紹介したいと思います。

 

「音質」にこだわるプレミアム級スマートスピーカーがいまおもしろい

↑Sonos「Era 300」(左側)とApple「HomePod」(右側)。2つの最新プレミアムモデルのスマートスピーカーをレビューします

 

スマートスピーカーといえば、SiriやAlexaなどAIアシスタントを声で呼び出して、スマート家電を遠隔操作できるガジェットとしての印象を強く持っている方も少なくないと思います。

 

最新のスマートスピーカーはその機能をもちろん搭載しながら、いっそうオーディオ製品としての「音質」にこだわっています。今回注目するAppleのHomePodとSonosのEra 300は、代表的なプレミアムクラスの高音質スマートスピーカーで、そろって特徴的な機能をそなえています。

 

トレンドその1 今後増えそうな空間オーディオにいち早く対応

ひとつは、両製品ともに360度全方位から心地よいサウンドに包まれるようなリスニング体験を実現する「空間オーディオ」に対応していること。空間オーディオによる立体音楽体験はヘッドホン・イヤホンによるポータブルリスニング、サウンドバーによるホームシアターにも急速に広がりました。

 

これからは空間オーディオに対応するスマートスピーカーも続々と増えそうです。トレンドを先取りできることからもHomePodとEra 300は要注目です。

↑ストリーミングサービス内の空間オーディオ対応楽曲を再生すると、立体的な音楽リスニングが楽しめます

 

トレンドその2 空間に合わせてサウンドを自動で最適化

HomePodとEra 300は、スピーカーを置いた空間の音響に合わせてサウンドを自動で最適化する機能も搭載しています。初期設定の手間をかけることなく「自動で最高の音質」に調整できるスマートスピーカーも主流になりそうです。ただし、HomePodとEra 300の自動最適化機能は少し使い勝手が違います。後ほど実機による使用感をレポートします。

 

トレンドその3 スマートホームの最新規格「Matter」に注目

AppleのHomePodは「Matter(マター)」というスマートホームの新しい規格に対応しました。従来HomePodシリーズで遠隔操作ができるのはApple独自規格のHomeKitに対応するスマートホーム機器だけでした。今後はGoogleやAmazonもサポートするMatter対応の生活家電や照明器具、ホームセキュリティ機器も広く遠隔操作ができるようになることも覚えておきましょう。

 

なお、SonosのEra 300はAmazon Alexaによるスマートホーム機器のコントロールに対応しています。

 

HomePodとEra 300の共通点その1 ホームシアター環境にも発展

HomePodとEra 300の特徴を個別に掘り下げる前に、さらにふたつの製品に共通する点をチェックしておきましょう。

 

空間オーディオのほか、サウンドの自動最適化機能と音声によるスマートホーム機器の操作に対応していることは先に触れました。

 

音楽再生については2台同じスピーカーをそろえると、ステレオ再生が楽しめます。またHomePodはApple TV 4Kにペアリングして映画に音楽、ゲームなどコンテンツのサウンド再生を受け持つことができます。大画面テレビに内蔵されているスリムなスピーカーのサウンドを補強する手段としてとても効果的、かつ経済的です。

 

Era 300は同じスピーカーを2台ペアリングしたうえで、Sonosのサウンドバー「Arc」、または第2世代の「Beam」を介してドルビーアトモスに対応する映画を楽しむ本格ホームシアターに拡張ができます。

↑2台のEra 300に、Sonosのサウンドバーを追加すると本格的なサラウンド再生システムに発展できます

 

HomePodは4万4800円(税込)、Era 300は6万9800円(税込)と、単体でも価格がプレミアムなスマートスピーカーです。すぐに2台のスピーカーと、ほかに連携する機器をそろえることは予算的に難しいかもしれませんが、将来の発展性が確保されているので「長く楽しめるスマートスピーカー」であると言うことはできるでしょう。

 

なお、HomePodとEra 300はどちらも無料の専用アプリを使ってサウンドのバランスを整えたり、さまざまな機能を設定できたりします。

 

HomePodとEra 300の共通点その2 自宅内で設置する際の自由度の高さ

Wi-Fiでホームネットワークに接続すれば、AppleのAirPlayを使ってiPhoneやiPad、Macなどで再生したコンテンツのサウンドをよりいい音で楽しむことができます。

↑SonosのEra 300もAirPlayによるワイヤレスリスニングに対応しています

 

ふたつのスピーカーは本体にバッテリーを内蔵していません。電源ケーブルによる給電が必要です。よって、屋外での使用には不向きですが、設定を済ませた後はホームネットワークの通信範囲内で電源が確保できる場所であれば、自由に設置できます。都度、サウンドの自動最適化機能を活用すれば、いつでもベストなサウンドが楽しめるわけです。

↑スピーカーの電源はケーブルによる給電が必要。持ち運びは可能なサイズ感なので、電源が確保できれば室内で場所を自由に移動しながら楽しめます

 

カスタマイズの自由度がとても高いEra 300

ふたつのスピーカーの共通点を確認できたので、続いて各製品の特徴を掘り下げてみたいと思います。まずはSonosのEra 300から。

 

Era 300は音楽ファンだけでなく、オーディオを趣味として楽しむ方々のこだわりにも応えられる、カスタマイゼーションの自由度がとても高いスマートスピーカーです。

 

音質などのカスタマイゼーションは専用アプリ「Sonos」から行ないます。このアプリがiOSとAndroidの両方に対応している点もポイントが高いと思います。なぜならHomePodを楽しむためには、最新バージョンのiOS搭載iPhoneまたはiPadOSを搭載するiPadが必要だからです。

↑専用アプリのSonosはAndroid、iOS両方のプラットフォームに対応。見え方はほぼ同じです

 

Sonosアプリでは、ユーザーが利用しているさまざまな音楽配信サービスをひも付けることもできます。たとえばAmazon Music UnlimitedとApple Musicを連携しておけば、Sonosアプリの検索機能からふたつの音楽サービスが配信する楽曲やアーティストの「横串検索」ができます。

 

筆者はよく海外のラジオを聴きながら仕事をしています。その際、Sonosアプリに内蔵されているインターネットラジオの検索・聴取機能「Sonos Radio」がとても重宝します。

↑Sonosアプリには音楽プレーヤー機能のほか、独自のインターネットラジオのポータル機能「Sonos Radio」や、複数音楽サービスの横串検索が搭載されています

 

先に触れたサウンドの自動最適化は「Trueplayチューニング」という機能を使います。こちらの機能もiOSとAndroidの両方に対応しています。iPhoneの場合は「高度なチューニング」を選ぶと、iPhoneのマイクを使って部屋の隅々まで音響環境を測定しながらより正確なチューニングができます。

↑Era 300が搭載する自動最適化機能のTrueplayチューニング。iOSはiPhoneのマイクを使った高度なチューニングが可能

 

もうひとつEra 300が魅力的なポイントは「多彩な音楽ソースの入力に対応している」こと。Bluetooth接続に加え、専用アクセサリーを介してアナログ音声入力ができるスマートスピーカーなのです。

 

Bluetooth接続については、HomePodは対応していません。もしBluetooth対応のポータブル音楽プレーヤーやWindowsパソコンのサウンドを音のいいスピーカーで楽しみたいのであればEra 300を選ぶべきです。

 

専用アクセサリーとしては、SonosがEra 300のために販売する変換アダプター「Sonos Line-In Adapter」があります。外部の再生機器、たとえばアナログレコードプレーヤーも繋げられるので、「ジャケ買い」してしまったアナログ盤を聴く環境を整えてみてはいかがでしょうか。

↑Sonos純正のUSB-Cに対応するアダプターを使ってEra 300とさまざまな音楽ソースプレーヤーをケーブルで接続できます

 

「シンプルにいい音」のコンセプトを極めたHomePod

AppleのHomePodは、手軽にいい音を楽しみたいiPhone/iPadのユーザーにおすすめのスマートスピーカー。毎日の音楽再生やSiriによるスマートホームの音声操作もとにかくシンプルなところが大きな特徴です。

 

基本的には数ステップで完了する初期設定を済ませてしまえば、あとは操作方法などを覚えなくても誰でも簡単に使いこなせます。HomePodは常時自動でサウンドの最適化をしているので、ユーザーがその設定を意識する必要がないのも特徴です。もちろん、iOS/iPadOSの「ホーム」アプリには「低音を減らす」のような、夜間の音楽リスニングに便利な設定メニューなどもそろえています。

↑iOSのホームアプリからHomePodをコントロール。夜間の音楽再生に便利な「低音を減らす」機能もあります

 

音声による楽曲の検索・再生に対応する音楽サービスはApple Musicに限られますが、AirPlayを使えばほかの音楽サービスやYouTubeなど、動画配信サービスの音声をHomePodに飛ばして聴くこともできます。

 

また、HomePodにiPhoneを近づけるだけで、iPhoneで聴いているサウンドを素早くHomePodに引き継げるHandoffという機能もあります。iPhoneと連携する機能の完成度がとにかく高いので、スマートスピーカーの購入を検討しているiPhoneユーザーには、まずHomePodシリーズをおすすめしています。

↑iPhoneで再生中のコンテンツを素早くHomePodに引き継げるHandoffも便利。外出先から帰ってきたときなど、聴いている音楽をスムーズにHomePodで再生できます

 

先にお伝えしたように、スマートホームの新規格であるMatterに対応したこともHomePodの魅力です。先日ソフトバンクグループのSB C&Sが、いち早くMatterに対応するスマートリモコン「SwitchBotハブ2」を発売しました。今後も続くことが予想されるMatter対応スマートホームデバイスの拡大に先回りして、いまHomePodを手に入れる価値は大いにあると思います。

 

クリアな音の広がりのEra 300、一体感に富んだサウンドのHomePod

最後に音の違いを確かめるために、Apple Musicで配信されている空間オーディオ対応の、松任谷由実のベストアルバム「ユーミン万歳!」から『中央フリーウェイ』を選曲して、Era 300とHomePodのサウンドキャラクターを聴き比べてみました。

↑Apple Musicで配信されている空間オーディオ対応の作品で、Era 300とHomePodを聴き比べました

 

Era 300は本体に全6基のスピーカーユニットを内蔵しています。うち1基のドーム型トゥイーターを天面上向きに配置したことで、空間オーディオに対応する楽曲は特に高さ方向に鮮やかな音の広がりをつくり出します。さらに、Sonosアプリから「ハイトオーディオ」を選んで高さ成分の調整もできます。

↑高さ方向の音成分を調整できるハイトオーディオ機能

 

クリアな音の広がり感は、ほかのスマートスピーカーを圧倒するほどにハイレベルです。ボーカルの声の輪郭はディティールの描写力に富んでおり、ボーカリストが歌に込めた感情をリアルに引き出します。また、空間の見晴らしが透明感に富んでいて心地よいです。ベースは力強く瞬発力も豊か。底力を感じさせます。

 

一方のHomePodは、内部下側に5基のビームフォーミングトゥイーターを全方位に向けて配置。加えて1基の大型ウーファーを設けて、スムーズで一体感に富んだサウンドを再現できるスマートスピーカーです。

 

中高音域は明るく開放的。歌声や楽器のメロディラインが煌びやかに感じられます。タイトな低音は重心が低く安定感が抜群。音像の立体感がとても鮮明です。エレクトリックピアノやストリングスの演奏がふわっと包み込むような、空間オーディオ体験も熟成されています。爽快なベースラインの疾走感は、ドライブがテーマのこの楽曲の魅力を存分に引き出します。

 

AppleとSonos、どちらのスピーカーも開発者が明快に意図した音づくりの方向性をしっかりと感じられると思います。価格はプレミアムですが、手に入れたあとは「うちのメインスピーカー」として長く愛着を感じながら活用できる良い買い物になるでしょう。

 

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