侍ジャパン・ダルビッシュ有【写真:小林靖】

写真拡大 (全2枚)

超一流メジャーリーガー揃う米国などに対抗するために

 3月の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む侍ジャパンの宮崎キャンプが17日、ひなたサンマリンスタジアム宮崎などで始まった。栗山英樹監督は今回のチームに、キャプテンを置かないことを表明。その理由を熱く説明した。とは言え、その中でも格別なオーラを放っている選手はいる。メンバーに選出された現役メジャーリーガー5人中、ただ1人キャンプに参加しているダルビッシュ有投手である。

「選手たちには、このチームがジャパンではない、あなたがジャパンなんです、年齢も実績も関係なく、それくらいの誇りとチームを引っ張る気持ちを持ってください、というメッセージを送ってきたつもり。そう考えれば、全員がキャブテンということになる」。栗山監督はあえてキャプテンを置かない意図をそう語った。「全員が『俺がキャプテンだ』と思えば、プレーの仕方が変わるはず。キャプテンならば、先輩に遠慮して言うのをやめておこう、なんてことはないはずだよね?」と噛み砕いて説明した。

 3大会ぶりの世界一を狙う侍ジャパンの前に、米国やドミニカ共和国などが超一流のメジャーリーガーを揃えて立ち塞がる中、「やっつけると決めたわけですから、臆するとか、相手のことをすごいなとか思っている場合ではない。自分が中心としてチームを引っ張っていくという気持ちで臨んでほしい」と強調した。

 そんな栗山監督にとって、ダルビッシュの招集は念願中の念願だったと言える。ダルビッシュ自身もそれに応えている。現役メジャーリーガーは大会前に予定されている6試合の強化試合のうち、開幕直前の2試合しか出場できない事情もあって、大半が所属チームのキャンプに参加しているが、ダルビッシュだけはパドレスの理解もあって初日から侍ジャパンに合流している。

「非常に難しい調整を強いることになる」と最敬礼

 理論派で日米を股にかけた実績を誇り、体のメンテナンス、トレーニング方法にも造詣が深いダルビッシュの薫陶を受けたい選手は、侍ジャパンにも投手、野手を問わずたくさんいる。強敵となる超一流メジャーリーガーと、普段から対戦していることも心強い。初日を終えた栗山監督は「僕はダルと昨日ゆっくり話をしたし、今日も話をした。感謝しかない。若い選手と話してくれながら、自分も学び、いろいろ与えてくれている」とうなずく。「他の選手たちに話を聞くと、(ダルビッシュの参加を)すごく喜んでいる。よかったなあ、と思います」と相好を崩した。

 ダルビッシュ自身も、「自分は米国が長い。ずっと日本にいると、なかなか最新の情報を得られないこともあると思うので、情報を共有しながら、お互いに成長していけたら。勝ち負け以外に、そういうことができると思う」と自身の存在価値を認識している。一方で「正直言って、キャリアは関係ない。プロである以上、ずっと成長する姿勢を崩してはいけないと思う。米国生活が長いので、年功序列とかは全く考えていない」と、若い選手たちと同じ目線に立つ。年齢も実績も関係ないという部分は、まさに栗山監督の考えと一致している。

 開幕直前までパドレスのチームメートの顔を見ないでレギュラーシーズンに臨むことになり、リスクは伴う。栗山監督は「ダルには非常に難しい調整を強いることになる。ダルにしかできない調整になる。彼ならやってくれると思って、お願いしています」と最敬礼だ。指揮官にはこの上、ダルビッシュにキャプテンの肩書きを付けて重圧を増すつもりはないのだろうが、今回のチームを貫く芯となることは間違いないだろう。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)