侍ジャパン・ダルビッシュ有【写真:荒川祐史】

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初ブルペンで35球…捕手の後方に“若侍”が集結、見学

 注目を集めるだけの凄さが数値に表れていた。3月に「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」に臨む野球日本代表「侍ジャパン」は18日、宮崎キャンプ2日目を終えた。パドレスのダルビッシュ有投手が、初のブルペン入り。捕手の後方に若手が集結し、一列になって“見学”するなど、異様な注目度だった。

 この日、ダルビッシュはソフトバンク・甲斐拓也捕手を相手に、変化球を交えて35球を投じた。途中からは“元相棒”の鶴岡慎也氏(チームスタッフ)に打席に立ってもらって実戦を意識。1球1球、最先端の計測機器「トラックマン」で球筋や軌道を確認するのが印象的だった。

 ダルビッシュの一挙手一投足に若手投手陣も注目した。ロッテ・佐々木朗希投手、オリックス・山本由伸投手ら8人が見学。食い入るように投球を見つめた。「全部が凄い」(佐々木朗)、「(見学したメンバーは)みんな『やべぇ』としか言ってなかった」(巨人・戸郷翔征投手)と言葉を失うほどだった。

 選手たちだけではない。栗山英樹監督ら首脳陣もその凄さを改めて実感している。中でも、厚澤和幸投手コーチは「とんでもないピッチャーですよ」と驚きを隠せない。

元日本ハムの厚澤コーチ「改めて蘇ってきましたよ…あのボールが」

 厚澤コーチが指導者としてダルビッシュの投球を見るのは、ともに日本ハムのユニホームを着ていた2010年以来、約13年ぶり。「改めて蘇ってきましたよ……あのボールが」と感慨深そうに語る。そして「明らかに別の人が2人で投げている」と異常な“数値”が出ていることを明かした。

 この日、スライダーやカーブ、ツーシームなど、球種を宣言してから投げていたダルビッシュ。球種が多いのは有名だが、同じ球種でも全て2つ以上の軌道がトラックマンに記録されたという。厚澤氏は現在、オリックスの投手コーチを務め、山本、宮城大弥投手、宇田川優希投手ら豪華投手陣を見ているが、まるで別人が投げているような記録はこれまでに見たことがないという。

「スライダーを投げても、普通のスライダーと明らかに横投げの人が投げている数値が出る。カット、スライダー、スラーブ、カーブにそれぞれ、軌道というものがあるが、ダルビッシュの場合は(球種ごと)2つ持っている」

 日本ハム時代からダルビッシュは様々な球種を投げていた。ただ、当時は計測機器はなかった。「改めて『こういうこと』だったんだ。さすがダルビッシュ先生です」と数値に舌を巻く。

 今回のキャンプでは若手と積極的に交流し、連日“ダルビッシュ塾”が開かれている。すでに戸郷や、阪神・湯浅京己投手が教えを受け、変化球が「明らかに変わった」と実感。ダルビッシュはチームにとって“教科書”のような存在になっている。(川村虎大 / Kodai Kawamura)