むしろ逆効果? 高速道「深夜割引」大幅見直しの意図 NEXCO「物流業界の行動変容を」
高速道路の深夜割引について大幅見直しが発表されました。これまで打つ手がなかったという課題を解消する目的がありますが、新制度で新たな懸念も生じているようです。
高速道を「深夜に走った分だけ」の深夜割引に
NEXCO東日本は2023年1月25日、由木文彦社長の定例会見を開催。後半の質疑応答では、先頃発表された高速道路の「深夜割引」の見直しについて記者から質問が集中しました。
深夜割引の見直しはトラックの労働改善につながるのか。写真はイメージ(佐藤 勝撮影)。
新制度は、深夜割引の対象を0時〜4時から22時〜翌5時へ拡大する一方、その時間帯に走行したETC車の料金を一律3割引きにするのではなく、“深夜に走った分だけ割り引く”ようになります。加えて、「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」への後日還元型による割引になるため、適用するには事前登録が必須になります。
もともと深夜割引は、空いている深夜に高速道路を利用してもらうことで沿道の環境を改善する目的がありましたが、首都圏や近畿圏の本線料金所、SA・PAなどでは、割引適用待ちのクルマが滞留することが課題になっています。これが結果的にトラックドライバーなどの深夜走行など、労働環境の悪化につながっていると捉えられており、深夜割引の見直しで是正を図るのが狙いです。
車両滞留は道路の安全上も問題ですが、「待ち時間を使って寝ている人もいて、実効性のある対策がそれまでなかった」と由木社長は話します。深夜割引の見直しで、「滞留はほぼ解消されると見ている」といいます。
新制度は深夜走行を助長?
一方で、深夜の走行分のみ割引を適用するようになるため、逆に「深夜の走行を助長する形になるのでは」との質問もでました。これについて由木社長は、「適用時間帯を上手に運行計画に組み込んでもらう」ことになるとしつつ、懸念も口にしました。
「適用時間内に距離を稼ぐため、速く走ろうとすることを危惧しています。労働上も安全上も危ない。(これを防止すべく)何らか“上限”を講じる必要があります」
こう話し、2024年度中の新制度移行に向け細部を詰めていくとしています。さらに「物流の方々の行動変容が必要です。そのため事前に発表しました」と訴え、その変容を見極める必要があるとの認識を示しました
なお、深夜割引の変更にともない、一定距離を走った場合に割安とする「長距離逓減制」の料金体系も見直されます。このため、制度変更によって「償還計画(道路建設費用の債務返済計画)そのものに大きなプラスマイナスは生じないのでは」ということです。